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リーダーとなるべき人間が失言をしたり、汚職をしたり、忖度したり、部下を見捨てたり、権力に任せて好き勝手やったり。

そんなことはいつの時代も変わらないのかもしれないけど、自分が歳をとるにつれ、そんなクソみたいなことが自分の周りでも起きていることに気づき、自分もそれに巻き込まれたりしていることに気づく。

そういったことはシステム化される。弱きから搾取し一部の者たちで好き放題するシステム。欲望人間が権力を手に入れれば、あとはシステムに任せておけばいい。好きなだけ欲望を満たすだけで、よほどなヘマをしない限り、システムに乗って弱きを搾取し、強きを仲間にして膨れ上がっていく。

そういったクソみたいなシステムに抗えない自分の力の無さに失望してしまう。自分にはなんて力がないのだろう、と。システムの中で膨れ上がった欲望は台風のように色んなものを巻き込んでは破壊していく。

ボロボロになりながらも強い風に流されて落ち着いた時に、ほっと一息する。そしてまた台風がやってくる。この繰り返しである。僕は抗うことが出来ず、ただ自分の家族に危害が加えられないことを祈りながら台風が過ぎ去っていくの待っている。

だから、この物語が僕の胸を打つのである。

『ちいさこべえ』は大工職人の工務店である大留の若き頭である茂次と大留でお手伝いとして働くようになった、りつ、という若い女の話ある。

物語は大留が火事で焼け、茂次の両親が亡くなってしまうところから始まる。突然、老舗の大工屋さんの頭となった茂次。大留とつながりの深い色んな人達から支援の手が伸ばされるが、茂次はそれらの手に決して捕まろうとしない。

りつは大留に来る前はキャバ嬢をしていたらしい。そんなりつは持ち前の気の強さで大留を支えるが、ある日突然近所の施設の子どもたちを大留に連れてきて、自分が世話をするので面倒をこの子達の面倒を見てほしい、と茂次に頭を下げる。

火事で両親を失い、受注している現場材料の資金繰りで経営が火の車の大留であるが、りつの想いに負け、結局、茂次は子どもたちの面倒を見ることになったのだが。

無口で多くを語らない茂次は、次第に大留の職人達から不信感を抱かれるようになってしまう・・・

茂次とりつは強い信念を持っていて、その信念は清くて眩しい。迎合せず、人を思いやり、さまざまな困難に自分の力で立ち向かう。

クソみたいなシステムが蔓延っているのに失望しているからこそ、この2人の物語に強く心を惹かれてしまう。マジでおもしろくて、元気をもらえる漫画。

この漫画は山本周五郎『ちいさこべ』を原作として望月ミネタロウが漫画化した『ちいさこべえ』。ちいさこべ、という言葉の意味は日本書紀の中にある。

雄略天皇が養蚕を振興するためにスガルという部下に「蚕(こ)を集めて来い」という命令を出した。するとスガルは蚕(こ)ではなく、子(こ)を集めてきた。それで天皇は「ちいさこべのスガル」と命名したという。

そのスガルはその後、雷神を捕まえてこいという天皇の命令を受ける。無理な話であるが、スガルは本当に雷神を捕まえて来たのだと日本書紀の中で伝えられている。

漫画の中にもこの話が出てくる。ちいさこべのスガルは無理な話を本当に実現してしまったのだと。さて、この物語の茂次とりつはこの無理難題を乗り越えることが出来るのか。

忖度男子、紳士淑女風男女、小子部男子、小子部女子、男子高校生、女子高校生、大学生達、一般人達、全人民にオススメです。是非!

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