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人工知能と筋トレ。腰痛患者への体幹トレーニング

📖 文献情報 と 抄録和訳

理学療法と人工知能を用いた体幹レジスタンストレーニングは、腰痛患者の持久力と患者報告アウトカムを改善する

📕Bates, Nathaniel, et al. "Physical clinical care and artificial-intelligence-guided core resistance training improve endurance and patient-reported outcomes in subjects with lower back pain." Clinical Biomechanics (2023): 105902. https://doi.org/10.1016/j.clinbiomech.2023.105902
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🔑 Key points
🔹腰痛は、医療費と身体障害の大きな負担となり続けている。
🔹人工知能が誘導する運動は、腰痛患者の機能と転帰を改善した。
🔹対照群では8週間にわたり改善がみられなかった。
🔹人工知能を用いた運動は、腰痛の臨床治療を補完するものである。

[背景・目的] 腰痛は非常に一般的な問題であり、生活の質の低下から生産性の損失まで、広範囲に影響を及ぼす。慢性腰痛を軽減するために多くの介入が開発されているが、依然として広く存在する問題である。本研究の目的は、腰痛を経験している被験者において、臨床変数に対する人工知能誘導型レジスタンストレーニングの役割を検討することであった。

[方法] 登録された108名中69名、92名の被験者が8週間の介入を完了した。被験者は4群(コントロール群、トレーニング群、臨床群、複合群)に無作為に割り付けられた。

✅ 各群分けとその内容
①対照群:何も介入なし
②トレーニング群:人工知能による体幹に焦点を当てたレジスタンストレーニングの指導
③臨床群:臨床的治療を受けた
④複合群:臨床的治療と人工知能誘導型トレーニングの両方を受けた

本研究の介入期間は8週間であった。介入群(トレーニング群、複合群)は、この8週間の期間中、週2回、1セッション30分の中強度のレジスタンストレーニングを受けた。
このトレーニングプログラムは、経験豊富な公認アスレチックトレーナー(TN)が設計した、2週間ごとに介入内容が漸進するカスタムプロトコルに従った。
介入における人工知能とアスレチックトレーナーの役割分担は、以下の表にまとめた。

✅ 人工知能による負荷量の選択
・負荷量の選択は,Tonal社製エクササイズトレーナーによる各被験者のAIキャリブレーション手順で決定された.
・キャリブレーション中、各被験者はデッドリフト、ラテラルプルダウン、ベンチプレス、オーバーヘッドプレスの各作業を最大努力で3回繰り返した。これらのタスクで発生したパワーに関連し、カスタムTonal AIエクササイズトレーナーがトレーニングプログラムの各タスクの抵抗を計算し、推奨した。
・Tonal AIは、Tonal Systems, Inc.が独自に開発し、特許を取得した市販の製品。
・最終的には、トルク、発電量、可動域、ケーブル速度などのパフォーマンス変数から自動的に収集されるリアルタイムデータに依存し、フォームと抵抗の両方に関するリアルタイムフィードバックをアクティブなユーザーに提供するソフトウェアアルゴリズムである。

参加者は、ベースライン、4週間後、8週間後に機能検査と患者報告アウトカムを用いて評価された。

[結果] 合計69名の被験者(表2)が8週間の介入を完了した[男性=24名、女性=45名、年齢=41.2(12.1)歳、体重=86.4(22.9)kg、BMI=29.4(7.3)]。対象者は、18歳〜65歳の男女で、自己申告により腰痛を患っている者とした。臨床試験において、臨床群と複合群のコホートは8週目に等尺性伸筋持久力の合計時間が増加し、臨床群コホートは6分歩行試験の総移動距離が増加した。トレーニング群、臨床群、複合群では、8週間後に患者報告アウトカムに改善がみられた。臨床評価と患者報告アウトカムの両方において、ほとんどの有意な改善は8週間後の評価でのみ認められた。対照群では、いずれのアウトカム指標においても有意な改善は認められなかった。

[結論] 本データは、人工知能が誘導する中等度抵抗運動を含む体幹に焦点を当てた介入は、腰痛患者において客観的な機能的アウトカムと患者報告アウトカムによる患者満足度を高めることができることを示すものである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

題名を見たときに『ヤバッ!』と思った。
なぜなら、いよいよ人工知能に理学療法の職域が侵食され出した、と感じてしまったからだ。
気になるのは、何を人工知能がやって、何を人間がやったか。
そして、その詳細を読み込んで、僕は安心することになった。

「なんだ、主に負荷量選択とリアルタイムフィードバックだけか…」

負荷量の選択は、理学療法において基本的な部分だが、重要かつ、深めようとすればどこまでも深めることのできる、複雑な世界だ。
そして、臨床の中で定期的に漸進させる、変化を引き起こす、という部分は人間の少し苦手な部分。
なぜなら、怠惰だから。
だからこそ、「決まった方向性における複雑な量の調整」は、是非とも、機械に任せたいと思った。
その部分を自動でやってくれるなら、僕たち人間は、方向性の検討により大きなエネルギーと時間を割けるようになるだろう。

人工知能に任せたい部分。
そして、任せたくはない部分。
そこにはプライドと長期的な視点を持ちたい。

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