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【デザインワークショップの実践】「デザイン思考」のコツ

東北大学大学院フィールドデザインセンターにて、同院災害科学研究所、NTTサービスエボリューション研究所と共同で、デザインワークショップが始まりました。ワークショップマネージャーを担当しています。

初回の授業で、「デザイン思考について15分くらいでまとめて話して」と言われたので、やってみたもののうまくまとまったかどうかわからず、noteのユーザーさんの反応をみてみたくアップした次第です。

0.Creative Confidence
1.失敗を恐れるな!
1.1 今までの基準で考えない!
1.2 唯一の正解はない!
1.3 評価はしない!
1.4 アイデアは全員のもの!
2.クリエイティブに考える方法
2.1観察する
2.2やってみる
2.3プロトタイプ
3.終わりに


0.Creative Confidence by Tom Kelly & David Kelly

IDEOの共同創業者でデザイン思考の提唱者、Tom Kelly & David Kellyの言葉。彼らは

人は誰でもクリエイティブになれる。その素質を自ら奪ってしまっている。

と著書で述べています。

デザイン思考は、それを解決するための考え方のツールというか、フレームワークのようなものです。

当然の事ながらツールやフレームワークはその設計思想がわからないと、単なるワークに陥ってしまいますので、今回はその設計思想の部分を噛み砕きながら説明します。

1.失敗を恐れるな!

まずデザイン思考の前にクリエイティブに思考するための大前提として、

- 今までの基準で考えない!
- 唯一の正解はない!
- 評価はしない!
- アイデアは全員のもの!

というルールがあります。

今までの基準で考えないというのは、例えば建築の専門家は企業の流通の問題を解決するために「高速道路のインターチェンジ付近に流通倉庫を作りましょう」となりますが、データアナリストだと「在庫を管理するシステムを作って効率化しましょう」となります。ただ、それでは自らの専門に閉じこもっているアイデアしか生まれません。

唯一の正解はない「新しいアイデア」を考えるときには、この専門知識の殻を打ち破る必要があります。

また、評価しないことも重要です。評価してしまうと発言のハードルが上がってしまいます。また、唯一の解がないのだからそもそも簡単にいいか悪いか評価はできないでしょう。

アイデアは一人のものではありません。これは、ブレストのルールにもありますがアイデアを共有することで人のアイデアに乗っかる結合作用が働きます。また、「先輩のアイデアだから彼の意見を尊重しよう」といった社会的な関係性からくる発言する気まずさも無くなります。

会議で「苦手な先輩に睨まれるのも嫌だし、失敗すると嫌だから黙っておこう」みたいなダメな典型的な会議ではなく、これらは言い換えれば、「発言するためのハードルを極力減らす」ということになるかと思います。

2.クリエイティブに考える方法

「失敗を恐れるな」は心構えの問題でした。では、具体的にクリエイティブに考える方法はどういったものでしょうか?

-観察する
-やってみる
-プロトタイプ

これら三つの要素はオーバーラップしていて、行ったり来たりしながら進みます。

観察する

「観察する」はデザイン思考の肝である「人間中心設計」を代表する方法です。

有名すぎる例としてMRIのエピソードがあります。これは「MRIの音が大きすぎて、子供が怖がってしまう。せっかく傷をつけずに診断ができるのに、暴れてしまうので鎮静剤を使う場合もある」という問題がありました。当然エンジニアは「音を小さくする方法」を考えます。しかしIDEOが提案したのは、MRIを海賊船に見立てて、お医者さんや技師が海賊の服を来たりして「今から悪い海賊をやっつけに行く」芝居を打ったのです。そうすると恐がる子供がいなくなって万事解決、という実話です。

「解決したい問題」を解決するのではない。顧客に求めているものを聞いても無駄です。それらは「問題」発見できていません。潜在的ニーズはユーザー教えてくれる。潜在的問題は観察から導かれるのです。

観察の方法としてよくあげられるのが、

ユーザーを探偵のように観察する
エクストリームユーザーインタビュー
自分でカスタマー・サービスを試す
意外な人に話してみる
プロトタイプを持って話してみる
プロトタイプを試してもらって観察する

探偵のように観察というのは、現場に行ってとにかく観察するということです。そこで普段と違う動作や、利用者が気づいていないような微々たることでもチェックします。例えば、パコ・アンダーヒルという人はお店を観察して、「お店にいる時間が長いほどたくさん買う」「狭い売場で人に押されると買い物を諦める」などの気づきを得ました。それで、お店に滞留する時間を長くしたり、売り場の通路を広くするなどの対策をして売上を増やしました。

