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タクシー利用者が体験したエピソードを集めたマガジン。 タクシーでは様々な出会い、出来事がある。 ちょっとエッチな話から、変な話、ビックリな話まで盛りだくさん。 それらをのぞき見して、あなたの人生にプラスとなる話と暇つぶしになる話を届ける。
嘘かホントかはあなたのご想像におまかせするタクシーの小話です。
ヨナシロがタクシー運転手として乗務している時に見た、聞いたお客様のエピソードや出来事を書いています。 ちょっとクスッとできる話や、タクシーから見た世の中の話、 は?というどうでもいい話など。 もちろん、個人名が特定されるような情報は出しません。 漫画で描きたいな~と思っていますが、僕は描けないのでだれか、、、書いてくれたら嬉しいな~と思っています。
タクシーがもっと面白くなる使い方や考え方をまとめたマガジン
いつの日か 「タクシー運転手の仕事を楽しむ理由を創りだそう」と考えるようになった。 人との出会いやタクシーで起こるドラマは他の仕事ではなかなか得られない。 それ以…
「どうも、こんにちは」 銀座に古くからある百貨店、松屋銀座の前で手を挙げたのは上品な衣服を身にまとった老婆だった。言葉一つをはっきり発音する、なだらかで美しい…
突き抜けるような青天の下、陽の光を受けた黄金色が風に吹かれて瞬いている。冬至を前に、時節でも風情でも本格的に冬とは言えないこの時期、居所がなく、さすらうように…
クラブ、ライブハウス、ラブホテルがところせましと建ち並ぶ、渋谷区円山町。この地は道が狭く、夕方から夜にかけては人通りが多いため極力通りたくない。特に深夜は。 …
世田谷の東急田園都市線沿線の飲み屋街から外れた大通りで、一人の女性が手を挙げた。 深夜1時を回っている。この時間帯にしては想定外の場所に立っていたその女性は、…
小雨の降る深夜、六本木の小道で男女が抱き合っていた。 こちらには女性の背中とその肩越しに男性の顔が見え、男性は女性の背中に回していた手を挙げた。 「一緒に帰ろ…
意外と人間は言っていることと、やっていることが違う。 銀座の老舗洋食店の前で乗って来たのは、紳士な老人と、その老人にへりくだる50代ほどの男性、その男性のおそ…
「あ、これ、顔認証して広告が流れるやつですよね」 「そうそう」 「初めて乗りました、私なに流れるんだろう」 会社員風の男女が乗って来た。運転席後ろに50代前半ほど…
タクシー運転手がヤツを見抜き、鼻で笑う瞬間がある。正しくは僕が。 それは主に信号待ちをしている歩行者のある行動を見た時。 その行動、タクシー運転手には見抜か…
ヒック、としゃっくりのような小さな声音が聴こえてきた。 深夜一時過ぎ、新橋で男を乗せるとお酒とラーメンでも食べたであろうニンニク臭さの混ざった臭いが漂いだし…
「最近、高齢者の車の事故が多いでしょ。あれ実は事故が起きるように操作してるらしいよ」 恵比寿の飲み屋街で乗って来た洋風の顔つきした男性と日本人の男性、共に30後…
銀座の並木通りで年齢差のある男女が乗って来た。 野暮ったく、四十そこそこに見える男性は見るからに高級そうなスーツが合っていない。 「本当にありがとね」 「おん…
「結婚は二回目だっけ?」 「そうっすね」 夕方頃、40代ほどの男性二人が乗ってくると、久しぶりに飲みに行くらしく会話が弾んでいた。 「そういえば、前回いろいろあっ…
「だから人間ってさ、結局欲に弱いんだよ」 「確かにそうっすね」 聡明な雰囲気のビジネスマン二人を乗せると会話が始まった。何かの会話の続きらしい。 「出世、お金、…
いつの日か 「タクシー運転手の仕事を楽しむ理由を創りだそう」と考えるようになった。 人との出会いやタクシーで起こるドラマは他の仕事ではなかなか得られない。 それ以外にも、 街中を走れば、江戸時代の名残が残っていたり 桜田門のようにほぼ皆が知る事件の現場や、愛宕山の出世の坂のように 面白い歴史のエピソードのを知れたり 毎日仕事するだけでテーマパークにいるような気分になれる。 そうやってタクシー運転手をしていくうえで遊んでいる感覚で楽しめる時間にするために考えてやりたくなった
