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読書感想『鏡の国(岡崎琢磨)』- 精神疾患や社会問題とミステリーの融合小説

ミステリー系の小説を読んだの初めてと言ってもいいくらい過去に読んだことはほぼなく、しかも著者の岡崎琢磨さんの本を読んだのは初めてだったが、装丁と装画に惹かれて買った本『鏡の国』。

私がミステリーに慣れてないからかもしれないが、他の作品も読んでみたいと思わせる見事な仕掛けと展開に驚かされた。

勿論、途中で違和感を感じる言葉はいくつかあったが、予測できそうでできなかったことが悔しく、最終的な種明かしでは自分の読みの浅さを痛感させられたほど。

本のテーマにもなっている「身体醜形障害」「相貌失認」「ルッキズム」などは、正直なところ初めて知る言葉で、この本を読まなければ知らずにいた言葉であろう。ミステリーに人の悩みや現代社会の問題を含ませることもできるんだなと著者の手腕に感心しつつも、精神疾患について自分が無知であることに驚き、考えさせられる内容だったし、読み終わった後に少し調べたりもした。

なお、作中の心療内科医師の言葉も印象的だった。
『何かを持っているから価値があるわけじやない。何も持っていないから価値がないなんてこともない。あなたがあなたであることに絶対的な価値がある』
『いつかは失われるもの、いつかは失われるとわかっているものに、決して自分の一番の価値を置いてはいけない。』など。

今の自分にはそこまで深く響かなかったが、将来いつかこの言葉を思い出すか、もしくは他人に伝える時がくるかもしれないと考えさせられたりもした。

話の舞台が、記憶に新しいコロナ渦が終わりかけの時であったためか、途中から完全にミステリー作品ということを忘れてしまったような、なんなら著者の岡崎琢磨さんはミステリーとして書いてないのでは?と思うような、そんな作品だった。

鏡の国

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