見出し画像

Vol.4 フィンランドで見つけた「Simple」な生き方と学び方

このnoteでは、2024年3月25日から28日までの4日間でフィンランドのプレスクールから小中高/職業専門学校を訪れる中で、フィンランド教育の根底にある価値観のようなものを探る過程で発見したことをシェアしていきます。

▼ 学びの記録
vol.1「Finlandで見つけた「信頼」の文化」(リンク
vol.2「Finlandの小学生と考えてみた"良い学習環境とは?"」(リンク
vol.3「Finlandで見つけた"多様性の考え方とは"」(リンク
vol.4 「Finlandで見つけた"Simpleな教員の生き方と子どもの学び方とは"」

今回のキーワードは「Simple」(結局書いていると複雑な内容になってしまいました…)
このことについて考えるきっかけになったのは、フィンランドの校長先生の家族と一緒に朝ごはんを食べていると、ふとヨーグルトのパッケージに書かれている文字が気になり、Googleの翻訳をかざしてみたところから始まりました。

フィンランドのヨーグルトのパッケージ

人生はあまり複雑にしないほうが楽しくなります。

まさかこの10日間のフィンランドの滞在で一番心にグッとくるメッセージが朝ごはんのヨーグルトのパッケージを通して出会うとは思いもよりませんでした。でも、このメッセージは、この1週間のフィンランドの先生や子どもたちとの対話や関わりで感じたことを包括しており、バチっと何かが繋がる感覚になりました。

日本に住んでいると、7年連続で幸福度が世界一になったフィンランドの暮らしの秘訣が気になる人も多いと思います。私もその一人で、幸せな暮らしを考えるときに、フィンランドでの暮らしを思い出すことがあります。しかし、フィンランドの人に「フィンランドはなぜ幸福度が世界一の国になったと思いますか?」と尋ねると、決まって「I don't know…(分からないなあ…)」とニッコリ返されることが多いです。校長先生とのサウナでの対話の中で「そもそもどのようにして幸福度が測られているのかも知らない。」と、幸福度については特に関心がなさそうで、幸せな暮らしを求めて幸せになったというよりは、◯◯◯を大切にしていると、結果的に幸せな暮らしができているような印象を受けました。フィンランドの方がなかなか言語化してくれない◯◯◯が何なのか気になります。

ちなみに、新しく就任したフィンランドの大統領は自身のTwitterでフィンランドが幸福度世界一の国に選ばれ続ける理由として次の3つを述べています。

・Nature(自然)
・Trust(信頼)
・Education(教育)

さて、ここからは今回のnoteのキーワードでもある「Simple」さにフォーカスしてフィンランド人の学び方と生き方についてまとめていけたらと思います。あくまでもこの1週間で出会った人の人生をベースにまとめるので、約550万人のフィンランド人の1つの生き方のロールモデルとして参考に読んでいただけたらと思います。

・Simpleな働くことへの考え方

この時計は午後3時ですが、午後2時には職員室には誰もいません。

まずは「Simpleな生き方」についてまとめていきます。
人は1日に24時間という時間が平等に与えられています。今回紹介するフィンランドの校長先生は、1日あたりの労働時間が平均して約6時間(通勤で+往復1時間)、睡眠時間が約7-8時間、自分の趣味(役者)に1時間、家族タイム(子どもが3人)の習い事の送り迎えなどに1-2時間、後はゆっくりご飯を食べたり、サウナに入ったりに約1-2時間というように、これでも4時間ほど余白として残っています。更に驚くことに、こちらの校長先生は小学校で校長業務をしながら担任業務も担っており、日本だと考えられない業務量になります。それにもかかわらず1日の労働時間が約6時間という事実に、フィンランドの学校の役割や教員の働き方から私たちが学べるヒントがありそうな気がします。
「学校や教員の役割とは何なのか?」
「私たちは必要以上に教育を届けることで子どもたちや自分自身からも大事な余白を奪っているのではないか?」
フィンランドで大切にされている「MoreするのではなくLessする考え方」がすごく大切な気がします。

