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理学療法の費用対効果


📖 文献情報 と 抄録和訳

理学療法士による筋骨格系疾患に対する治療の費用対効果:試験に基づく評価のシステマティックレビュー

📕Baumbach, Linda, et al. "Cost-Effectiveness of Treatments for Musculoskeletal Conditions Offered by Physiotherapists: A Systematic Review of Trial-Based Evaluations." Sports Medicine-Open 10.1 (2024): 1-36. https://doi.org/10.1186/s40798-024-00713-9
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🔑 Key points
🔹腰と膝に対する理学療法的治療に関する質の高い経済評価がいくつか存在する。
🔹他の関節に関する経済評価は稀である。
🔹理学療法による介入は、他の医療専門家による治療よりも費用対効果が高いことが多い。
🔹費用対効果分析において、提供される介入の記述は、公平な治療比較を可能にするために改善が必要である。

[背景・目的] 筋骨格系疾患は、世界的に障害の主な原因となっている。これらの疾患の治療は、ドイツでは医療費の7%を占め、理学療法士によって行われることが多い。しかし、理学療法士による筋骨格系疾患の治療の費用対効果に関する概説は欠落している。このレビューの目的は、理学療法士による筋骨格系疾患に対する介入の経済評価の概要を提供することである。

[方法] Medline、EconLit、NHS-EEDで体系的に論文を検索した。タイトルと抄録、そして全文を2名の著者が独立にスクリーニングした。筋骨格系疾患患者に対する理学療法的介入を対象とし、対照群を問わない。参加者の情報、設定、介入、経済分析の詳細を抽出した。また、Consensus on Health Economic Criteria(医療経済基準に関するコンセンサス)チェックリストを用いて、対象論文の質を評価した。

[結果] 5141件の適格な論文を同定し、83件の論文を組み入れた。論文は78件の臨床試験に基づくものであった。これらの論文は、脊椎(n = 39)、上肢(n = 8)、下肢(n = 30)、およびその他の疾患(n = 6)を対象としていた。最も多く調査された疾患は、腰痛(n=25)と変形性膝関節症および股関節症(n=16)であった。論文は、理学療法的介入(一次介入と定義)の比較が69件、理学療法士による介入が1件のみの比較が81件であった。理学療法的介入は、非理学療法介入と比較して、43%(18/42)の比較においてより安価で、より効果的であった。介入の10%(4/42)が優位であった。

論文の質は全体的に高かった。しかしながら、実施された介入の記述は多岐にわたり、しばしば詳細が欠けていた。このため、公平な治療比較には限界があった。

[結論] 理学療法的介入は費用対効果が高いという質の高いエビデンスが認められたが、その結果は患者群、介入、対照群によって異なる。膝や腰の治療が主に調査されており、あまり調査されていない関節や病態の理学療法の費用対効果分析の必要性が強調された。臨床家や利害関係者が介入を公正に比較し、最終的に費用対効果の高い治療を採用できるようにするためには、提供された介入の文書化を改善する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

お金の多寡が人生の幸せ、楽しさを決める訳ではない
西村博之(実業家)

多くの人が、そう思いたいし、思ってもいる。
だから、「費用対効果、そんなの二の次三の次、でしょ?」、というスタンスになってしまう。
僕だって、その1人だ。
だから、費用対効果、と言う論文タイトルを見ても、大して興味を惹かれるわけではない。

だが、よく考えてみてほしい。
臨床現場で、何かの取り組みを始める or 始めない。
その判断の場に、今まで居合わせたことのあるすべての人に。
その議論の場において、最も威力をもつものの1つ。
それが、『費用』ではないか?
とくに私立の医療機関は、黒字、が大事。
その概念は、組織図を上に登るほど、切実なものになる。
何故なら、そこが満たされなければ、職員を守れない、ひいては健全な医療を提供できない。

お金の管理に長けた人は、1ドルを節約する方が、1ドル余分に稼ぐことに比べてどれだけ簡単かを本能的に知っています。
ロバート・G・アレン(アメリカの投資家)

そんな人たち(経営者)に、僕たち(サラリーマンPT)は、プレゼンし、心を動かし、その先で採算を得る可能性についても、触れないわけにはいかないだろう。
そのとき、今回の論文が示したようなデータが重要になる。
戦において、兵糧がガソリンであるが如く、
事業において、黒字やその見込みがガソリンを得ることにつながる。
この部分の知識を得ることや、エビデンスをつくることに、もっと興味を持とうと思った。
(※過去考察をほぼ引用)

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