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箱夢の話集 第一集

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記事一覧

【話】震える指

少女の首を絞めている。 もちろん軽く、冗談みたいに。 「ううん。もっときつく絞めて」 聞…

Tome館長
5年前
20

【小話】首が痛い

「首が痛い」と 冷蔵庫が言う。 「どこに首があるんだ?」と 問うてみたくなった。   My Ne…

Tome館長
2か月前
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【SS】見知らぬ夏

ある夏の昼下がりのことでした。 縁側に見知らぬ猫が寝ていました。 寝てるふりをしていたの…

Tome館長
6年前
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【童話】泣き娘

小さな娘が大きな声で泣いていました。 いつまでもいつまでも泣き続けるのでした。 村人たち…

Tome館長
5年前
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【SS】暴走族

と言っても、おもちゃの暴走族。 仲間とミニチュアのバイクを操って 深夜に段ボールの国道を…

Tome館長
6年前
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【SS】遊女

「ねえ、遊ばない?」 子どもっぽい声で誘われた。 その顔も幼く見えた。 でも、からだは違う…

Tome館長
6年前
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【SS】もう会えないかもしれない

「それじゃ、元気でね」 彼女の細長く形良い背中は  少し離れて恋人だった男の無骨な背中と並んで  さびれるばかりの駅前通り商店街の歩道の向こうへ  小さくなって消えようとしていた。 彼らが別れることになると言及された結末は  それほど僕の慰めにはならなかった。 「落ち着いたら、また来るから」 そんな彼女の口約束と同様に  なんの保証にもならないのだから。 もう会えないかもしれない。 それは漠然とした予感ではなく  冷徹な予測。 やがて彼女は  いく枚かの写真と

カードの女王

部屋の窓を開けたままにしていたので  隣の家のお姉さんに見られてしまった。 レースのカー…

Tome館長
6年前
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狐の嫁入り

やはり、嫁は狐だった。 私は厳粛な態度で嫁に言い渡す。 「尻尾は見なかったことにしておく…

Tome館長
6年前
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【独白】かまきり

夢中になって交尾をしていたら  彼女に頭を切り落とされてしまった。 うっかりしていた。 彼…

Tome館長
6年前
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【怪談】毒グモ

二の腕に入れ墨を彫った。 初めてなので、怖い気持ちもあり  比較的無難な場所を選んだのだ…

Tome館長
6年前
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【SS】ナメクジ

一匹のナメクジが あなたのからだを這っている。 突然変異による太くて巨大なナメクジ。 気…

Tome館長
6年前
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【SS】壊れた恋人

恋人が壊れてしまった。 あんなに楽しそうに笑っていたのに。 ほんとに壊れてしまった。動か…

Tome館長
6年前
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【怪談】ニンジン

ぼくはニンジンがきらいだった。 でも、おかあさんがおこるから  いやなんだけど、むりに食べてみた。 そうしたら、甘くておいしかった。 どうしてニンジンがおいしいのか  ぼくにはわけがわからなかった。 「生のニンジンは甘いのよ」 おかあさんが教えてくれた。 「今のニンジン、においも少ないしね」 それで、ぼくはニンジンが好きになった。 まい日、おやつに生のまま食べた。 ある日、学校からはやく帰ったとき  ぼくは一本の大きなニンジンを見つけた。 それは台所のテーブル