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三重の玩具蒐集家・伊藤蝠堂が発行したおもちゃ誌『草紙』第2期「第三回於茂千也祭号」

 以下の記事で三重の玩具蒐集家・伊藤蝠堂(伊藤吉兵衛)(関連記事と動画も紹介しておきたい)が発行した趣味誌『草紙』を紹介したが、この雑誌は、川口栄三『郷土玩具文献解題』(郷土玩具研究会、1966年)によると、『草紙』は昭和9~11月に発行されて、第一期として5冊、第二期として1冊発行された。第二期はまだ未紹介であったので、写真も含めて紹介していきたい。

大きさ:約20.3cm×約14.4cm、和装、長辺綴じでなく短辺綴じ
※ただし、各ページの紙面の大きさが多少異なっている。
印刷:昭和11年3月10日
発行:昭和11年3月15日
発行編集:伊藤吉兵衛 三重県富田町富田九八三
印刷人:中川帋魚 三重県四日市市濱田一九〇二ノ一
印刷所:合資会社中川印刷所
頁数:28頁

口絵 日本一の軍扇
第三回於茂千也祭報告 伊藤蝠堂
日記ノ中ヨリ 永井清司 西宮
於茂千也祭のことども 山下翠松 神戸
ギリシヤ産手びねりの馬 山内神斧
東京行 浜島静波 松岡香一路 伊藤蝠堂
御船鈴に添へて
蝠堂於茂千也祭函を観る 加藤博陽(鳩笛庵)
旅でひろったおもちゃ話 島田周助
東大寺二月堂修二会堂司所用鈴
あとがき

表紙
目次
口絵 第三回於茂千也祭を祝して製作された扇
あとがき、奥付
裏表紙

あとがきにも述べられているが、第1期が終了してから約1年の期間が空いている。この号は昭和10年5月5日に開催された第三回於茂千也祭の報告がメインとなっている。このお祭りは毎年開催されていたようで、この年は端午の節供に開催された。開催日時は一定でなく前年は梅の節供に合わせて2月11日開催されたが、厳寒の時期であったため参加者の要望により変更したという。以下に当日の参加者を紹介したページを写真で掲載しておきたい。

第三回於茂千也祭の出席者

「第三回於茂千也祭報告」によれば、伊藤のコレクションの鑑賞を一般の人にも開放して盛況であったようだ。地元のお祭りというような位置付けであったのだろうか。

 「東京行」は、浜島静波、松岡香一路、伊藤の四光会が東京に旅行して郷土玩具蒐集家と交流した記録である。彼らは盛大にもてなされたようで、玩具蒐集家・有坂与太郎、拙noteでも紹介したことがある趣味人・武藤喜邦がその中心にいた。簡単に滞在中の出来事を以下に記載しておきたい。

夜行列車で東京へ移動

1日目 有坂与太郎を訪問、銀座で昼食、歌舞伎を観劇、武藤喜邦、鈴木祥湖らと夕食

2日目 東玩会へ出席、尾張屋、伊セ平を訪問、観劇、趣好会の新年会に出席

3日目 明治神宮参拝、銀座で有坂与太郎、落語家・三遊亭しん蔵に会う、有坂夫妻同行で玩具蒐集 ※松岡、伊藤のみ。浜島は知人に会うため別行動。松岡、伊藤も一部別行動があったようだ。

夜行列車で名古屋へ移動

東京へ旅行した時期は明確には分からない。浜島によれば、1月14日に出発で、伊藤によれば、名古屋へ向けて東京を出発したのが1月14日になっている。時期は不明ながら、趣味人同士の交流の記録として貴重であろう。

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