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入社してはいけない会社の選び方

「どんな会社を選べばいいのだろう?」
就職を考えている卒業予定の学生、転職希望の会社員の方で、会社選びに悩まれる方は多いです。
今回は、組織コンサルタントの立場で、
「どんな会社を選べばいいか?」
ではなく、
「どんな会社を選んではいけないか」
の観点で「入社してはいけない会社」の特徴について、お伝えします。


会社の歯車になりなさい

大学生の時に受講した経営学の講義で、全講義の最後、担当教授は、こんなことをおっしゃってました。

「君たちは将来、会社で働くことになると思う。その時は会社の歯車になる。願わくば、その会社にとって欠くことのできない歯車になって欲しい」

一連の講義の最後に教授から発せられた言葉、いわば、受講した学生に対する「送る言葉」のようなニュアンスです。それを聞いた当時は、「サラリーマンには夢も希望もないってことか」と感じたことを今でも覚えています。

当時は、アルバイト経験はあったものの会社でフルタイム社員として働いた経験がなかったため、その言葉の意味など理解できるはずもなかったわけですが、組織で働く経験を経て、自分なりにその言葉の意味を考えると、会社と社員の関係性を捉えた、興味深い言葉だと認識を改めました。

会社と社員の間にあるズレ

会社で働く社員は、自分の人生の一部をその会社に預けている感覚を持っています。

しかしながら、組織コンサルタントの立場で、社長と接する中で、社長の感覚と社員の感覚にはズレが生じていることに気付きました。

社長は、社員に人生の一部を預けてくれることを望んでいるわけではなく、売上を上げてくれる機能、事務処理をしてくれる機能、商品を製造してくれる機能が欲しいわけです。

先程の教授の言い方を借りれば、「目標を達成するための歯車(機能)が欲しいのだが、その歯車(機能)は人の形をしている。」ということです。

しかし、社員は、文字通りの「歯車」(機能)ではありません。

社員は、働く意欲をはじめとした心を持つ、変化し、成長する生き物です。

限られた人生の中の限られた時間を会社での活動に使うことで、生きる意味を見出す、様々な環境の中で働く意欲が上がり下がりする、なんとも不安定な「歯車」です。

社員は、それぞれが持つ価値観の中、働きがいのある職場で、成長し、意味がある人生を送りたいと考えるでしょう。

一方で会社は、多くの社員がいる中、一人一人の意味のある人生に寄り添うというよりも、会社の目標達成のための機能(歯車)を求めます。

ここのズレをその会社がどのように捉えているかが、今回テーマである「入社してはいけない会社」を見極める上で一つのヒントとなります。

「配慮はするけど、遠慮はしない」

会社が求めているものが、会社の目標を達成するための機能(歯車)としての社員であるとすれば、会社から見れば、その歯車は、目標達成に向けて、可能な限り効率的に高速回転して欲しいものです。

一方、働く意欲をはじめとした心を持つ、生身の社員の立場からすれば、働きやすい職場で、自分のやりたい仕事を自分のやりたい方法でやり、自分の納得できる報酬や地位を得て、その先に成長実感を得たいと考えるものです。

どちらの考え方が正しいとか、どちらかの考え方を重視すべき、ということではありません。

会社の考えと社員の考えのバランスが重要です。

前者(会社側の意向)が強すぎて、個人の尊厳や働く側にとっての価値観を全く意識しなければ、社員は会社から離れていきます。

後者(社員側の意向)が強すぎて、会社が個々人の価値観に合わせるばかりであれば、歯車(機能)がかみ合わず、かみ合っても上手く組織が機能しないまま、成果が上がらない会社になります。

理想の形は、「配慮はするけど、遠慮はしない」という会社の考えです。

会社が個人に求める役割(機能)を明確にし、その役割を求める社員を採用した上で、社員がやりたい仕事と実際にやる仕事をすり合わせ、働きやすい職場を作るための労働環境の整備、報酬やポジションを決める際の透明性を上げて、社員の納得感を醸成する環境を作ることで、会社は社員に「配慮」する。

その上で、会社が求める目標達成に向けて「遠慮なく」指示を出し、目標未達成があれば、これを埋めるような行動を促すことで、会社を目標に近づけていく。

この「配慮はするけど、遠慮はしない」というバランスがあって、はじめて社長と社員は同じ方向を向いて、会社の「歯車」(機能)は、効率的に高速回転できます。

バランス感覚がある会社が存続する

求職者は、このバランスが適正かチェック頂くことが「入社してはいけない会社」を見極める上でのポイントとなります。

見極める上での会社側からのNGワードを見てみましょう。

  1. うちの会社は成果さえ出して貰えれば、給料はすぐ上がるし、あとは自由だから。

  2. うちの会社では、君のやりたいことを君が思うようにやることができるよ。

  3. うちの会社は、ノルマもないし、上司と部下の関係もない、フラットな職場だよ。

1.の発言(うちの会社は成果さえ出して貰えれば、給料はすぐ上がるし、あとは自由だから)は、会社側の意向(遠慮しない)が強く、社員側の意向(具体的な配慮)が不明確な状態です。
このような会社は、社員の自主性を重視するという考えから社員教育を軽視する傾向があります。
すると、入社後、多くの社員が、会社が求めている成果の出し方が分からないまま、成果だけは求められるが、出来ない人はずっと出来る様にならないことが起こります。
すると、離職率が高い、成果を求める利己的な社員が多数を占める殺伐とした組織が出来上がってしまいます。

