見出し画像

【イザナギとイザナミ】日本最古の夫婦喧嘩が最終的には人間の生死にまでつながってしまった話【日本神話】

どーも、たかしーのです。

今回は日本の神話に登場する『イザナギとイザナミ』について、書いていきたいと思います!
イザナギは男神、イザナミは女神で、奈良時代に編纂(へんさん)された「古事記」や「日本書紀」に登場します。

ちなみに、今なお続く日本のゲーム作品「女神転生」シリーズの”女神”は、イザナミのことを指しており、初代ヒロインの弓子がイザナミの転生体であったことに由来をしています。


そもそも「古事記」「日本書紀」とは何か?

「古事記」は日本人向けの日本の歴史書

「古事記」は、第40代天武天皇の命により、編纂が始まり、およそ30年の年月を経て、712年に成立をさせた日本最古の歴史書です。文章は、編纂当時、ひらがな・カタカナがまだなかったため、すべて漢文体を日本風にアレンジされた日本漢文で構成されています。例えば、「夜久毛多都」は「八雲立つ」と書き下して、読むことができます。

「古事記」は、天皇の正統性を日本国内向けにアピールするために作られました。それゆえ、日本人が読みやすいよう、日本漢文体が用いています。「古事記」が編纂される前は、天皇の系譜や事績を記した「帝紀」や、天皇が統治する以前の神話や伝説を記した「旧辞」という書物があったそうなんですが、これら書物があることないことごちゃ混ぜに書かれていたため、国家事業として、いったん天皇の系譜や伝承を整理し、統一しようと企画されたんだそうです。

『古事記』(写本)(wikipediaより抜粋)

「日本書紀」は海外向けの日本の歴史書

「日本書紀」も、実は同じく天武天皇の命により、編纂が始まり、およそ40年の年月を経て、720年に成立をさせた日本の歴史書です。文章は「古事記」と違って、漢文で構成されています。

「日本書紀」は、日本の正統性を海外向けにアピールするために作られました。それゆえ「古事記」と違い、唐(現在の中国)や朝鮮半島の人でも意味が通じる、漢文が用いています。また、伝説や神話を交えながらストーリー仕立てで記されている「古事記」に対して、「日本書紀」は神話以外は日本の歴史が淡々と記されているところにも違いがあります。

『日本書紀』(写本)(wikipediaより抜粋


「古事記」と「日本書紀」。その両方の神話パートに登場するイザナギとイザナミですが、それぞれ内容に違いがあるため、今回は「古事記」をベースに書いていきます!

イザナギとイザナミが登場するまで

造化三神<別天津神、神代七代

むかしむかし、混沌としていた世界が天と地に別れ、これがきっかけで三柱の神が爆誕しました。この三柱のことを造化三神(ぞうかさんしん)と呼びます。

その後、続けて、二柱の神が誕生。この二柱と造化三神を合わせて、別天津神(ことあまつかみ)と呼びます。
※ちなみに、今後登場する神々(天津神)とは格の存在なので、"別"天津神と呼ぶそうです。

この別天津神には、性別がありません。しかも、全員独身で子どもを生まずに、そのまま身を隠してしまいます(なんでや)。

その後、またしても独身の二柱の神が誕生したのち、五組の男女カップル神々が誕生しました。このカップル神々の最後に現れたのが、イザナギイザナミです。で、この独身の二柱とカップル五組を合わせて、神代七代(かみよななよ)と呼びます。
※ちなみに「古事記」では、イザナギは伊耶那岐神(いざなぎのかみ)、イザナミは伊耶那美神(いざなみのかみ)と漢字で書かれています。

高天原-----葦原中国-----黄泉の国

天と地が分かれ、世界は3つに分かれることになります。

  • 高天原(たかまがはら)・・・神様のいる天上界

  • 黄泉の国(よみのくに)・・・死者の世界(あの世)

  • 葦原中国(あしはらのなかつくに)・・・地上界(高天原と黄泉の国の間にある)

