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【同志少女よ、敵を撃て】戦禍に放り出された1人の女性狙撃兵の葛藤

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜実在した女性狙撃手たち〜

アガサ・クリスティー賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた話題作。

第二次世界大戦の独ソ戦を舞台とし、復讐に燃える1人の女性狙撃兵の戦いと葛藤を描く本作。虚実入り混じる物語の展開は、巻末の参考文献から読み取れるように、作り込みは緻密であり、かなりリアリティが感じられるフィクションとなっている。

1人の少女が戦争に巻き込まれて、狙撃兵として育成されたのちに、戦場に放り込まれる。主人公のセラフィマも然り、その周辺の登場人物たちの心の機微など、キャラクターも作り込まれており、戦争が生み出す人間性をうまく表現している。

また、狙撃戦の緊迫感やスピード感も迫力があり、隙がないと言っていいほど完成度の高い作品である。

僕はまだ未完であるが「戦場は女の顔をしていない」から着想を得たのではないかと思われ、戦禍の女性狙撃兵にスポットライトを当てたのも斬新である。

話題に恥じない良作であった。


〜ミステリ、なのか?〜

ひとつ疑問に思ってしまったのが、アガサ・クリスティー賞を受賞しているので、てっきりミステリ要素が含まれたものなのかと思っていたが、個人的には、ミステリ要素はあまりなかったように思える。

なぜ、この賞を取ったのかは少し疑問なのだが、そんな疑問も吹き飛んでしまうほどの面白さとパワーを持った作品。一読の価値あり、である。

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