「どうも、こんにちは」 銀座に古くからある百貨店、松屋銀座の前で手を挙げたのは上品な衣服を身にまとった老婆だった。言葉一つをはっきり発音する、なだらかで美しい語勢、この一言だけで気品のある方だと察知した。 「少しばかり荷物が多くなります、ごめんあそばせ」 「かしこまりました。全然かまいません」 やはり上品である。ごめんあそばせ、などという言葉はこれまでで初めて直接聞いた。 トランクヘ荷物を載せ、青山方面へと向かう。 「銀座もだいぶ、人通りが戻ってきましたわねえ」 「そう
突き抜けるような青天の下、陽の光を受けた黄金色が風に吹かれて瞬いている。冬至を前に、時節でも風情でも本格的に冬とは言えないこの時期、居所がなく、さすらうように吹いている冷たい風が衣服の中に入り込み、時折身体を震わせる。 この時期になると都心でも至る所でその色彩を目にするが、そこでようやく様々な場所の街路樹が実は銀杏であったことを認識していた。 「紅葉綺麗ですね」 赤坂でお乗せしたオフィスカジュアルな装いの二人の女性のうち、部下であろう一人が神宮外苑のイチョウ並木を見なが
クラブ、ライブハウス、ラブホテルがところせましと建ち並ぶ、渋谷区円山町。この地は道が狭く、夕方から夜にかけては人通りが多いため極力通りたくない。特に深夜は。 それに柄も悪い。クスリで捕まる芸能人は大抵この地に訪れている。 通りたくないのなら通らなければ良いのだが、お客様をお乗せし、円山町に行ってくれというなら話は別。向かわなければならない。 お送りしたのは一目でパリピと分かる女性二人。 夜9時頃、石ころのような粒が車体をぱつぱつ叩く雨の中、円山町のクラブに行きたい
世田谷の東急田園都市線沿線の飲み屋街から外れた大通りで、一人の女性が手を挙げた。 深夜1時を回っている。この時間帯にしては想定外の場所に立っていたその女性は、数台走っている車のヘッドライトとその他の街灯の薄明りの中、上品な出で立ちで佇んでいた。 5キロ先の目的地までは盛り上がりのかけらもない、静かで落ち着いた言葉を交わした。 小さな病院で看護婦をしているという。 その看護婦がくたびれた様子で発する言葉の端々からは吐息が洩れ、そこからは生気が混じり出ているような気が
小雨の降る深夜、六本木の小道で男女が抱き合っていた。 こちらには女性の背中とその肩越しに男性の顔が見え、男性は女性の背中に回していた手を挙げた。 「一緒に帰ろう」 目の前に停めると、男性がそう言った。 「いい、私歩いて帰れるから」 女性は拒み、歩き出した。 「ほんと?ちかいの?」 男性は呂律が回っていない。 「んてんしゅさん、まててくださいね」 この一言で車内には酒の匂いが広がる。 「あめふってる、ふぉら、のって」 「大丈夫、近いから」 女性は乗ろうとせず、パ
意外と人間は言っていることと、やっていることが違う。 銀座の老舗洋食店の前で乗って来たのは、紳士な老人と、その老人にへりくだる50代ほどの男性、その男性のおそらくむすこである大学生ほどの若者だった。 紳士は大学の教授で、ある分野で世界的に功績を残している人だというのが会話から分かった。 「運転手さん、あのですねえ」 紳士な老人は、お宅に近づくと穏やかな口振りで住宅街の細かい道を説明してくれた。 その雰囲気はまさに一流。偉大な功績を持っておきながら偉ぶらない。 そ
「あ、これ、顔認証して広告が流れるやつですよね」 「そうそう」 「初めて乗りました、私なに流れるんだろう」 会社員風の男女が乗って来た。運転席後ろに50代前半ほどの男性、助手席後ろには30代後半ほどの女性。女性は初めてその広告の付いたタクシーに乗ったようだった。 タクシーの車内広告には顔認証をするタイプとしないタイプがある。 うちの車に取り付けられた広告は認証されず、一定期間は誰が乗ろうと同じ広告が流れるようになっている。 ウチのは違う、と伝えようと思ったが仕事の話