2.の発言(うちの会社では、君のやりたいことを君が思うようにやることができるよ)はどうでしょう。
入社してすぐに、自分のやりたいことをやりたいようにできる会社はどうなのでしょうか。
会社は存続していくために、目標があります。
会社の目標があるため、会社の目標を度外視して、個人のやりたいことができる会社は存在しません。
このような発言が出る会社は、求める社員像が明確ではなく、人が足りないから、とりあえず人を採用しよう、という発想で動いており、入社後、求職者のイメージと異なる仕事に就く可能性があります。

理想は、会社側が明確に求職者に求める仕事のイメージを提示し、その仕事が求職者のやりたい仕事と合致して「やりたいことができる」状況となることです。

3.の発言(うちの会社は、ノルマもないし、上司と部下の関係もない、フラットな職場だよ)、ノルマがない、上下関係がない、というメッセージはどうでしょうか。

ノルマがないということは、中長期的なゴールイメージがない会社である可能性があります。
※もしくは「ノルマがない」ということを「成果給ではない」という意味で使い「目標」はあるケースの会社もあります。

中長期的なゴールイメージに向かって、会社と社員を成長させるためには、具体的かつ計測可能な目標が必要となり、この目標達成のための調整機能としてのヒエラルキー(管理者としての上司)が必要となります。

これがないということは、未来に向けての具体的な変化のイメージがないままで現状維持に甘んじている会社か、仕事が個々人の裁量に委ねられていて、組織として体をなしていない、個人事業主の集団的な会社であるか、いずれかでしょう。

会社の意向、社員の意向、「配慮」と「遠慮」のバランスが取れていて、会社と社員が同じ方向に向かっているのか、求職者の方は、このバランスをチェックしてみてください。

バランスを取るための組織の仕組みとは

社員に「配慮」する(労働環境の整備、社員にとって働きやすい職場作り、社員が納得できる報酬や地位を提供すること)ためには、会社は「遠慮なく」目標に向かって社員に不足を埋める行動を促していくことが必要となります。

業績が上がらなければ、社員を配慮することなど出来ないからです。

この「配慮」と「遠慮」のバランスを取るために会社の中で作られるものが、「ルール」「評価制度」になります。

様々な「ルール」を明確にすることで、「配慮」と「遠慮」のラインを明確にしなければ、当たり前の感覚が異なる社員同士はまとまらず、社長の場当たり的な判断で社員が右往左往する中、社員が疲弊していく事になりかねません。

そして「評価制度」が明確になることで、会社が社員に求めていることと、社員が会社から求められていることを意識上合致させることができます。

明確で透明性の高い評価制度、報酬制度の運用により、社員の待遇に対する納得感を高め、社員にとっての仕事のやりがいを醸成していくこと、そして、会社が求める方向で社員がしっかりと機能することが実現できます。

「ルール」「評価制度」この2つが整っていることが、バランスの取れた会社の条件の1つと言えます。

求職者の方は、この2つがあるか、会社に確認することが「入社してはいけない会社」を見分ける上で参考になります。

「欠くことのできない歯車」とは

「君たちは将来、会社で働くことになると思う。その時は会社の歯車になる。願わくば、その会社にとって欠くことのできない歯車になって欲しい」

この言葉について考える時、「願わくば、その会社にとって欠くことのできない歯車になって欲しい」という言葉に込められた、会社の視点と社員の視点が交差する場所に気づきます。

会社側の視点で見た時、替えの利かない「欠くことのできない歯車」としての社員が存在することは、会社の存続にとって大きなマイナスになります。

「欠くことのできない歯車」があるということは、その歯車がなくなると会社が存続できなくなってしまうため、継続を前提に運営をしている会社において、このような歯車は在ってはならないものです。

一方で、社員の視点から見た時、自身が「欠くことのできない歯車」であると感じることができる会社は、働く人の尊厳や働きがいの観点から見れば、望ましい状況です。
誰しも、この会社で自分は替えの利く存在だと思って働くことは望んでいません。

無機質な「歯車」(機能)に、代替不可能性を付与させるという矛盾を解消する方法は、会社と社員を成長させていくことです。

成長できることが、「本物の歯車」と「歯車としての人間」の違いとなります。

「会社が成長することで、社員が成長する」「社員が成長することで、会社が成長する」この相互作用が起こる状況になることで、社員は「歯車」(機能)として維持されながら、その瞬間において、特別な存在(替えの利かない存在)になるのです。

「会社の成長期を支えた社員」「会社の危機的状況を救った社員」「大きな戦略的な転換を担った社員」等々、その瞬間では、会社の歯車(機能)の一つであったとしても、時間軸の中で振り返って見た時に、会社の歴史の中でも、社員の記憶の中でも特別な存在になっているはずです。
この状態が「欠くことのできない歯車」になれた状態ではないでしょうか。

今回は、求職者が会社を選ぶ際のポイント、特に「入社してはいけない会社」についてお伝えして参りました。
 
会社の視点と社員の視点は異なることを理解した上で、「配慮はするけど、遠慮はしない」という「配慮:社員が会社に求めるもの」と「遠慮:会社が社員に求めること」のバランスが取れた会社を選ばないと、失敗する可能性が高まるということ。
 
そして、会社と個人が成長し、時間軸の中で特別な変化(成長)を会社と社員が共有することで、代替可能な機能としての社員が、時間軸の中でその会社にとっての唯一無二の存在になる方法であることをお伝えしました。

「配慮と遠慮のバランス」「会社と個人の成長」、この2つのポイントをご自身の視点から見て頂き、バランスが悪い会社、会社・個人の成長のイメージがない会社であれば、入社を控えることをお勧めします。

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