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【感想】みんなの当事者研究ー臨床心理学増刊第9号

2017年8月発行だから、5年積読してた本ですねw

熊谷晋一郎と国分功一郎の対談が興味深くも理解できず、何回も挫折して諦めて寝かせてた💤

対談には「一部のマイノリティにとって、自分の経験を解釈したり人と共有するためのツールとして日常言語は使い勝手が悪い」という発言がある。

言葉のバリアフリー化のための言語資源として中動態が使えるのではないかと。興味深いが、そもそも中動態とはなんぞや?笑 そして、「中動態の世界」なる本を買ったり。長かった。

二人の対談の後は、当事者研究の実践方法や体験談だったので読みやすかった。この本で言う当事者は発達障害や自閉症依存症の患者のことである。

外側、つまり多数派から押し付けられた症状と、本人が実際に抱えている問題意識には差異がある。だから、当事者側から病気を研究して、症状を再定義のが当事者研究の目的である。

アルコール依存症の研究会が語る、「健常者は、『アルコール依存を反省し、もう二度とやらない』と意志を固めることで、依存から脱却出来ると考えるが、依存症の脱却においては逆効果で、むしろ自分はまたやるかも知れない、と認めるところから治療が始まる」 など、意志と意識の揺らぎの語りが面白いつまり、多数派は意志が弱いから依存すると考えてしまうが、意志の問題では無い。なぜなら、アルコール依存症の患者は依存に至るまでの間に、精神の均衡を崩すような経験をしていて、恒常性を取り戻すために依存しているから。

……いや、本当に面白いんですよ。

こんな風に要約して書いたらおもんないけど。言葉が豊か。

当事者研究は、多数派の世界に適応するためのハックを編み出すのではなく、自分の弱さを認め周囲の人に発表し共有する。つまり、アップデートするのは当事者というよりも、発表を聞く側なのである。こんな風に書くと、「ふーん、周りに助けて貰うために自分の問題意識を言語化してるんだ。」という理解に止まってしまう。

つまり、患者とそのケアをする医療者の世界の話なのだと。

ところが、この本には上野千鶴子のコラムもある。フェミニズムもまた、当事者研究によって拡大してきたからだ。私は彼女のことを寡聞にして知らず、ネットで逆にジェンダー問題で糾弾されて(?)いる時に初めて彼女を知った。

流石、日本のフェミニズムを牽引してきた人なのでそのコラムにはフェミの歴史や戒めが込められている。もそも私たち女性の権利獲得のための戦いにも、まずは自身の問題意識を言語化する試みが必要であり、この世界の全ての人にとって当事者研究は有効だということです。

もはや言語は人間を規定する歴史的アプリオリではない」(略)コミュニケーションは過剰だが、言語は使われていないというのが現代社会の特徴で、そこで人間は、言語を通じて無意識を重厚に構成するのではなく、軽やかな記号だけを交わして生きている。

みんなの当事者研究

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