タクシー小話 9 「広告が生んだ気まずい空気」 執筆配信中 (15分ほど) https://0000.studio/ynsr/broadcasts/3d21e530-ccd3-4c29-8207-2425112f73bc
タクシー運転手がヤツを見抜き、鼻で笑う瞬間がある。正しくは僕が。 それは主に信号待ちをしている歩行者のある行動を見た時。 その行動、タクシー運転手には見抜かれている。 たとえ他のタクシー運転手が分かっていなかったとしても、僕にはわかっている。 彼らがどういう気持ちでその仕草を取りたくなったのか。 どういう意図でその仕草を取ったのか。 分かっている。 「どうせ乗る気もないのにタクシーを弄ぼうとしてるんだろ」 と、心で唱えながら、その姿を見て僕はいつも鼻で笑って
ヒック、としゃっくりのような小さな声音が聴こえてきた。 深夜一時過ぎ、新橋で男を乗せるとお酒とラーメンでも食べたであろうニンニク臭さの混ざった臭いが漂いだした。目は虚ろで、行先を伝える呂律も回っていない。 ヒック、というこの身体的衝動が胃の中のブツを引き上げ、終いには吐き出されるような気がしてならなかった。 ヒック! 走り出して5分以上が経過したが相変わらず後から聴こえてくる。 乗るなり静まった男はイスに浅く腰掛けて体を沈めているため、バックミラーには姿が写らな
「最近、高齢者の車の事故が多いでしょ。あれ実は事故が起きるように操作してるらしいよ」 恵比寿の飲み屋街で乗って来た洋風の顔つきした男性と日本人の男性、共に30後半に見える二人の、英語交じりで会話する切れ間に聴こえてきた。 共に仕事の拠点は海外らしく、久しぶりの顔合わせのようだった。 「それは無理あるでしょ」 陰謀論を聞かされた方の洋風な顔つきをした男性は笑い含みの冗談といったような反応を見せる。 「でも、ニュース見てても分かる通り、増えてるでしょ」 確かに増えている
銀座の並木通りで年齢差のある男女が乗って来た。 野暮ったく、四十そこそこに見える男性は見るからに高級そうなスーツが合っていない。 「本当にありがとね」 「おんおん」 淡い色の服装に若くてほのぼのとした雰囲気の女性がお礼をすると、男は照れくささを隠すように返事した。 「これほんと、ずっと欲しかったの」 乗車時、女性はCOACHの紙袋を手に持っていた。おそらくそれのことだろう。 「あとこれも、ありがとう。高かったのに」 女性の手にはエルメスの紙袋もあった。 「おんおん
「結婚は二回目だっけ?」 「そうっすね」 夕方頃、40代ほどの男性二人が乗ってくると、久しぶりに飲みに行くらしく会話が弾んでいた。 「そういえば、前回いろいろあったよね?」 「そうなんすよ、まあ僕が原因だし、僕が悪いんですけどね。……でもきっかけが会社の後輩にチクられたっていうのが……」 「あの時期はだいぶキツかったすね、精神的に」 そのきつい出来事を語る口調はあっさりとしている。 「後輩がチクるってどういう状況で?」 「もともと、その会社の後輩は大学の後輩でもあるんで
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「だから人間ってさ、結局欲に弱いんだよ」 「確かにそうっすね」 聡明な雰囲気のビジネスマン二人を乗せると会話が始まった。何かの会話の続きらしい。 「出世、お金、エロ、ギャンブル、飲食、娯楽みたいな世俗的なモノから得られる喜びを求めてんだよね」 「欲に誘われて本当に尊ぶべきものが霞んでしまうんだよ」 「ああ、なるほど」 おそらく彼らの関係性は上司と部下で、上司が何かを説いているのだと思われる。 「だから俺たちは、そんな欲に溺れかけている人たちに近づいて、丁寧に優しく、囁き