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うつわマガジン2020

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#土鍋

池波正太郎風 湯豆腐のススメ

池波正太郎風 湯豆腐のススメ

急に寒くなりましたね。
たちまちお豆腐の食べ方が、冷奴から湯豆腐になりました。

今日は、久しぶりの「陶芸職人のなんちゃってレシピ」を。湯豆腐ですから、レシピというほどのものではありませんが、池波正太郎風といういわくつき。時代小説はいまいち苦手で、彼の小説も親しんできたとは言いがたいけれど、食の話だけは好きで、確か最初に読んだのは大学生のころでした。記憶の片隅に、いつも湯豆腐の描写があって、その中

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土鍋で秋を炊く2020年「落花生ごはん」

土鍋で秋を炊く2020年「落花生ごはん」

あの人を想う味

土まみれな殻は地味だけれど、殻をやぶって出てきた薄紅色の実は、惚れ惚れするほど華やか。今年も恒例の落花生ごはんを炊いた。

日ごろの我が家は100%玄米食で、減農薬の玄米を秋田の農家から取り寄せている。子どもが卒業した学園と農家が古くから協働したもので、お米に学校の名をつけてくれている。食べるたびに、ホームステイ先の農家の顔を思い出す。食材から誰かを想うことは、とても大切なことだ

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ミソロジーのなかのシロップ

ミソロジーのなかのシロップ

モヒートをつくるぞと強気に言ったけど、どうでもよくなった。直球でないんだもの、この夏は。

ミントシロップをつくり置きして、好きなときに、ソーダ水やラム酒を入れてゆるゆるとつくって、ガブガブしている。もう強気ではないけれど、弱気ではない。だってミソロジー(神話)的なシロップみたいに想いが煮詰まってる。

6月はあたたかいミントティをいれながら湿ったことを言っていたから、これでもかという夏がきた。シ

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「旅する土鍋 」 −みんなが活きる時間− 食にたずさわる友たちと夏を呼ぶ(前編)

「旅する土鍋 」 −みんなが活きる時間− 食にたずさわる友たちと夏を呼ぶ(前編)

夏がこない。

飛行機で飛び、列車で流れ、
長距離バスに揺れる
夏が、こない。

ミングルに集まって「旅する土鍋」の夏。
2020年はイタリアへの旅が叶わず東京にいる。

普段、なかなか時間が合致しない多忙な友人たちのもとへ、東京からすぐの大きな川を越えて大きなキャリーバッグはガタゴト走る。ああ、この感じ久しぶり。キャリーに伝わる好まない振動に、血潮がみなぎる。

3月に出版された有賀薫さんの「3

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ほんとうの気持ちと展覧会

ほんとうの気持ちと展覧会

地球の難事には、ザワッという大きな風が吹く。足が地から浮くような風です。ビューという音も聴こえて、耳をふさぐ。その一方でクリアな声が聞こえてきます。嵐の森では鳥が鳴くように。

今回の震撼は、悪いことばかりでなく、35年陶芸道を歩くわたしにグイッと背中を押す追い風が吹きました。

余談ですが、2011年の震災時もそうでした。あのときも、大きな風が吹き、二足のわらじの片方を、バサッと脱ぎ

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春をよそおう「行者にんにくのポタージュ」

春をよそおう「行者にんにくのポタージュ」

北海道から行者にんにくが届く季節になった。

アイヌの民間信仰として興味ふかい話が書いてあったのを思いだし、今年は、病魔の退散を願いながら行者にんにくを料理する。天然痘などの伝染病が流行した際、村の入り口に行者にんにくを掲げ、病魔の退散を願ったというのだ。

転じて、翡翠色をにじませた7寸の皿(食パンが一枚のるパン皿サイズ)に横たわるそれを「行者」に見立てて見つめてみる。

山にこもる行者が滋

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土鍋でつくる米粉ミルクのかぶシチュー

土鍋でつくる米粉ミルクのかぶシチュー

東京のまんなかに住むということ。

空はくらべてみるものではない。大雨を降らせているグレーの空を、どこかの空と比べてはいけない。この期に及んで、日本、東京がせめられている。自粛で自宅にこもることが切ないのではなく、比べてみている空が泣いているのだ。

