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明日晴れたら (4/10)

宇宙に行くために必要な物が他に無いかと
私は思い出のある街へと足を運んだ

駅を降りると目に入る大きな観覧車は
月日が過ぎても変わる事無く
動いているのか止まっているのかわからない速度で
静かにゆっくりと回っている

一年ほど前に別れた彼とよく来た場所だった

綺麗とは言えない海を眺めたり
小洒落た小さな店を見て回りながら
つい欲しくなる小物やバッグをぐっと我慢する

いるのか会えるのかもわからない
宇宙人へのお土産は何がいいんだろう?
カステラでいいか、いや食べ物よりは物がいいか
地球らしい物ってなんだ?てんで思い当たらない

前に一度だけ食べたことのある
本場の小籠包がもう一度食べたくなって
けっこうな距離を迷いながら歩いた

あの時はもの凄く美味しかった記憶も
期待が膨らみすぎていたせいか二度目だからか
案外普通の味に感じた

分厚い雲で覆われた空の下
所々ゴミが浮かぶ海を見下ろして
宇宙では汚い海は貴重だぞと自分に言い聞かせる

帽子が風で飛び、奇跡的にキャッチをした
そんな彼との過去の映像が蘇って来て
そんなこともあったなと、思わず笑みがこぼれた

そう言えば、何で別れたんだっけ?
思い出せなかった

喧嘩も浮気も、決定的な出来事など無かったはず
でもいつの間にか距離を取り会わなくなった

なぜだろう?
この街に来てからずっと彼の事ばかり考えている

無意識にでもまだ心残りがあるからなのか
想い出として既に消化され根付いているからなのか
それはわからないけど

私の心の端っこに、フックのように指をひっかけて
プランとぶら下がっているような
すっきりとしない違和感があった

観覧車を見上げて想像をする
中からの景色はどんな感じなんだろう?

一度も乗った事が無かった


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