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ことばのニュアンス「ことわざ」

「少年老い易く学成り難し」という言葉がある。これは、朱子学の祖である朱熹(しゅき)という人物が残した言葉だ。

これは、人間はすぐに老いてしまうけれど、学問を学ぶことは時間がかかるという意味の言葉だ。しかし予想できると思うが、この言葉の裏には、それ以上の意味が含まれている。この言葉ができた時代は、中国で科挙という国家試験が行われた時代だ。中国は官僚中心社会で、学問によって成り上がろうと人々は積極的に学んだ。

そんな時代であるから、この言葉には勤勉であれという意味が含まれている。

一方で、世界中に似たようなことわざがある。だが実はそれらのニュアンスは結構違うのだ。以下にヨーロッパの例を挙げてみる。

医学の父ヒポクラテスは「人生は短く、技術は長い。」と言った。

これはヨーロッパで広まった言葉だが、この「技術」は「学問」や「芸術」と解釈された。そして、それらは全員が享受するものでは無いという認識であった。このことから、ヒポクラテスの言葉は「優れた学問や芸術の永遠の前に、何と人間の命の儚いことよ。」というような、感傷に浸るようなニュアンスがあると捉えられた。

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このように、文化によって似たような言葉をどう捉えるかが違ってくる。

先程の言葉に対して、東洋では、勉強しろという脅迫的な意味を含んで生まれた言葉だと感じる。修行を良しとする民族性から生まれた言葉なのだ。

一方でヨーロッパでは、人間の儚さを表す言葉として捉えられている。人間の存在価値を小さいものと見ているからだろうか。神と人間の関係が定められていることで、人間の価値は決まっているという考えが、先程の言葉を生んだのだろうか。

誤解しないで欲しいが、中国のことわざに対応するものが、ヨーロッパに無いこともある。似てると思ってもこんなにニュアンスが違ったりもする。

こういう違いを見ると、文化の背景が気になって調べたくなってきますね。

今回、本からの引用をした。1部分面白いところを抜き出してみた。要するにただの本の紹介だ。誰かがより深めてみようと思うきっかけになるかもしれないし、ならなくてもいい。

その本ってのは、米原万里さんの『 他諺の空似-ことわざ人類学-』だ。通訳者ならではの、世界観察結果だ。

以上。

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