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スコットランド ロックローモンドの旅 3 クルーズ編

スコットランド入りして6日目、あれほど遠く感じられたロックローモンド(Loch Lomond / ローモンド湖)へ、私はようやく辿り着いた。ついに彼の地へやって来たという実感に満ち溢れた。

グリーノック(Greenock)入りした日のこと、この地に旅に来た理由 -

ロックローモンドへ向かう路線バスでの往路の旅、魅了された車窓からの景色 -

ロックローモンド南端のツアーの出発場所はスコットランド鉄道の駅(Balloch / バロック)からほど近く、すぐに辿り着くことができた。スコットランドらしくひんやりした空気は夏の清々しさを感じさせるのに、陽射しはかなり強い。正午過ぎ、私は陽射しを遮りながらクルーズ船への乗車を待った。

バロック駅を出るとすぐにある案内板。ここからロックローモンドのツアーが多く出発している。

雲一つ見当たらない恵まれたお天気に、スコットランド入りしてからこの地で天候に恵まれることがいかに幸運かを自問して感謝しつつ、2時間のクルーズの旅が始まった。船内はイギリス人のみでなく、外国人も割といるようだった。

クルーズ船の出発地にて。スコットランドの旗が揺らめく。

このツアーは、縦に細長いロックローモンドの南端から始まり、半分弱のところまで北上してまた戻る、という旅程である。

クルーズ船は湖の南端から出発し、Luss で折り返す。
出発してまもなく。湖面は穏やかで、鏡面のように木々を映し出す。

ザーッという、クルーズ船が水をかき分ける音が風に乗って耳に届く、その爽快感が半端ない。湿度は低く時折寒く感じるものの、強い陽射しが湖上の涼しさを忘れさせるほどだった。

クルーズ船でロックローモンドの湖上に来て、ふと思い出したのは “ヨーロッパでの青という色” ということだった。

いつかnoteにも投稿した “青” についての記事 -

ここにも同類のことを書いたのだが、ヨーロッパには “青” という色を感じる場所が多く、“青” の種類もまたたくさんあるということ - 私はその中の、私がまだ知らぬ “青” をここで見つけた気がした。

この日は快晴のお天気ということもあり、青空の色、ロックローモンドの両端に控える新緑の美しい山々の色、そして湖面の澄み渡る青という色…これらが眩しいくらいに目に鮮やかで、焼き付かんばかりに脳裏に、まるでひたひたと記憶に浸透するようだった。これらの青は、マルタで見た地中海のそれとは確実に違う。でもスコットランド人、イギリス人、彼らが描く世界観や色彩感の中に、確かにある青だった。

細長いこの湖の、南北の中間地点にあたるLussを正面に望む。小高い丘が、フォトジェニックなクルーズの山場となる箇所。ロックローモンドは湖ならではの水面の穏やかさと、周囲の自然・山々の対比が殊更絵になる場所だとつくづく思う。

自然の美しさと雄大さとそして眼前に広がる青、青、青…この青はひたすら私の体内に浸透してくるように視界を覆い、その風と、気温と、匂いと、湿度と、壮大な景色を一緒くたにして私の記憶に優しく染み込んだ。

私は水辺がひどく好きだ。水辺から生まれた気さえする。そんな場所で、湿度を感じる風と、あの音と、そして水面を五感で受け取ると、私のすべてが整い、潤うような気がした。日本よりもかなり乾燥した気候のヨーロッパ、ここスコットランドだけれど、湖面では湿気を含んだ風に潤いが感じられた。

私はとりわけこの湖面の青の美しさに、まるで栄養をたっぷりと与えられた生き物のように潤い、この旅に私を掻き立てた好奇心もようやく、満たされたように感じた。

クルーズを終えて出発地に戻った船から。湖上は風で涼しかったのに、午後3時、地上では強い紫外線でじりじりするほどの暑さだった。
南端バロックは散策を楽しめる公園にもなっており、下船後はハイキングやジョグを楽しむ人も多い。

ロックローモンドは確かに田舎で、私が好奇心を持たなければ訪れることもなく、通り過ぎることさえなかったに違いない場所だった。けれど今回ここに来たことで、私の中の “青” の種類はまた増えて、そのカラーパレットはさらに豊かなものになった。この青を見るだけで、目も心も私の何もかもが存分に満たされた。私の小さな冒険のその意義は、“新しい青” を得ることだったのかもしれない、と旅を終えた今、思う。

※ 挿入されている写真及び画像はすべて筆者によるものです。

(Loch Lomond 28 Jun 2019)

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