夜光おみくじ|毎週ショートショートnote
「なぁ、弥呼卯神社のあるところって、お前の地元じゃねぇの?」
同僚の倉田が突然聞いてきた。
俺は「そうだけど」と短く答える。
「これ見ろよ」
倉田が差し出したスマホには、全国の都市伝説を掲載したサイトが表示されていた。
『○○県○○市にある弥呼卯神社で引いたおみくじは、夜になると書いてある内容が変わる』
「これって本当なのか?」
「そんなわけないだろう?」
倉田は「だろうな」と言い、仕事に戻った。
――弥呼卯神社
その名前を聞くのは、小学生の時以来だ。
子供の頃、正月は両親と弟の4人で、近所の弥呼卯神社に初詣に行くのが決まりだった。小学5年の時、俺が引いたおみくじには、見たことがない記号みたいな文字が書かれていて、父に見せると、父は血相を変えてみんなを引っ張って帰宅した。そして正月三が日、俺は家から出ることを許されなかった。
理由は一切聞かされていない。
――俺が引いたおみくじのせいに違いない。
そう直感した俺は、監視役の弟の目を盗んで、神棚に置いてあったおみくじを見た。
『長男 事故』
そう書かれていた。
今の俺があるのは、弥呼卯神社と父のおかげだ。
(了)
たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」、今週のお題は「夜光おみくじ」でした。
先週のお題は「ルールを知らないオーナメント」でした。
ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!