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「ゲノム編集」が照らす未来

column vol.1136

先週、JBpress【ゲノム編集で難病治療と若返り、技術精度100倍以上!九大発ベンチャーが挑む】を読んで、非常に胸アツになったので、今日はこの記事についてお話ししたいと思います。

〈JBpress / 2024年2月7日〉

…ただ…、「ゲノム編集って何???」という方もいらっしゃると思いますので、まずは簡単にゲノム編集の説明からスタートさせていただきます。

…なるべく分かりやすく語りたいと思いますので、ぜひぜひ最後までお付き合いくださいませ…!


ゲノム編集がもたらす利点

ゲノム編集技術は、生物のDNAを正確に変更する手法であり、医療、農業、研究など多岐にわたる分野で革新的な応用が期待されています。

例えば、医療については、こんな利点があるのです。

【医療分野】
(1)遺伝性疾患の治療:

特定の遺伝子異常が原因で発症する疾患(例:シストリン尿症、ハンチントン病)に対し、異常遺伝子修正または無効化することで治療を可能に。
(2)がん治療の進歩:
がん細胞特有の遺伝子変異を狙い撃ちにすることで、より効果的かつ副作用の少ない治療法を開発できる可能性がある。
(3)感染症への対策:
病原体に対する抵抗性を持つ遺伝子を人間に導入することで、特定の感染症(例:HIV)に対する新たな治療法や予防法が開発される可能性がある。

ちなみに、がんということでいえば、日本では2人1人がかかると言われております…

経済的な観点でいえば、国立がん研究センターが昨年発表したデータによると、がんが社会に与える経済的負担年間約2兆8600億円にも上るとのことです……

〈読売新聞 / 2023年8月1日〉

また、農業分野では、干ばつや病害に強い作物の開発、栄養価の高い作物の生産など、ゲノム編集により食料安全保障持続可能な農業が実現可能になると期待されています。

こうしたことから、微生物学者のエマニュエル・シャルパンティエ教授と生化学者のジェニファー・ダウドナ教授が、2020年のノーベル化学賞を受賞。

このニュースが世界に駆け巡ったことで、「ゲノム編集」という言葉を知った方は多いのではないでしょうか?

…ただ、課題点もあるのです…

「偏見」や「差別」をどうなくすのか?

ゲノム医療は、患者一人ひとりの遺伝情報を解析する上でのプライバシーの問題や、ゲノム編集を受けたことにより、生命保険の加入雇用などで、差別不当な扱いにつながる恐れもあります…

そうした課題もあり、昨年6月に施行された「ゲノム医療法」では、安心してゲノム医療を受けられるよう、国に基本計画の策定が義務づけられました。

〈NHK NEWS WEB / 2023年12月26日〉

そして12月には、政府のワーキンググループの初会合が開かれ、国の基本計画策定に向けた検討が始まったのです。

会合では、医療や遺伝子などの専門家や、患者団体の代表などが出席し

●「地方ではゲノムの検査は受けることができても、治療の面では医療機関が限られるなど、地域格差がある」
●「差別を防ぐために、新たな法令づくりも検討すべきだ」

などの意見が出されました。

また、ワーキンググループでは

●研究開発の推進
●情報管理のための基盤作り
●差別を防ぐための対策

など、具体的な議論を重ねたうえで、2024年中にも基本計画を取りまとめるそうです。

ゲノム編集は食品に対しても

(1)味や栄養を追求できる
(2)アレルギーなどの人々の悩みを解消できる

という主に2つの期待があるのですが、まずは「(2)から進めた方が良いよね」という考えが広がっています。

〈47NEWS / 2023年12月29日〉

その一例が、キユーピー広島大学との共同研究。

昨年4月に「ゲノム編集技術で卵アレルギーの主な原因となるタンパク質を取り除いた鶏卵の安全性を確認した」と研究結果を発表したことで、卵アレルギーで悩む方々から多くの賞賛の声を集めたのです。

凄い技術だけど、ちょっと怖いよね。

というのが、ゲノム編集の現在地なのですが、これはAIにおける議論と通ずるところがありますね。

「技術精度100倍以上」に集まる期待

ゲノム編集については、大まか知っていただけたと思いますが、そこにきて冒頭の「九州大学発のベンチャー企業」の話です。

(冒頭のJBpressの記事のことです〜)

この企業とは、「セイフガードgRNA」を開発した九州大学生体防御医学研究所の川又理樹助教の立ち上げた「One Genomics」

セイフガードgRNAって、何…???

…という方に、簡単に説明すると、まずは「ゲノム編集の精度を格段に高めるもの」と捉えていただけると幸いです…!

先程ご紹介したノーベル賞を受賞した2人の教授が開発したゲノム編集技術は「CRISPR-Cas9」と呼ばれているのですが

これは、狙ったところ以外のDNAまでを切断してしまうリスクなど課題があります。

もう少しだけ…、説明しちゃうと

CRISPR-Cas9とは

①酵素Cas9
…DNAを切断
②gRNA
…Cas9をDNAの特定の部分に導く

を組み合わせた技術なのですが、Cas9の切断活性が非常に強いという特性が、狙っていないところまで切断しちゃうリスクにつながっているのです…

この課題を解消するために生み出されたのが、川又さんの開発した「セイフガードgRNA」で、その精度安全性「従来の100倍以上」と言われています…(驚)

…ただ、「九大発」であるのにも関わらず、同社はアメリカで起業されています。

それは

●CRISPR-Cas9を商用利用するためには高額の特許使用料が必要
 →これを払える企業は限られてくる
●現状で遺伝子治療を積極的に推進しているのは、日本ではなくアメリカやイギリスなどだから

というのが主な理由とのこと。

同社では

CRISPR-Cas9を扱う企業は、すでに欧米に100社ぐらいあります。けれども、セイフガードRNAに匹敵する技術を持つ企業はありません

と自信を覗かせており、実際、世界中から注目されているのです。

ちなみに、【「noter」はきっと、ずっと「若い」】という記事の中で、月面探査コンテストなどで知られるXプライズ財団

アメリカの高齢者の認知や筋肉などを10年若返らせたら賞金1億ドル

というコンテストがあると紹介しましたが

こちらのコンテストにもエントリーされるとのこと。

活躍を期待したいところですね〜

〜というわけで、本日はゲノム編集について、そして日本発の有望企業がありますよ、という話をさせていただきました。

こうした技術が日本の中でどのように議論され、発展していくのか?

そんなところに今後も注目して参りたいと思います!

本日も最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました😊

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