へびのあしあと

「日常にファンタジーを。物語のような毎日を。」 詩のような短編のような。脳内に上映され…

へびのあしあと

「日常にファンタジーを。物語のような毎日を。」 詩のような短編のような。脳内に上映される映像を言葉にしています。

マガジン

  • カザリ

    この世界では人に影響を与えられる人と そうで無い人がいる 一生のうちで深く関われる人は 生まれた時にすでに決まっているんだ。 それ以外の人たちを 彼は「カザリ」と呼んだ。    (序章0〜終章14)

  • 朗読してもらったお話しまとめ

    読んでもらった記事をくるっとまとめてみました。 朗読してくれる方いましたら いつでもお声がけください。

  • 真夜中のASMR

    丑三つ時に繋がった、 ある幽霊のお喋りは、 いつしか事件の真実へと近づいて行く。 全五話。

  • 短編「今日の夕飯」

    家に帰ると玄関で出迎える嫁がいる。 「今日の夕飯、どうします?」

  • 明日晴れたら

    明日晴れたら宇宙へ行こう。

最近の記事

ほっぺたのソテー

一週間頑張った自分へのご褒美にと 巷で話題のレストランで ほっぺたのソテーを食べたら あまりの美味しさに 私のほっぺが落ちてしまった 落ちたほっぺは店に回収され 下処理をされ調理され味付けをされて 次に食べる人のほっぺたのソテーになる 「このほっぺたはどんな方のほっぺただったのですか?」 そうシェフに聞いてみた 「当店では若くて張りのある女性のほっぺしか使っておりませんのでご安心を」 さすがに怖くてそれ以上聞くことが出来なかった 私のほっぺは食材として通用しますか

    • 人狼ゲーム

      朝になりました 「今日の被害者はいません 村人側が上手く防いだようです 残り数日頑張ってください」 突然始まった人狼ゲーム 本当の死が待っているリアルなやつ 随所に設置されたカメラの先から眺める人たちは 私たちを賭けの対象にしか見ていない 予言者の人どうだった? 何でその人を守ったんだろう? 実は私は霊媒師なんだ じゃあ人狼はお前だな それも嘘かもしれないじゃん 誰も真実を言っている保証は無く 初めて会った人たちの素性もわからず 疑いの目でしか見れなくなっている 「

      • 桜道中記

        大名行列のように 春を振り撒きながら 北へ北へと闊歩して行く 桜たちを眺めながら 季節の移ろいを 始まりと終わりを感じていた 同じように沿道で見守っていた 沢山の人達からは 暖かい拍手や歓声が上がる 「また来年も頼むな!」 ワンカップ片手にそう叫ぶ男の声に 桜たちは枝の手を高く上げてそれに応えた 桜たちが歩いた後には 道に埋め尽くされた花びらの絨毯が 祭りの後のような寂しさを残す 湿った強い風が 漂っていた春を吹き飛ばしながら 次の季節の準備を始めていた

        • リアリティゲーム

          現実の世界が嫌になって バーチャル空間へと逃げ込む人が増えていると言う そんな僕もずっと学校に行けなくなっていて 毎日バーチャルという名のゲームの中に入り浸り そこに引きこもっている一人だ 発端は何だっけ? 軽いいじめを受けて学校が楽しくなくなって 毎日がつまらなくて、人や外が怖くなり始めて 気づいたら学校に足が向かなくなっていたんだ 何日か休むとそれはクセになって 休めば休むほど行きづらくなっていて これじゃ駄目だとわかりつつも 中身の無い毎日が過ぎて行った その

        ほっぺたのソテー

        マガジン

        • カザリ
          15本
        • 朗読してもらったお話しまとめ
          10本
        • 真夜中のASMR
          5本
        • 短編「今日の夕飯」
          10本
        • 明日晴れたら
          10本
        • 短編「ニンゲン」
          4本

        記事

          花束の代わりにフランスパンを贈ろう

          フランスパンをかじりながら街中を闊歩したい それが私の昔からの夢だ 誰にもわかってはもらえないけど 凄くかっこいいしかわいいと思うんだ 例えば原宿の竹下通りで 渋谷のスクランブル交差点で クレープやタピオカなんかじゃなくて 一本の長くて太いフランスパンをかじる それがブームになって、誰もかれも 道行く人が皆フランスパンを抱えている 鞄からはみ出している人もいたりで それもまたお洒落でトレンドになって そんな未来に憧れていた いつか来るんだと思っていた でもまだそんな気

          花束の代わりにフランスパンを贈ろう

          女神

          どんな神様も信じられない僕は 救いを求めたくなった時 何に祈ればいいんだろう そう言うと君は 「私に祈ればいいんじゃない?」 と菩薩のような笑みを浮かべてそう言った 「女神様かな?」 「そう私は女神様だよ」 手を合わせて拝むと 偉そうに胸を張る君は 世界中のどの神様よりもよほど信じられた その女神はお腹が空いたのか 腹の虫が大きく鳴いて 「そりゃ女神だってお腹空くでしょ!」 そんな人間らしいこの神様だけは 死んでも守りたいと思えるほどに 神々しい癒しの力を僕だ

          月影

          「どの月にお願いしたらいいと思う?」 夜空に浮かぶ三つの月を見上げながら 君は試すようにそう言った 惑わされているのは承知の上で でもそれが僕には居心地が良くて その青白い頬に軽く触れると 月灯りで出来た影が二つ消え去り 本物だけが姿を留めた もしも三人の君がいたのなら その全てに惚れてしまうんだろう 月の数だけ君を好きになるんだろう 「よくばりめ」 そう言い悪戯っぽく微笑んだ君は 僕の前に幻のように漂って またいくつもの幻影を作り上げては惑わせた

