たなか かい <田中りえ>

田中りえの文章を載せていきます。誤字などありましたら、twitterなんかで教えてください。(@42tanaka)

書きたい小説 (素敵な女性)

今年の四月、大学時代に書いた小説が講談社から本になった。この本にのっている五つのはなしもいれて、まだ十コぐらいしか小説を書いたことがない。大学三年から文芸科にはいり、レポートとして小説を書くまでは。小説を書こうなんて気はまったくなかった。書きたいことがあって書いたわけじゃないので、できた小説はどれも短い。本の題になった、『おやすみなさい、と男たちへ』がいちばん長くて、六十八枚。ほかは、二十枚から三

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さりげなく酔えるロマンチック横浜、港町酒場探検記 (サントリーシスターズクォータリー 1989) 後半

次に訪れたバーは、山下公園から少し奥まった通りに面している『コージ』。
 この店の洋酒の豊富なこと。カウンターの後ろの壁ぎわには、ずらりずらずらと、スコッチやバーボンのボトルが並んでいる。ボトルはピカピカに磨きをあげられ、壁のうっすらとした蛍光灯の光のなかで、キラキラと光っている。
 思わず、「まあ、ホコリがつかないようにボトルをいつもきれいにしておくの、大変でしょう」と、聞いてしまった。定期的に

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目的者別専用道路の増設を (道と文化 1989)

西ドイツのブレーメンに、ドイツ人の夫がいるので、日本とドイツを行ったり来たりしている。

 西ドイツの道路事情は、住宅事情と同様、日本より、はるかに良い。制限速度ナシ、しかも無料のアウトバーンが、西ドイツ中にはりめぐらされている。町のなかのすべての道路には歩道がついていることはもちろん、車道と歩道の間の、自転車専用レーンも充実している。

 交差点の手前やバス停では、必ず、車線が増える。だから、日

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さりげなく酔えるロマンチック横浜、港町酒場探検記 (サントリーシスターズクォータリー 1989)

ヨコハマって、港、公園、しゃれたレストランと、アベックの好きなものがあり、デートに最適っていうイメージ。

 しかし、自分自身について考えてみると、ヨコハマでデートしたことは何度もあるが、ちゃんとロマンチックな経験って、全然ないなあ−−−。

 まだ明るいうちに、港の見える丘公園、山下公園などを、ハイキング気分で、せっせと散歩。中華街でお粥を食べて、そこいらの喫茶店でお茶を飲んで、東京へ帰宅。そん

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忙しかった九州旅行 (石だたみ 1989.3)

博多といえば、おじいちゃん、お元気ですか。だいぶ、あたたかくなりましたね。

 天神から歩いて十五分の、中央区舞鶴に、母の実家があり、今でも、九十九歳のおじいちゃんがいる。

 おじいちゃんは、足腰はさすがに、ちょっと弱ったが、頭のなかは、はっきりしている。会うと、「親孝行しなさい。人生は、努力、努力、であるん」と、お説教されてしまう。

 去年の暮にはドイツ人の夫のデイルクとおじいちゃんの家に泊

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無題 テーマ:旅行達人のノウハウ (ザ・ホテル 1987.3)

わたしとドイツ人の相棒が一週間滞在したラザの宿では、シャワーが使えるのは夕方四時から七時までだった。うす暗い小屋で、霧雨のように少ししか出ないぬるま湯のシャワーを、鳥肌を立てながら浴びたあと、テラスで日光浴をした。

 中国のチベットの中心である、ラマ教の聖地として古くから栄えた街、ラサは、標高三千六百mのところにある。高い分だけ太陽に近いからだろうか、空気は冷たいのに、九月中旬の陽ざしは、夕方に

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