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記憶の消費期限

彼と帰る道のりが

全て最後かのように

わたしはしっかりと景色と感情を胸に刻んだ


何回もキスをされたが

わたしがそれに応える形

大人は正義でかっこよく強くあってほしい

だから、その場の雰囲気だけで

簡単にキスなんてしちゃダメなんだよ。

と思いながら目を閉じた。


わたしにはまだ

〝愛おしい〟

と言う感情が分からない。

だけど、何回も言ってくれた人。


彼と最後に交わしたキスは

ツナマヨの匂いがした。

不謹慎だが、

レーズンと口内の酸を合わせると

ツナマヨの匂いがするのか、と思った。

サヨナラ、元気でね。


携帯の中、2019年と書かれたメモにそう残されている。

人間の記憶は入れ替わりが激しい。

それを物語るように、

わたしはこのメモに残されている彼が

誰なのかは思い出せない。

フィクションなのか、ノンフィクションなのかも分からない。

そんな話。

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