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逃げ切り上司と事業開発

 日本を代表する大手企業の新規事業室から嘆きの声が届いた。室長が全くリスクを取らず、立ち上げに向けての動きを避けているという。ちなみにその室長は現在57歳。波風を立てなければ順風満帆で退職金を受け取ってゴールできる状態にあることが大いに影響してそうとのこと。

 具体的にどんな室長なのか。まずはひたすら課題をリサーチさせる。期間をできる限り長く取り、少なくとも四半期を充てるという。まずは新規事業室の中で独自に進め、そしてその後に外部の調査会社を用い、その両者の調査結果の差分まで調べさせる石橋叩き。

 入念な課題のリサーチ後は前に進めるかと思いきや、次は難癖。例えばアンケートで「2割の方々が熱烈に賛同する課題感が見つかりました!」と報告すると「我が社は大手だから8割が賛同するものを用意するように」と新規事業のシナリオから大きく外れた回答を言い出す始末。

 無事に解決する課題が絞り込めたとしても、次は解決策(製品やサービス)に対する却下の嵐。革新的ではない。経営資源が活かせていない。規模が小さ過ぎる。といった風に必ず何かしらの否定が入る。おかげで試作設計してフィードバックを取る、というフェイズにも進めないまま。

 そういった状況が既に一年以上続いていることから、「言われたことだけやって何もリスクを負わずに仕事してるだけで、給料が振り込まれるならそれでいいじゃん」と諦め顔のチームメンバーまで。相談してくれた彼女の心は風前の灯火で、動かない上司に付き合い続けるのは限界に近く、転職も視野に入れているという。

 どれだけアイデアをカタチにしたいと思っても、どうやっても動かせないものがある。それは組織の長。どれだけ人事部に新規事業室の室長が動いていない、新規事業に相応しくない、と申告したところで、長が入れ替わることがない。

 人生は有限だからこそ、自分が置かれている場所が本当に自分が達成したいことを実現できる環境かどうか確認していこう。残念ながら「いつか」良くなると信じて頑張るだけでは「いつか」は訪れないことも多々。天気と同じく自分のコントロールを離れたものとは期限を切って向き合っていこう。

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