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【書評】ロベルト・ベルガンディ『突破するデザイン』

「デザイン思考」がバズワードとなった昨今、最近は初めてお会いした人には、わかりやすく「デザイン思考のワークショップの企画・ファシリテーションをやっています」と自己紹介するとだいたい納得してくれる人が多く、それで通していたが、どうもしっくりいかない。

そもそも、私が大学でPBLデザインスタジオのアシスタントを始めた5年前は、「デザイン思考、なにそれ?」な感じの人が多かった。実際、一応デザインの専門教育を受けた自分としては、いわゆるユーザーを観察して問題解決をするというのはデザイナーにはほぼ自明であって、「デザイン思考」がなんたるか、よくわかっていたわけではない。今ほどデザイン思考の本で溢れていなかったため、現場でやりながら親方に着く見習いのごとくファシリテーションを学んできた。

前置きが長くなってしまったが、ロベルト・ベルガンディ『突破するデザイン』は、流行りまくって誰もかしこもデザイン思考になってしまった現場に疑問を感じていた私には、目からウロコのような本であった。

本書を読めばわかるが、ベルガンディは決してイノベーションにおいて「デザイン思考」を否定するわけではない。ただ、イノベーションにもいくつか方法があって、ベルガンディ曰く、「デザイン思考」は「問題解決のイノベーション」である。一方、彼が唱える別のイノベーションの方法を「意味のイノベーション」と定義している。HOW(手段)ではなくWHY(目的)から、たくさんのユーザーの観察ではなく自分自身の内省から、大量のアイデアではなく、一つのアイデアから。アイデア発想の方法論が群雄割拠し、飽和状態である中から価値ある「意味」を取り出すのは難しいと彼はいう。脆くて危うい、しかし自分のアイデアを大事に育てるという「意味のイノベーション」は、特段体系化された「デザイン思考」の教育を受けたわけでなく、現場でやりながらイノベーション教育のファシリテーションを学んできた私には、「デザイン思考のワークショップの企画・ファシリテーションをやっています」という自己紹介の違和感の正体を明かしてくれたのだ。

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