その一方で私の日本での生活は、1日あたりの労働時間が平均して約12時間(オルタナティブな学校*10時間+複業2時間)、睡眠時間が7時間、通勤時間🚲が1時間、日常生活のご飯や掃除に2時間使うと、余白が2時間ほどしか残りません。ちなみに余白はあっても12時間精一杯生きた後の2時間なので、その後に何かをするエネルギーもあまりないのが実情です。「自分の中でやりたいことを自分で選択している実感」はあり、比較的今の生活に満足しているつもりではありましたが、フィンランドの方と一緒に生活をすると、暮らしの中にある余白の量が異なり、日本では日々忙しなく生活している自分に気付かされました。ちなみに、労働時間が約10時間であることについて補足をすると…

*今勤めている学校で1日の勤務時間が約10時間なのは変形労働時間制を取り入れており、夏休みが1ヶ月間ある代わりにそれ以外の期間で9時間半の勤務をしていることが背景にあります。(私にとっては日本の社会で1ヶ月というまとまった長期休暇を取れるのは働きながら学ぶことのできるシステムで日本の社会の文脈ではかなり満足しています。)

日本の労働環境とフィンランドの労働環境を比べても仕方がないのですが、1日の勤務時間が約6時間で、さらに夏休みが2ヶ月間もたっぷりと取れる社会を見てしまうと、改めて日本にある当たり前を見つめ直すきっかけになります。

さて、もう少しフィンランドの先生がなぜ約6時間で勤務を終えることができるのかについてもう少し「教員の役割の視点」で深掘りをしていきます。

フィンランドのモンテッソーリの教室

まず、私自身もそうですが授業準備に結構な時間をかけていると思います。日本の学校で勤める教員の多くは、子どもたちが少しでも学びに興味を持ってもらえるように導入や展開などに細かな設計を考える方が多いと思います。そして興味を持ってもらえるように教材をオリジナルで作成して授業準備を行います。正直なところ、授業準備に終わりはないし、教員としてのやり甲斐を感じてしまう部分なのでなかなかここを手放すのは私自身は難しいです。
その一方でフィンランドの先生の多くは、教科書会社が制作したデジタル教科書をベースに授業を展開しており、細かな設計を考えるというよりも大きな方向性だけを設計し、授業準備というのは、教室内の子ども1人1人が学びに向かえるそもそものベースとなる環境設定(合理的配慮)に力を入れている印象を受けました。内容やアプローチにそこまで時間をかけていない印象です。

私自身の考え方としては、合理的な配慮というよりも、子どもたちにとって重要なテーマを協働的な学びとなるようなデザインで授業としてきっかけを届けることができれば自然と人は共に学び始めると考えていたのですが、どうしても教材準備に時間をかけてしまい、一人一人が学びに向き合える環境づくりができないこともありました。まずは全員が学びに向かえる環境を整え続けることが重要な視点だと思いました。

ここでフィンランドの校長先生の言葉を紹介します。

You don't have to do everything. It's OK if you can't do everything.
(全てをする必要はないし、全てができなくても大丈夫。)

総括すると、全てを完璧にする必要はないという考え方です。完璧を求めるのではなく、本質的に何が大切なのかを常に考えることが重要なのだと思います。恐らく、不安だから完璧に準備しようという気持ちになることってあると思います。だからこそ、教員は一生懸命に授業や課題の準備をして、子どもたちのために色々な課題(宿題)を作ってしまいがちです。結果として教員も子どもも忙しくなってしまい、それぞれの人生の余白がなくなってしまうことってありそうだなと自戒も込めてここに書きます。子どもは自分で学ぶことができるし、自分で好きなことを見つけることができる。と思えれば、思い切って余白を作ることも大事な考え方のような気がしました。教育の目的が「幸せに生きる力を育むこと」と仮定するなら、尚更自分の人生を自分で選択していく考え方を育むためにも「自分を知る」ための余白って重要な気がします。

