残された、テルモスの新品の中蓋。
夫との新婚当初、自分のことを「登山家」とは言わない、あくまでも、「登山やっている人」と。
そういう、奥ゆかしい人には、私は、どういう奥さんであればいいのか、考える暇もなく、ただ働いていた。
ねじ込み式の、水筒(テルモス)がいいという要望に応え、山道具やさんで、ねじ込み式のステンレス製のものを。胴体には持ちやすいように、紐を貼り付けて。それも、愛用していたが、コップとなる外蓋が山で、風に吹き飛ばされ、使い物にならなくなった。
ある日、軽いというチタン製のテルモスを見つける