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明日晴れたら (5/10)

晴れていれば空は赤く染まり始める時刻に
先月で辞めた職場の先輩から連絡が来た
私を妹のように可愛がってくれて
唯一気軽に話せた人

「今からご飯でもどう?」って

たまたま目に入った街頭掲示板の天気予報には
昨日は無かった晴れマークが小さく表示されていて

最後かもしれない地球での一日
それを締めくくるには最高のお誘いだと思い
すぐに「いいよ!」と返事をする

駅前で待ち合わせて小走りで改札を出て来た先輩は
前会った時よりもさらに綺麗になっていて
元々あった素敵な笑顔に磨きがかかったみたいだった

適当なお店に入って適当に好きな物を頼み
そこまで多くは無い想い出話で盛り上がる
久しぶりに思い切り声を出して笑った

仕事も会社も順調らしく
私ひとりがいなくなった所で何も変わる事は無く
その分誰かが補って世の中は上手い事回るんだ

それよりも驚いたのは
先輩はもうすぐ結婚するんだって
赤ちゃんももうお腹にいるんだって

軽く手を当てて触らせてもらったけど
もちろんまだ何もわかるはずは無く

でもここに、新しい命があるのかと思うと
不思議でたまらなかった

だから綺麗になったんだろう
だから綺麗に見えたんだろう
隠しても溢れ出る幸せを
人生の絶頂を目の前にして

私には少々刺激が強すぎるのか
眩しすぎて途中から顔すら直視出来なくなっていた

密かに私はこの先輩に憧れていた
でもどんどん遠くへと行ってしまう
それは宇宙に行くよりも難しく遠い場所に思えた

「新しい仕事見つかった?紹介出来るかもよ」
「ありがと、でももう少しゆっくりしたいかな」
「そっか、何かあったらいつでも言ってね」

その純粋な優しさがまた眩しくて痛い

「旅行に行こうと思ってさ」
「一人旅か、いいね」
「ちょっと不安だけどね」
「行けるうちに行っておいで、私にはもう出来ない事なんだろうし」

そう言って自分のお腹をさわる先輩に
この人になら本当の事を言ってもいいかもしれない
そう思う反面、この人だから心配をさせたく無かった

家族も友達もいないこんな私を
常に気にかけてくれる人

無鉄砲な妹でごめんと心の中で謝った
もし帰って来る事が出来たなら
沢山の、凄いお土産を持って会いに行くから


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