その後、イザナギとイザナミは、別天津神から「国を作りなさい」と命を受け、地上界である葦原中国へと降りていくのでした。

イザナギとイザナミが国を生むまで

矛からはじめる国作り

イザナギとイザナミは、天と地を繋ぐ天浮橋(あめのうきはし)に立ち、別天津神から授かった天沼矛(あめのぬぼこ)を使って、海をかき混ぜ、国作りを開始します。

このとき、矛を引き上げ、その先から落ちた塩が固まってできた島を淤能碁呂島(おのごろじま)と呼びます。この島は、一説には、現在の淡路島近郊にある島とされています。

なんやかんやあって結婚、子宝に恵まれる

この島に上陸し、次は天の御柱(みはしら)という大きな柱と、八尋殿(やひろどの)という宮殿を建てるイザナギとイザナミ。

その後、なんやかんやあって(このあたりの描写が超絶生々しいので、今回は省略w)、イザナギとイザナミは結婚

イザナミは子供を産み、その子どもが8つの島となりました。この島を、大八島国(おおやしまのくに)と呼びます。

大八島国は、以下の島であるとされています。

  1.  淡道之穂之狭別島(あわじのほのさわけのしま)・・・淡路島(兵庫県)

  2.  伊予之二名島(いよのふたなのしま)・・・四国

  3.  隠伎之三子島(おきのみつごのしま)・・・隠岐島(島根県)

  4.  筑紫島(つくしのしま)・・・九州

  5.  伊伎島(いきのしま)・・・壱岐島(長崎県)

  6.  津島(つしま)・・・対馬(長崎県)

  7.  佐度島(さどのしま)・・・佐渡島(新潟県)

  8.  大倭豊秋津島(おおやまととよあきつしま)・・・本州

また、イザナミは続けて6つの小さな島を産み、これらの島は…

  1.  吉備児島(きびのこじま)・・・児島半島(岡山県)

  2.  小豆島(あずきじま)・・・小豆島(香川県)

  3.  大島(おおしま)・・・屋代島(山口県)

  4.  女島(ひめじま)・・・姫島(大分県)

  5.  知訶島(ちかのしま)・・・五島列島(長崎県)

  6.  両児島(ふたごのしま)・・・男女群島(長崎県)

になったとされています。

イザナギとイザナミが神を産むまで

国に続いて神を生み始めたイザナミ、しかし…

国は生み終えたので、今度は神を産み始めたイザナミ。その数はなんと35柱!家宅を表す神(家宅六神)や、風の神・木の神・野の神といった自然にまつわる神が誕生しました。

しかしながら、火の神火之迦具土神(ひのかぐつち)を産んだ時、事件が起こります!なんと、イザナミがあろうことか、大やけどを負ってしまったのです!(どこを大やけどしてしまったのかはご想像にお任せします…)

これが原因で、病気になってしまうイザナミ。病気の苦しみから嘔吐し、脱糞失禁もしてしまいます。ちなみに、これら嘔吐物や糞尿からも神々が生まれており、病に伏せながらも、合計で6柱も誕生させています(なんでや)。

イザナミ死去、イザナギは黄泉の国へ…

その後、イザナミは病が治らず、死去。遺体は比婆(ひば)の山(現在の島根県安来市あたり)に葬られました。

これにより、イザナギは妻の死に激怒!十拳剣(とつかのつるぎ/握り拳10個分の長さの剣という意味)という剣で、イナザミに大やけどを負わせた火之迦具土神を切り殺してしまいます
※ちなみに「女神転生」シリーズでは、アイテムとしてヒノカグツチのけんが登場します。

しかしながら、十拳剣についた血などからも、たくさんの神々が生まれ、なんなら、イナザミが亡くなった時のイナザギの涙からも、なぜか神(泣沢女神/なきさわめのかみ)が生まれています(まるで神々のバーゲンセールだな…)。