東京のまんなかに住むということは「協働」の魅力だと思っている。やさしい思考で住めば、日本中、世界中と助け合って生きてゆくことができ、冷たい思考で

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余熱でいこう!陶箱のうつわで「アボカドタマゴ」

余熱でいこう!陶箱のうつわで「アボカドタマゴ」

世界はタマゴのように儚いけれど、エネルギーが加わればかたまり、時にとろりとあなたをうっとりさせる神通力かもしれなくて。なんて願いをこめながら「陶箱のうつわ」でアボカドタマゴを焼いた。

早起きすると「復活祭のおめでとう!」のメッセージがイタリアの友人から届いていた。わたしは信者でないが、郷にいれば郷の文化を客観的に見ることができ、いまは郷を離れていてもお祝いの気持ちを送ることならできる。師匠の元気

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春の東京野草「明日葉のおみおつけ」

春の東京野草「明日葉のおみおつけ」

東京は広い。静かな東京は広く感じる。
日頃から静かに買い物をする人たちは、さらに静かに街を歩く。

小笠原産の明日葉(アシタバ)が手に入った。
東京は広い。小笠原半島も東京都なのだ。近所のお豆腐屋さんが手づくりしたとっておきの「がんもどき」があるので、それと一緒に、おみおつけにしよう。

明日葉(アシタバ)
温暖な太平洋沿岸に自生する植物。成長力が強いので、摘んでも明日また新芽が出るということから

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庭に転がっていた光らない宝石「むかご炊き込みごはん」

庭に転がっていた光らない宝石「むかご炊き込みごはん」

数年前から、庭にころころと黒糖あめ玉みたいに転がるものが落ちていて、虫かヘビのタマゴか?なんて思いながら、うぇっ!と飛び越えたりしていたのに、つい踏んでしまった。その瞬間、ポクっとお芋っぽさがあって、もしやむかごではないかと思いはじめたのがつい去年のこと。

ころころの発生源を探り、土に転がる大量のむかごを収穫。自然薯の栄養塊といわれるだけあって、ちょっと粘り気がある。蒸して塩をふるだけでも、小さ

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ハルヲタク「よもぎごはんの話」

ハルヲタク「よもぎごはんの話」

雨の庭にでると、湿った春のにおいがした。近くの小川によもぎを摘みにゆくのが毎春恒例だったのに、数年前から、妙な怠業をしている。

近所の小川に生えてたよもぎを根っこごと庭に移植。欲しいときすぐ引っこ抜いて食べられるし、衛生的にも信頼できるなんて思ったが、結果は庭の生態系を崩すただの食いしん坊だった。去年は、カラスノエンドウがどうのって書いてあるが、今年はミント群がすっかり制覇され、よもぎの春庭とな

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土鍋サウナ風ゆでたまご

土鍋サウナ風ゆでたまご

ああ、ひとつだけ、とろっとろのゆでたまごが食べたい。そんなとき、どうする?

小さめの鍋にたまごを入れて肩までお風呂につかるように水をいれるか、半身浴くらいにして箸でぐるぐる回しつづけるとか、そんな感じが通常だろうか。

いやいや、お風呂も半身浴もやめて、ミニ土鍋とミニせいろを用意して、サウナにしよう。土鍋の蓄熱や余熱も有効。少しの水で、洗い物も最低限で、おいしいゆでたまごがつくれる。​

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あわてないで土鍋料理 「それでも焦げたら」

あわてないで土鍋料理 「それでも焦げたら」

個展前のストイカルな日々を過ごしているが、そんななかで「陶芸家のなんちゃったレシピ」(コッチョリーノ ブログに時々登場)つくってみたよ!という報告は、こりほぐしのような効果あり。恐縮しながら喜び、そしてまた調子にのって、土鍋やうつわをつくる。

心緒をうつす

かなしい日、つかれた日はなにもしたくない。土鍋に水と昆布と豆腐を入れ、立つ湯気を、ゆれる豆腐をぼうっと眺めるだけでごちそうだ。「おいしい」

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毛布のなかで眠りたい

毛布のなかで眠りたい

眠らないまま明けた。個展1週間を切った冬の夜は、あたたかい毛布が恋しい。

ふらふら工房から出てリビングに行くと、キッチンで毛布がまあるく膨らんでいた。象をまるのみしたウワバミか?

「なにこれ?」ぱたぱたと出かける準備をしている息子に聞く。

「鶏むね肉でつくってる」。

相変わらず言葉たらずで、ウワバミは象でなく鶏をまるのみしたのか?と、情報は遠いほうに更新されただけだった。

昨日、ひさしぶ

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