【小説】電車のおばあさんとアニメの話(1766文字)
電車で毎日同じ時間帯に会うおばあさんがいるのだが、ひょんなことからよく会話をするようになった。
「最近なー、孫がのぉー」
「そうですか。はは…」
おばあさんは孫の自慢話をよく自分にしてくれる。
「やっぱり孫というのはとてもええものなのだと思うのー」
「なるほどぉ…」
「そういえばあなたもまだお若いのー。私の孫と同じぐらいの年齢かしらのー?」
「もしかしたらそうかもしれないですね」
「そうなのねー。そういえばね、最近孫がぴょんぴょんアニメにはまってるのよー」
「ふむ…」
「よくうさぎのものまねをしているのよ。それでね、この前孫にグッズを買ってあげたら喜んでいたわー」
「そうですか」
「もしよかったらあなたも今度グッズ買ってあげるわよー」
「え、いいですよ…」
「あらやだー遠慮しなくていいのよ。若いんだからー」
「そ、それならぁ…」
ということで自分もぴょんぴょん萌えアニメのグッズを買ってもらえることとなった。
正直そのアニメを1度も見たことがないし乗り気じゃなかったけれども、これを機に見たら自分も見事にはまってしまった。
「パートリオットサーブ!」
「ね、面白いのよねー。私も孫の影響でね、ぴょんぴょん萌えアニメ見てるのよー」
「そうなんですか!」
毎日電車で何気なく合うおばあさんとまさかここまで仲良くなるとは思ってもいなかった。
それに共通の話題があるって いうのはとてもいいことだと思う。
自分もおばあさんの影響でぴょんぴょん萌えアニメにハマってとても良かったと思う。
このアニメを見始めてからなんだか気分が晴れやかになったり、世界が前よりもほんの少し明るく見えるようになった気がする。
やっぱり人間には癒しというのが必要なのだと思った。
「それでね、私ぴょんぴょんぽいアニメが続編を制作出来るようにDVDとブルーレイも孫に買ってあげたのー。これも孫を喜ばせるためだと思ったら全然安い買い物だわー」
「ですねー」
「そうだわー、あなたにも買ってあげるわよー」
「いやいやいや、そんな申し訳ないですよ!」
「あらやだー、若いのに遠慮なんてしなくていいのよー」
デジャブだ。
「で、でも」
「前回もらっちゃってるんだから、もうこっちももらっちゃいなさいよ! 1度起こったら2度目も同じよー」
こうして自分は、ぴょんぴょん萌えアニメの DVDをもらうことになった。
それから、ぴょんぴょん萌えアニメのDVDをもらってからは毎日欠かさずぴょんぴょん萌えアニメを見るようになった。
「うーん、今日もいい天気! 朝のルーティンは欠かせないよね!」
まず、朝起きたらすぐにぴょんぴょん萌えアニメを再生して見ている。
「ただいまー、さてとぴょんぴょん萌えアニメの復習をしないとね」
学校が終わって帰ってからすぐに見ている。そして塾に行く。
「ただいまー、風呂入ったらぴょんぴょん萌えアニメ見るぞー」
塾から帰ってきたらまた見ている。毎日これの繰り返しだ。
こうして自分はぴょんぴょん萌えアニメ生活になった。
もはや依存症である。そして次の日、また電車でおばあさんと会う。
「あらまー、また会ったわねー」
「あっ、どうも」
びっくりするぐらいよく会う。もはや会いすぎて怖いのだ。
「ちょうどいいわー、もしよかったら今度孫に会ってみない?」
「は、はぁ…」
「あなたときっと気が合うわよー」
「わ、分かりました…」
乗り気はしなかったが会うことにした。断りきれないのは自分の悪い癖だ。
そして当日になった。おばあさんの孫と遭遇をする。
「おい、孫ってお前かよ!」
「あ、ああ」
まさかの学校の生徒会長だった。一見めちゃくちゃ真面目そうに見えたあいつも実はアニメが好きだなんて驚いた。
見た感じは超優秀のエリートで、何でもなんなくこなしてしまう感じだが、まさかこんな一面があったとは思いもしなかった。
「おい、このことを絶対誰にも言うんじゃねえぞ! 絶対だぞー! 内緒だぞー!」
「あー分かった分かった」
こうして自分たちは同士となった。まさかおばあさんと電車で会ってクラスのエリート生徒会長と打ち解けて仲良くなれたなんて人生何があるか分からないな。
同士となった我々は一緒にぴょんぴょん萌えアニメのショップに行ったりライブに行ったりしていてなんやかんやで楽しくやっている。
ぴょんぴょん萌えアニメ、最高ォ!
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