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【感想文】冬の往来/志賀直哉

『志賀の男意気 —しかめ面に寄せて—』

本書『冬の往来』読後の乃公だいこう、愚にもつかぬ雑感以下に編み出したり。

▼あらすじ:

一見普通そうな薫さんがその昔駆落ち未遂したんだよねーっていう話を暴露系友人・中津栄之助が明かす暴露談。

▼読書感想文

ダメだ、色々考えたけどやっぱよくわからん。[感想文・完]

▼余談 ~ しかめ面の意図について ~

本書の末文は <<私は不図、先刻擦れちがった時の、女の人の、しかめ面を憶い出した。>> と締め括って終わる。この「顰め面」とは、作中序盤に薫さんが「大砲の煙のような埃」を浴びた際の表情を指しており、語り手は中津の話を聞き終えて再度「顰め面」を思い出したのだという。ではなぜそんな事を思い出したのだろうか。

その理由を説明する前に、まずは顰め面がどういうものか説明しておかなくてはならない。で、「顰め面」とは端的に言うと「は?」「うぜー!」「ふざけんな!」「なんさらしとんじゃい!」といった感情を顔で表現したものである。つまり、語り手(=志賀直哉)は中津にイラついたのである。ではこれを踏まえて、中津の話における顰め面ポイントを列挙してみると、

①「これが僕に何を意味するか―― 万事休牟ばんじきゅうす。」
  ⇒は?
②「直ぐ断ったのか」「勿論断った」
  ⇒なんさらしとんじゃい!
③「それから君はどうしたかね?」「何をする事があるだろう?―以下略―」
  ⇒うぜー!
④「今僕が話したような事をそのまま書けない気持ちは分かるだろう?」
  ⇒うぜー!
⑤「僕は今更薫さんに、そう云う恋文を書こうとは思わないよ」
  ⇒ふざけんな!

と、このように「顰め面」は語り手である志賀の怒りを表現するために用いられていることが如実である。だってそうだろう、中津は作家でありながら「いやあボクぁ恋文なんて書けないよ~テヘヘ」的な女々しい事をかし、絶好のネタを小説に書こうとしないのだから。これでは文士・志賀直哉がイライラするのは当然ではないか。もし仮に志賀が中津同様の体験をしたならば、この話を100%書いて世に発表するに決まっている。

といったことを考えながら、というわけで本書は「文士たるものかくあるべし」的な志賀の男意気が垣間見える秘伝の書と考えて差し支えは…………ない。

以上

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