徳田神也

こんにちは、徳田です。

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記事一覧

ハローワークのスーパーガール

「口入屋(くちいれや)」から連れられてきた、一人の女性。 おそらく、まだ10代だろうと思われる。 「口入屋」は「手配師」とも呼ばれたが、細分化され、日雇いの男衆や…

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4年前
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最近聞いた落語の中にある“差別”

ここ2ヶ月で、新たにちゃんと聞いた噺。 ★近日息子 ★肝つぶし ★蜆売り ★真景累ヶ淵 ★間抜け泥 ★有馬小便 ★お玉牛 ★昆陽の御池 ★両国八景 ★紫檀楼古木 ★城木屋 …

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4年前
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感動的な三題噺。【雁風呂】

ガンブロ、と読む。 この噺は、「絵解き」がメインになっている。 舞台は静岡県・掛川。 東海道・掛川宿の宿屋兼食堂で、旅人には見向きもされず置いてあった絵。 実は名…

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4年前
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汚職を露見させた、鹿の食欲。【鹿政談】

3000石。1石は10斗。 10斗は100升。 時代によってその経済価値は変化するが、 1石が一升瓶で100本だとすると、 1升は1.8kgだから1石は180kgということになる。 耕作地に…

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4年前
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空前絶後に厄介なファンタジックヒーロー【こぶ弁慶】

旅の途中。 大勢が集まる宿屋。 なぜか「土を食べる」という妙な趣味を持つ男。 京都に住んでいるという。調子に乗ってたくさん食べた古い旅館の崩れた土壁に、実は大津絵…

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4年前
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謎すぎてビビる究極の罵倒語たち7つ【植木屋娘】

「不動坊」という噺には罵倒表現としての、不思議で凝った言葉がたくさん出てくる。 1、ワニ革の瓢箪みたいな顔これはわかりやすい。 荒れてるのかそういう肌質なのか、言…

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4年前
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湖面を滑る、秘刀の謎【矢橋船】

「矢橋船(やばせぶね)」という噺がある。 最後、え、そんな感じで終わる!?という急展開に驚きがあるが、それはそもそもこの話の舞台設定が、脳裏に浮かんでくるかのよ…

徳田神也
4年前
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男は、二度起こされる。【天狗裁き】

男は、夢を見ていない。 または見ていたが、覚えていない。 適当にその内容を捏造して話すこともできたはずだが、見ていないものは見てない。 この「適当に流す能力」「相…

徳田神也
4年前
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驚愕の「主人公がいなくなる」衝撃【天神山】

ジョジョの奇妙な冒険は、1部と2部で、主人公が違った。 血筋という意味では3部、4部と連綿と続いた。 「意志」の継承という大テーマで言えば血統が切れても、名前などの連…

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4年前
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なんでずーっと、江戸から上方には移植されなかったのかの謎【文七元結】

愛宕山「愛宕山(あたご山)」という名の山は、全国にたくさんある。 数十m〜500mほどの標高の山たちである。中には1,000mを超えるものもあるが、なぜかその山頂が放送局…

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4年前
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ぼーっとしてることが目的であり手段である、という状態の、話。【無い物買い】

「今、なにしてる?」 「なにもしてないよ」 「息もしてないの」 「息はしてるけどなにもしてない」 「忙しい?」 「呼吸で忙しいといえば忙しいと言えるかも」 「ち…

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4年前
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うなぎの幇間に出てくる「1000のうち」の謎【鰻の幇間】

「鰻の幇間」。 よく聴いているのは六代目三遊亭圓生(以下、六代目)。 もう一つが、古今亭志ん朝(三代目。以下、志ん朝)。 あらすじとしては幇間(ほうかん)が、旦…

徳田神也
4年前
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ハローワークのスーパーガール

ハローワークのスーパーガール

「口入屋(くちいれや)」から連れられてきた、一人の女性。
おそらく、まだ10代だろうと思われる。

「口入屋」は「手配師」とも呼ばれたが、細分化され、日雇いの男衆や娼妓など、職業によっての案内所・斡旋業として機能していた。言ってみればハローワークである。「口入れ」は「口利き」だと考えればわかりやすい。

江戸時代、大きな商家では、男性は丁稚として長い年月を同じ家で奉公に勤めるが、女性は基本的に期間

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最近聞いた落語の中にある“差別”

ここ2ヶ月で、新たにちゃんと聞いた噺。

★近日息子
★肝つぶし
★蜆売り
★真景累ヶ淵
★間抜け泥
★有馬小便
★お玉牛
★昆陽の御池
★両国八景
★紫檀楼古木
★城木屋
★遠山政談
★鮫講釈
★お藤松五郎
★猫定
★袈裟御前
★冬の遊び
★大丸屋騒動
★須磨の浦風
★西行鼓ケ滝
★茶屋迎い
★写真の仇討
★鍬潟
★千早振る
★堪忍袋
★加賀の千代
★茗荷宿屋
★応挙の幽霊
★紋三郎稲荷
★お祭

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感動的な三題噺。【雁風呂】

感動的な三題噺。【雁風呂】

ガンブロ、と読む。

この噺は、「絵解き」がメインになっている。
舞台は静岡県・掛川。
東海道・掛川宿の宿屋兼食堂で、旅人には見向きもされず置いてあった絵。
実は名人による名画だと看破した町人が、その絵に込められた逸話を語る、という内容だ。

