見出し画像

「共創」を阻む日本企業の「工場文化」。この事実に目を向けないとオープンイノベーションはブームで終わる

オープンイノベーションとか共創という言葉がよく言われるようになって、僕もそれに関する仕事をしているわけですが、最近、なぜそんな言葉が流行るようになったのか、その核心に近づいてきているような気がする。
東京ミッドタウン日比谷にあるBASE Qというワークスペースの責任者である光村圭一郎さんや、僕が社長を務める会社フィラメントのメンバーとの日々の会話での気づきを以下にまとめます。

1) 日本企業の多くは工場由来。ルールも文化も工場

「オープンイノベーション」や「共創」という言葉をよくつかう業界(つまり日本の大手企業のほとんど)は「工場」を起源に持つ会社が多く、社内のルールも工場のルールが延長・準用されてつくられている。

つまり会社のルール全般が設備産業。
社員の管理も設備管理の延長でしかない。
工場の稼働の効率性を上げ、歩留まりを良くし、コストを減らす。
工場にとっての善であるこれらのことを社員の管理に準用すると「今やってることを安く、上手にやれる人」ができあがる。

そうして生まれた「工場的な意味で仕事ができる人」がバリバリと出世を遂げたのが昭和の後半から平成にかけての時代だったんではないかと思うのです。
「今やってることの精度と効率を上げていくのが上手な人」が評価されていく時代だったともいえるかもしれない。

2) 工場が作るのはモノであってヒトではない

その結果、生まれたのが「新しいことが何も生まれない硬直化した国」としての日本だったのではないでしょうか。
世界中のすべての国が日本と同様に硬直化していたのなら競争力の違いは生まれなかったと思うのですが、価値観や環境や意識が全然違うほかの国ではその間にいろいろなイノベーションが生まれている。
アメリカのGAFAや中国のBATに代表される非工場的なビジネス、シェアリングとかデジタルプラットフォームなどがその代表。
一方で、日本がもともと得意だった工場としての仕事ももっと大きくて圧倒的に効率的な工場(鴻海とかね)ができてしまって、その分野でも一流ではなくなってしまっているわけだ。

かつて、一時的に「世界の工場」だった日本だが、今は脱工場文化をどうやって実現していくかが重要になっているように思う。
「今やっていることを安く、上手にやれること」を自分たちの会社の仕事だと定義して、それが上手な人ばかりが出世してきた過去の日本企業。そんな組織文化では新しいことをする人はいないし、いたとしても評価できないし、そもそも決められたこと以外はできないルールが組みあがってしまっている。

3) 工場は閉鎖的であり外部とはつながりにくい

こうなるに及んで、新たなビジネスを立ち上げる方向を模索しだしたけど、今の社内を見渡してもやれそうな感じがしない。
だから「オープンイノベーション」とか「共創」というキーワードを掲げ、外部の知見を入れようとしている。
でも結局内部のルールは工場のままなので、新規事業を進めるためのルールが整備されておらず、外部の提案は基本却下されていくか受け取り手が現れないまま時間が過ぎていく(これがオープンイノベーション型のアクセラレーションプログラムをやってもなかなかうまくいかない理由。「先にやることあるだろ」といつも思う)。

工場型企業の内部にはビジネスの上流工程における仮説をつくり検証するための仕組みがないし、仮説検証しながらビジネスの可能性を模索し続けることができる人もいない。
オープンイノベーションどうこうのという前の段階がまだできていないのに、とりあえずオープンイノベーションブームに乗っかればなにかできるだろうと思っている人が多すぎる(し、業者も儲かるからそらやりますわな)けど、本当に大事なのは足元の話なんじゃないかと思う。

いたずらにオープンなアクセラレーションプログラムとかやっても「焼き畑農業」的になるだけで、継続的な実りは得られない。
だから、社内に閉じたクローズドなアクセラレーションプログラムをやりながら、社員を育て、会社のルールを徐々に変えていく(最初は治外法権的に進める)。

4)会社を「工場」から脱皮させ、ビジネスが創れるヒトを創ろう

そういうやり方がいいんじゃないかなと思い、去年から数社で取り組み始めていますが、今、いくらか成功事例が生まれつつあります。

オープンイノベーションプラットフォームみたいなビジネスは手っ取り早いのはわかってるんだけど、僕は成果性の方にこだわりたくて、役所辞める時にも(ほかの方々がやられるのはいいけども)自分では絶対やるまいって誓ったんですよね。

そして、めちゃ地道ながらも今、ある程度、どうすれば成果につながるかが見え始めている。
このNTTコミュニケーションズさんのお仕事とかまさにそれです。

5)オープンイノベーションは目的でも商品でもない

手っ取り早い方に安易に流れず、本質に目を向け、その課題解決の仮説を立てて、トライしまくる。
思えば、自分の事業の中で、そういうことをずっと続けてくる中で自分も成長してきたと思うし、そういう泥臭いことをやっているからこそ、多くの素晴らしい仲間にもお客さんにも恵まれているんじゃないかな。

今、フィラメントでお仕事をしている会社では、自社の問題点が「工場的なルールや社員のマインドセットにあること」を肌感覚的に理解されていて、その改善をまずはやるべきだという共通認識に立てている。
だから、社内から、「脱工場的人材」を創っていくことができるし、そうした人材とともにビジネスを一緒に創っていく中で、ビジネスを生み出すための「手段として」オープンイノベーション的手法が使われていくようにしていこう(個人の思いです)。
オープンイノベーションという言葉は本来、手段をさす言葉であり目的ではない(まして商品でもない)はずなのだから。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

皆さまから頂戴する「スキ」。それは僕のnote作成の原動力です。
丹精込めて書いた記事が、読者の皆様の心に響いたことがこちらにも伝わる「スキ」は本当にうれしい…マジで。
なので…よかったらどうぞ、心のハードルを思いっきり下げて、ぜひポチッとお願いいたします~!!

さらに、よろしければ僕の会社フィラメントのFacebookページにもいいねをいただけると幸いでございます~


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?