          キャラメル

          毎日決まって午前三時に目が覚める トイレに行って水を飲んでスマホをいじって 気づくと三十分ほどが経っている 夢のハードディスクの容量を見てみると 三十分ほどしか録画されていないから おそらく夢の第一部を見終わった後なのだろう 今夜は蒸し暑くて布団に入っても眠れずに 風に当たりたくなってベランダへと出た 夜明け前の静寂 草木一本一本がゆっくりと呼吸しているような この世界で起きているのは自分だけのような そんな感覚に陥って 何の夢を見ていたっけ? 思い出そうとするけど

          隣の小悪魔

          君はあの時ペンギンが見たいと言った それも動物園ではなく野生のをと 「できる?」 それが付き合う条件だった いるとしたら南極かガラパゴスか どこぞの大富豪でも簡単には行けない場所 学生の僕には到底無理だった それは彼女の優しさで 僕をあきらめさせる口実で 傷つけないよう咄嗟に考えた 君なりの振り方だった そんな、若い頃の記憶が急に蘇って来たのは 家族で水族館に来ていたからで ペンギンのぬいぐるみをせがむ娘が そんな淡い過去を思い起させた 報われなかった恋ほど 深く

          卒業までの数か月

          長い髪がタイプなのだと噂で聞いた その日から私は髪を伸ばし始めた 部活を引退して本格的に受験シーズンになり でも私は専門学校志望だからあまり関係は無くて みんなが忙しくなって恋の話をしなくなった時期に 逆に私は恋をしたんだ 卒業までの半年間 告白どころか話す事も距離を詰める事も出来ず たまに廊下ですれ違っては 胸のドキドキを悟られないようにと 自分らしくも無い、下を向いて幽霊になる 髪はずっと、物心ついた頃から短くて 男の子のようだと言われながらも ボーイッシュな自分

          卒業までの数か月

          カフェレストラン・ミステリー

          いつもと違う道を選んで帰っていると 今まで気がづかなかった細い路地を見つけた その奥にあるレンガ調の外観の店が目に入る チカチカと点滅する看板には カタカナで「ミステリー」の文字 どうやらカフェレストランのようだ 時代が止まったようなそのお店 多少入りずらいが興味をそそられ重い扉を開けると 湿ったベルの音がカランと鳴った 店内は薄暗く他に客はいない なんとなく、その名の通りミステリーの匂いがして 思わず刑事か名探偵にでもなった気分になる 奥から出て来た若い店員は 「い

          カフェレストラン・ミステリー

          何分の一かの彼女

          アパートの隣に住む女性は 学校のキャンパスで何度か見かけた事があるから きっと僕と同じ大学なのだろう 駅へと続く商店街のクリーニング屋で 窓越しにその女性をよく見かけるから おそらくそこでバイトをしているんだろう 近くのコンビニですれ違った時 その度にアイスを沢山買っていたから よほどアイスが好きな人なのだろう 身長は160㎝くらいの茶髪のボブカット 細い体に切れ長の目、薄い化粧 そこまで大きな特徴は無いけれど 以前から、このアパートに引っ越す前から どこかで見かけた事

          何分の一かの彼女

          恋に落ちる瞬間

          人が恋に落ちる瞬間など なかなか見る機会は無いだろう しかもそれが自分の写っている写真となると 恥ずかしくて何度も見る気にはなれない 彼女とは付き合ってもう三年ほど経つのに 「この時に私の事好きになったんだよね」 と、ことあるたびにその写真を開いては 意地悪っぽく見せつけて来る 好きになった、と言うか 好きだったのを確信した、と言うか 友達から恋愛対象へと変わった、と言うか まぁどれも似たようなもんか 大学のサークル内の待ち合わせで早く来すぎて たまたま二人きり

          恋に落ちる瞬間

          おなかのあかり

          拾ったのは小さな星のカケラ ピンク色で美味しそうで 金平糖かな?と思って端っこ舐めたら 舌がピリピリ面白くて 少しかじると軽くジャリって音がした 暗い場所ではまばゆく光り ほんのり優しく灯し続ける 枕元に置いて電気を消して 眺めていると眠気を誘い いつの間にか朝になる まだ歩き始めたばかりの妹が 目を放した隙に口に入れた星のカケラ 「食べちゃダメ!」と 大声で言った拍子に飲み込んで それから、妹のお腹は 暗闇の中で光るようになった それがうちのひいひい婆さんで

          おなかのあかり

          走馬灯

          走馬灯の中に 自分の知らない映像が紛れていた 「経験した事しか流れないですよ」 そう言われはしたものの 全くもって心当たりが無く ただ思い出せずにいる片隅の記憶なんだろうか? 知人に紹介をされて来たのは 現時点までの走馬灯が見る事が出来ると言う場所 そこはアパートの一室で ベルを鳴らすと中年の女性が出迎えた もし自分が今死んだとしたなら 現時点で見るであろう走馬灯を 生きているうちに見られると言う 不思議な体験が出来るらしい ソファーに寝かされ軽い催眠をかけられる

          事実は別腹

          宇宙の始まりを知っている その終わり方も知っている まだ世に知られていない発見や 教科書に載っていない事実だって 自分で言うのも何だが 私は生まれながらの天才なんだと思う 気になった事、興味を持った事があると 人々が気にも止めないような事でも 納得行くまで知りたくなって勉強をすると 一般に広まっているその先までをも発見してしまう 軽く風邪をひいた時 薬の成分が気になって調べていたら どんな病気にも効く万能薬の作り方がわかった 教習所に通っていた時に 免許を取ったらどん