・Simpleな学びへの考え方

まずは、事実ベースでフィンランドの学校にも宿題はあるのですが、長期休み等には宿題はありません。また、フィンランドの学校でもテストはあり、あくまでも自分の現在地(理解)を知るために行われるのであり、テストの結果を見て教員が生徒に対して、外発的にプレッシャーを与えることはしないと話していました。例えば、テストの結果を見てこの生徒は更に伸びると教員がみとったとしても「もっと上を目指して頑張ろう。」というような声掛けはしないと話していました。
また、高校の校長先生も高校卒業試験の準備をしている生徒にプレッシャーを与えないような環境づくりを大切にしているそうです。考え方のベースとして「モチベーションがあり、頑張りたい生徒には必要なサポートを届けるし、その一方で、モチベーションがなく勉強をしたくない生徒には、無理に今の環境でやり切るための声掛けをするのではなく、別の選択肢を示したり、こちらから必要以上にプレッシャーをかけないようにしている。」とサポートの方針をしているのが印象的でした。これは、日常的に生徒一人一人と向き合っているからこそ言えるメッセージだと思いました。(そもそも学びへのモチベーションがあるかどうかをみとるのは日々コミュニケーションをとっていないと見えない部分だと思います。)一見、学校として無責任な発言にも見えるかもしれませんが、日々生徒と対等に向き合い、生徒の状況を理解しているからこそ言える言葉だと思いました。ちなみにこの学校はこのエリアの高校の中では、高校卒業試験で最も優秀な成績を出しており、大人が生徒にプレッシャーを与えずとも適切なサポートを届けることで学習の成果を出すことができるという校長先生や現場の先生のメッセージを感じました。

この考え方がベースにある中で「子どもたちは自由な時間をどのように過ごしているのか?」ホームステイをしながら見てきた景色を伝えます。

「宿題がない環境の中で、子どもは机上の学習を自らするのか?」ほとんどの場合は「No」だそうです笑。結構のんびり過ごしている印象を子どもの姿から感じます。更に、これに対してフィンランドの保護者も「学校は学習が苦手な子へのサポートは充実しているけど、勉強が得意な生徒に追加の課題がないので、もう少し課題を出してくれたらと思うけど…!!!」と教員であり保護者でもある方の声も印象的でした。

やはり、100%完璧なあり方というのはないなあと。フィンランドのように思い切って子どもをTrust(信頼)して休日に課題を出さない考え方も、その一方で不安だからとりあえず全員に沢山の課題(宿題)を与える日本の教育(塾を含む)の考え方もどちらもいい意味で偏っているような気がしました。

「さて、子どもたちに必要な課題ってどのようなものなのでしょうか?」
Simpleだけど、Simpleだからこそ考えさせられる命題です。教育を行う場において、放任しすぎても管理しすぎても子どもは育たない考え方があります。もちろん発達段階もありますが、子どもが最終的には自分の頭で考えて、より良い人生を自分で選択していけるようになることが大事だとするなら、今関わっている子どもにどのようなバランスで関わると良いのか。

これからも考え続けていけたらと思いました。

全然Simpleではない内容になってしまいましたが、フィンランドの先生の考え方や生き方、子どもの学びへの向き合い方はSimpleだなあと感じたので、このテーマで書かせてもらいました。

いつも読んでいただきありがとうございます。

moimoi!

ps.
ちなみにフィンランドでの休日をフィンランドの家族と一緒に過ごしたのですが、その1日が自分にとってもすごくリラックスできるものでした。
10:00 - 少しずつ起きてくる>朝ごはん>チェス
11:00 - 子どもが好きな木を紹介したいということで散歩&木登り…
12:00 - 森でソーセージを家族(with 親戚)と共に
15:00 - 外で身体が冷えたのでサウナタイムで整う
18:00 - ディナー
21:00 - 就寝
気づいたらもう21時という感覚で、Doで見ると何もしていない1日なので、1日が終わる時には18時ぐらいの感覚だったのですが、Beで見るとかなりデトックスできた1日になりました。家族と自然の中で自然と共にある丁寧な暮らしがSimpleでいいなと感じる1日になりました。元々はここを深掘るnoteになる予定でしたが無意識に教育によった内容になってしました…w






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?