しかしそれだけでは済まない。

その話をするのは淀屋の二代目。あの「淀屋橋」を作った大阪の豪商・淀屋の主人なのである。
総資産200兆円と言われたほどの大阪

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汚職を露見させた、鹿の食欲。【鹿政談】

汚職を露見させた、鹿の食欲。【鹿政談】

3000石。1石は10斗。

10斗は100升。

時代によってその経済価値は変化するが、
1石が一升瓶で100本だとすると、
1升は1.8kgだから1石は180kgということになる。

耕作地にはランク付け(等級付け)があって、上田・上畑(じょうでん・じょうばた)から下田・下畑(げでん・げばた)まで、さらに屋敷としての土地にも石高を当てはめて、行政区域全体の収穫量を算出していたという(これを石盛

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空前絶後に厄介なファンタジックヒーロー【こぶ弁慶】

空前絶後に厄介なファンタジックヒーロー【こぶ弁慶】

旅の途中。
大勢が集まる宿屋。
なぜか「土を食べる」という妙な趣味を持つ男。
京都に住んでいるという。調子に乗ってたくさん食べた古い旅館の崩れた土壁に、実は大津絵として武蔵坊弁慶の絵が、塗り込められていた…。

滋賀県大津市で、「大津絵」は民芸品というか有名なお土産だった。
地名を冠した絵って、現代ではないような気がする。東海道の終点間近であり、伊勢参宮の途上でもある大津で売られる絵たちは、道中の

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謎すぎてビビる究極の罵倒語たち7つ【植木屋娘】

謎すぎてビビる究極の罵倒語たち7つ【植木屋娘】

「不動坊」という噺には罵倒表現としての、不思議で凝った言葉がたくさん出てくる。

1、ワニ革の瓢箪みたいな顔これはわかりやすい。
荒れてるのかそういう肌質なのか、言われてムカっとくるのはわかる。
見た目でまず人を罵倒するのに「◯◯みたいな」は有効だ。
しかも、「そんなものはない」という代物を比喩として持ち出されると、第三者にはおかしく聞こえるものだ。

2、鹿の子の裏みたいな顔鹿の子(かのこ)って

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湖面を滑る、秘刀の謎【矢橋船】

湖面を滑る、秘刀の謎【矢橋船】

「矢橋船(やばせぶね)」という噺がある。

最後、え、そんな感じで終わる!?という急展開に驚きがあるが、それはそもそもこの話の舞台設定が、脳裏に浮かんでくるかのようにのどかで日常的で、進む船上において風が顔に当たるのを感じるような、爽やかな臨場感があるから、だと思う。

ヤバシ、と書いてヤバセと読むのもおもむきがあって良い。
それにしてもなんで、琵琶湖で船に乗る必要が…?
その説明も、まくらでしっ

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男は、二度起こされる。【天狗裁き】

男は、二度起こされる。【天狗裁き】

男は、夢を見ていない。
または見ていたが、覚えていない。

適当にその内容を捏造して話すこともできたはずだが、見ていないものは見てない。
この「適当に流す能力」「相手の要求や気持ちに沿う能力」の欠如こそが、「天狗裁(さば)き」という噺をこじれさせる原因だった、と言える。

周りの「興味本位のわからず屋たち」が悪いのではない。
意固地に「本当」のみを突き通そうとする頑固さが、ことを大きくしてしまった

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驚愕の「主人公がいなくなる」衝撃【天神山】

驚愕の「主人公がいなくなる」衝撃【天神山】

ジョジョの奇妙な冒険は、1部と2部で、主人公が違った。
血筋という意味では3部、4部と連綿と続いた。
「意志」の継承という大テーマで言えば血統が切れても、名前などの連続性があって楽しい。

これは割と、驚いた設定だった。
ジャンプで読んで驚いた記憶がある。
主人公が死ぬということにもびっくりした。
主人公はいつも安定して、どんな苦境をも乗り越えて勝っていくというのが当たり前だと思っていたからだ。

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なんでずーっと、江戸から上方には移植されなかったのかの謎【文七元結】

愛宕山「愛宕山(あたご山)」という名の山は、全国にたくさんある。

数十m〜500mほどの標高の山たちである。中には1,000mを超えるものもあるが、なぜかその山頂が放送局の中継局になる程度の高さが多い。中でも京都にある「愛宕山」は、愛宕神社の総本社だ。愛宕山の数だけ、愛宕神社があると言ってもいい。

京都での遊びの中で、祇園で遊ぶという贅の局地は、一般庶民からするとまったく持って現実味のない別天

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ぼーっとしてることが目的であり手段である、という状態の、話。【無い物買い】

ぼーっとしてることが目的であり手段である、という状態の、話。【無い物買い】

「今、なにしてる?」

「なにもしてないよ」

「息もしてないの」

「息はしてるけどなにもしてない」

「忙しい?」

「呼吸で忙しいといえば忙しいと言えるかも」

「ちょっと手伝ってくれる?」

「いいよ」

これに似たやりとりって、ずいぶん最近は減ってる気がする。「なにもしてない」の範疇が、どんどん変わってきてるからだ。

家でテレビをただ眺めているのも、「なにもしてない」に入るだろうか。

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うなぎの幇間に出てくる「1000のうち」の謎【鰻の幇間】

うなぎの幇間に出てくる「1000のうち」の謎【鰻の幇間】



「鰻の幇間」。
よく聴いているのは六代目三遊亭圓生(以下、六代目)。
もう一つが、古今亭志ん朝(三代目。以下、志ん朝)。

あらすじとしては幇間(ほうかん)が、旦那だと見定めた男性に一緒に鰻屋に連れて行かれ、ご馳走になるつもりがコロッと騙されて先に帰られてしまい、そこそこのお代をすべて払わされてしまう、というもの。調子だけが良くその場しのぎでレベルの低い芸人が、いっぱい食わされるという話。

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