そんなイザナミの死が受け入れられないイザナギ。イザナミを取り戻すため、あの世である黄泉の国へと向かいます。

イザナミが闇堕ちするまで

黄泉の国で待っていたのは…

黄泉の国にたどり着いたイザナギ。岩の扉の向こうにいるイザナミに向かって…

イザナギ「まだワイら国つくりは終わってへんで、一緒に帰るでぇ~!」
と話しかけますが、

イザナミ黄泉の国のモン喰うたから、生き返れへんけど、黄泉の神さんに聞いてみるさかい、ウチが戻ってくるまで、死んでもウチの姿は見んといてな!(ウチもう死んどるけどな)」
と返されます。
※2人が関西弁なのは、筆者のディレクションです。お許しください。

仕方なく、イザナギはイザナミが戻るのを待つことにしますが、なかなか戻ってこないので、我慢できずに、岩の扉を開けてみると…

イザナミ「見い〜たあ〜なあ〜!!!!」
イザナギ「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

そこには、体は腐り、蛆(うじ)がたかって、変わり果てた姿となったイザナミがいたのです!この姿を見て、イザナギは怖くなり、出口へと走って逃げてしまいました

突然始まる○○食べ放題

イザナギに見られたくない姿を見られてしまったイザナミは、すぐさま黄泉醜女(よもつしこめ/黄泉の鬼女)に命じて、イザナギのあとを追いかけさせます。

必死で逃げるイザナギ。追いかける黄泉醜女をまくため、自分の髪飾りを投げ捨てます。すると、そこから木が生え、ブドウの実がなったではありませんか(え?)。

突然のブドウ食べ放題に気を取られ、食べるのに夢中となった黄泉醜女。そのスキにイザナギは逃げます!

しかし、あっという間にブドウが食べ終わり、また追いかけてくる黄泉醜女。今度は髪に挿していた竹の櫛(くし)の歯を折って投げてみると、今度はそこからタケノコがにょきにょきと(えええ?)。

同じような展開で、今度はタケノコ食べ放題に気を取られる黄泉醜女。イザナギはそのスキにまた逃げます!

チートアイテム 桃の実

ですが、今度はイザナギを逃がすまいと、イザナミは8柱の雷神黄泉軍1,500人を向かわせ、イザナギを追い詰めます(もうガチやん
やん)!

もはや絶対絶命!でしたが、イザナギが現世と黄泉の国の境目にある黄泉比良坂(よもつひらさか)のふもとにまでたどり着いたとき、そこでなっていた桃の実を3つ投げたところ、追ってきた黄泉の国の悪霊たちは、一斉に逃げ帰っていきました(?????)!

ラストは本人が登場!

すると、今度はイザナミ本人が追いかけてきたので、イザナギは千人がかりでなければと動かないような大岩で道を塞ぎ、そこからイザナミに対して離婚を言い渡しました

これにショックを受けたイザナミは…

イザナミ「そんなんやったら、ウチはこれから一日に千人ずつキルしたるで!
と言ってきたので、

イザナギ「そんなんいうなら、ワイはこれから一日に千五百人スポーンさせたるわ!
と返しました。

このやり取りが、人間の生死の由来であると伝えられています。

おわりに

ともに国作りを行った神イザナギとイザナミでしたが、最後は死別からの離婚、挙句の果てには人間の生き死ににまで発展する超展開でフィニッシュとなりました。とはいえ、そのストーリーは少年マンガみたいで面白かったですね。このあとも「古事記」には続きがありますが、それはまた別の記事で…。

ちなみに、少し気になったので、令和になっても1日千人がキルされ、千五百人がスポーンされているのか?、昨年2021年の厚生労働省の調査資料で見てみたところ、日本の場合は…

おおよそ日本の人口は、1日あたり2,223人のペースでスポーンされたのに対し、1日あたり3,944人のペースでキルされていました。

イザナミ、がんばりすぎだろ…

それでは。


この記事が参加している募集

日本史がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?