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いつからこんなにも「考え」なくなってしまったのだろうか 『14歳への君へ どう考えどう生きるか』(池田晶子著)

『14歳の君へ どう考えどう生きるか』池田晶子著

僕たちは、いや、僕はいつからこんなにも「考え」なくなってしまったのだろうか。こうやって日々文章を書いているので、人よりも思索していると思っていたけれども、でも、「考える」ということが全然できていなかったことにショックを受けた。

例えば、この本でも一つのテーマとして挙げられている「人生」。日々考えているようで、全然考えられていなかったことに気がつく。それ以外のテーマについても、もちろん、過去に考えたことはあるけれども、でも、それについて自分の考えたことを述べよと言われたら、どれだけ述べることができるだろうか。

人生は人生でしょ、と言いたくなる自分がとても虚しく感じる。一体40年以上生きてきて、僕は何を「考え」てきたのだろうかと。

ちょっと自分に厳しすぎるのでは? そんなに深く考えている人はいないよ。だって、この人は哲学の専門家でしょ? 普通の人とは違うでしょ? と思うかもしれない。確かに、全ての人が彼女のように考えることができていれば、こんな本は書かれてはいなかっただろう。

でも、これは14歳に向けて書かれてた本で、それから僕は、もう何十年という月日が経っているのに、何一つ自信を持って答えられるものがない、というのは、あまりにも切なすぎる現実だと思うのである。きっと「考え」てきたと思っている人にとっては、僕と同じような衝撃を受けるのではないだろうか。

まさに、思考が浅い、考えているようで考えていない、そんな他人に対して、自分が時々思ってしまうようなことが、自分の目の前につきつけられている。結局、自分も対して考えていなかったのだと。周りの全然何も考えていない人たちと大した変わりなかったということを。

彼女ほど思考を深められるか、彼女のように思索できるかと聞かれればそれはどうかわからない。でも、自分の中で、自分の限界まで考え、思索したかと言われると、結局、中途半端なところまでしか考えてないということに気がつく。だから、考えてないということがわかってしまうのだ。答えなんてわからないことばかりだし、彼女が言っていることは、本当に「あたりまえ」のことばかりなのである。ある意味ではだれもがそこに到達するものなのである。なぜなら、それが「あたりまえ」のことだからだ。

そこまでいかなくても、そこまで歩みを進めようとしなかったこと。そこに大きな後悔の念を感じるのである。どうしてもっと「考え」なかったのかと。それは忙しいという言い訳かもしれないし、周りがそうだから、考えても意味がない?・・・でも、自分は考えることが好きで、考えることを続けてきたつもりでいたのが、それが全く考えていなかったということに気がつかされるのは、本当にショックな出来事である。

でも、こうやって、考えていなかったということを、知ることができる。そして、「考える」とは何か、ということを考えるきっかけができたのはとても素晴らしい機会になった。

彼女が言うように、考えることほど面白いことはないかもしれない。僕もそう思う。考えることはものすごく面白いことなのである。飽きることなんて本当はないのだ。考えても考えても終わりはないのだから。どうしてそれを僕はやめてしまったのか? 止めてしまったのか? それがとても悔やまれる。

でも、こうやってまた考えたいと思ったこと、それを大切にしていきたいと思う。なぜなら考えることは、まさに生きるということだから。きっとこれまで悩んでいたちっぽけなことたちは、考えが足りなかったのだと思う。考えればきっと多くのこと「わかる」と思う(たとえ答えが出なくても、答えはないと言うことがわかる。それだけでも救われる)。きっと戦争を終わらせるのも、幸福を手に入れるためにも、僕たちができることはこの「考える」ということなのだと思うのだ。

幸せになるためにも、ぜひ考えてみてほしい。今何かに悩んでいるなら考えてみてほしい。思考を深く深く。今までよりももっともっと遠くまで。そうすると、きっと今まで感じていた不思議よりももっと大きな不思議に出会うだろう。もうそれ以上問うことさえできないような不思議に出会えるだろう。そうするときっとこれまで悩んでいたことがちっぽけなことと感じるだろう。そんなちっぽけな悩んでいたことなんてすぐに忘れてしまうかもしれない。

そして、生きるということは考えることであり、考えるということは問うことなのではないかと思う。僕たちは問い続ける。だから生きているのだ。面白い問いを見つけることこそ人生の醍醐味かもしれない。そのためにも考え続けることだ。考えることをあきらめないことだ。考えることをあきらめることは人生をあきらめること、幸福をあきらめることでもある。だから、あきらめないで考え続けよう。考えるということはとても大変なことだけど、でも、考えるということは生きるということだから。

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