エクストリーム・ユーザー、極端なユーザーです。商品やサービスを使いこなしている人。または、人と違った使い方をしている人(例えばお店に水曜の決まった1時間だけ来て帰る人など)。エクストリームユーザーたちはサービス提供者が思いもしなかった気づきを得ていることが多く、インタビューすることは有意義でしょう。

自分でカスタマー・サービスを試すというのも有効です。ようは自分が実験体になるのです。例えば「子供向けの新しいおもちゃ」であれば試しに買って来て遊んでみる。誰にも迷惑がかかりません。また、Yahoo知恵袋なんかをのぞいて見たりするのも良いでしょう。

意外な人に話してみるのは、思わぬことを思いついてくれることが多いからです。全く関係ない「子供向けの新しいおもちゃ」のアイデアを再生医療の専門家に聞いてみるなど、セレンディピティが起こりやすいです。

プロトタイプを持って行って、使ってる様子やインタビューをするのはとても効果的です。漠然とした話を聞かされるより、具体的なものをみせた方が、普通のユーザーは話をしやすいのです。

やってみる

「やってみる」というのはデザイナーがいう「手を動かせ」というやつですね。とにかく作ってみる、やってみる、試してみる、観察する、というのをひたすらやります。PDCAを超高速で回すみたいなことです。

コツとしては、

ワークプレイスに来る
下手でも完成させる
ダーティプロトタイプを作る
問題をブレイクダウンする
助けを求める

ワークプレイスに来るというのは、別の人だったり、チームの人がいる環境になるべく身を置くということです。他の人、あるいはチームの進捗をみて焦ったり、ときにはアイデアについて意見交換したり、思い切ってアイデアを交換してブレストするなど、とにかくいろんな見方から思考することが良いアイデアを生み出す近道です。

下手でも完成させるというのは、完成度にこだわるあまり、「試す」プロセスが減るとそれだけフィードバックが減ります。ユーザーからフィードバックを得れるならば、5分で書いた紙芝居でも構いません。ダーティプロトタイプをどんどん作ってどんどんユーザーに聞きましょう。

問題をブレイクダウンするというのは例えば「世界の貧困を無くす」なんて大きな話題ではとっかかりがないですし、誰を観察すればいいのかわかりません。そこで問題を「世界の最貧困の村で炊き出しをする」などブレイクダウンして考えてみると、具体的なユーザー像が見えて来ます。

最後に、どうしても詰まったらファシリテータなどに助けを求めましょう。きっと助けてくれる(はず)。

プロトタイプ

プロトタイプはユーザーのフィードバックがもらえれば、他人からはゴミみたいでも構いません。むしろ完成度が高すぎると、「努力」が慮れて「いいね」という漠然とした反応しか得られないことも。「ラピッド」プロトタイプあるいは「ダーティ」プロトタイプと言いますが、つっこむ隙があることが重要です。

プロトタイプは考え方の段階に応じていくつかレベルがあります。最初の頃は例えば「スマホのサービス」であれば、紙に絵を描いて、「このボタンを押すとこの画面が出て来て・・・」というような紙芝居で十分です。コーディングをする必要は、ユーザーの反応をみる上では重要ではありません。

これはプロトタイプのよくできた例です。これも有名な動画です。

動画は「画面を押すと中のダンサーがインタラクティブに反応して踊りが変わるアプリ」です。見てもらえばわかりますが、これは人間のサイズに拡大したiPhoneのモックアップです。それをビデオで演じて撮っています。わずか30秒ほどでアプリの狙いがわかって、すぐにできる良い例です。

イベントをやるなどのサービスをプロトタイプしたいというときはどうすればいいでしょうか?ストーリーボードを作ることが効果的です。ストーリーボードは簡単なスケッチで重要な体験のシーンを一つずつ記録しポストイットや紙で一連の体験の絵コンテやマンガを作ること。

アイデアが詰まって来たらカスタマージャーニーマップを用いるのもいいでしょう。


3.終わりに

まだまだ紹介できてないこともありますが、「コツ」なのでこれで締めたいと思います。自分なりに噛み砕いたのでいわゆる「デザイン思考」の厳密な定義からはそれている部分もありますが、ご容赦を。

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