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本気で迷えば、使命は見つかる『渋沢栄一 自伝』

マガジン『人生を変える本』では、おススメの本と、その本から学べる人生を変える視点を紹介します。
第1回の本は、『渋沢栄一 自伝』
人生を変える視点は、"本気で迷えば、使命は見つかる"
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使命、と言われても、特に思い当たらない。何をやればいいのか迷う。それが普通。
一方、偉人は使命をもつ。理想に向かって突き進んでいく。その姿に感動する。
しかし、偉人も最初から使命がある訳ではない。それは新1万円札に採用された偉人、渋沢栄一も同じである。

彼は"株式会社を日本につくる"ことが使命と考え、理想に向かって突き進んだ。みずほ銀行・東京証券取引所・東京急行電鉄・キリンホールディングス…。現在も日本を支える大企業を500社以上立ち上げた。人々はそんな彼を「日本資本主義の父」とよぶ。

そんな彼も、若いころは使命などなく、何をすればよいか迷っていた。その様子は、『渋沢栄一 自伝』前半にて語られている(以下は要約)。

時代は幕末、1856年。渋沢17歳のころ。当時は倒幕運動が盛んだった。これは人々が、幕府では西欧列強に対抗できない、と考えたためである。こんな世の中だから、渋沢も百姓などせずに、別のことをするべきでないか?と迷っていた。そんな考えの中、志士たちとの交流を経て、倒幕こそ自分の使命と思い込む。24歳のとき、先輩に諭され、長年温めた無謀な計画(わずかな手勢で高崎城を攻める)を中止にした。"倒幕が自分の使命"と酔っていただけ、と気付かされたのだ。
使命と思っていたものは、一時の迷いと気づき、気力がなくなってしまった。職の当てもなかった矢先、役人に「国家のために尽くすという精神が見える」と幕府への仕官を誘われる。
これをきっかけに官僚として、頭角を現し渋沢は出世をしていく。そして、幕府からフランス留学を命じられる。近代的な制度の数々を見て、日本に必要なのは株式会社であると考えた。自分の使命は "株式会社を日本につくる"ことだ と確信したのだ。

渋沢ほどの人物でも若いころは使命など持っていなかった。何をしたらよいか分からず、迷っていた。一時は間違った考えを使命と思い込んだ。一歩間違えれば打ち首であった。
ただし最後には、自分の本当の使命を見つけることが出来た。
私はこの理由を本気で迷ったからと解釈する。

何か大きなことをしたい本気で考え、迷った。それが幕府がダメという考えに至り、本気で倒幕を計画する。これ自体は無謀で、血迷っていた。しかし、本気で国家のことを考え、行動するきっかけであった。
これら本気の迷いの結果、役人に見込まれる思想を身に着けたのだ。
そしてこれがフランス留学へつながった。そこでも本気で西欧の進んだ制度を学ぶ役目を果たした。そしてついに自分の使命を見つけることに成功したのだ。

『渋沢栄一 自伝』には、本物の使命を見つけるためのヒントが凝縮されている。使命を見つける方法とはなにか?本気で迷うとはなにか?それが渋沢の姿勢"本気で迷えば、使命は見つかる"を通して示されているのだ。

参考文献
渋沢栄一 著,守屋淳訳,『現代語訳 渋沢栄一自伝』,平凡社

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国立国会図書館『近代日本人の肖像 渋沢栄一』https://www.ndl.go.jp/portrait/datas/104.html(2019/04/29アクセス)

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