初めてLGBTQの方が集まるお店に行った話②

※LGBTQに関する用語は下に解説が載っています

二軒目は新宿三丁目にある「ftmbar 2’s cabin」に行くことにした。姉は試験の勉強をしないといけないらしく、帰らないといけない時間だった。ということで、姉は僕と新宿駅でタピオカミルクティーを飲んで、僕をそのバーまで送ってから帰るということになった。

台湾甜商店(タイワンテンショウテン)という、豆花(トウファ)とタピオカドリンクがあるお店に着いた。イートインスペースで豆花を食べる人たちが15人ほど並んでいた。僕たちは持ち帰りなのですぐ買うことができた。仙草タピオカミルクティーを頼んでみた。飲んでみるとタピオカがもちもちで、芯があるタピオカもあるけど芯もなくとても美味しかった。お茶の香りもするし、台湾で飲んだタピオカミルクティーに続くおいしさで「ここのうまっ」と二人で言いながらバーへ向かった。


Googleマップを使ってバーへ向かっていた。マップが指している目的地に着いたがバーがどこにあるのか分からず右往左往していた。もう一回マップの指すところへ行くと、ビルの看板が並ぶ部分に、小さく「ftmbar 2’s cabin」と書いてあった。「あ!ここだよ」と言って二階に上がってみると、小さなドアから笑い声が聞こえてきた。僕が「ここだよね…」と言うと、姉が「うん…多分」と答えた。「入りづらっ」と僕が躊躇していると、姉が「どうする?やめる?」と言ったが、僕はいやここまで来たんだし、せっかく東京にいるのに行かないのはな。と入ってみようと思った。「いや、行くわ」と言って手袋を脱いでドアに手をかけた。

ドアを開けると、カウンター越しに立っている二人の店員さんが「いらっしゃい!」と明るく向かい入れてくれた。正直言うと、いらっしゃいだったか、こんにちはだったか、こんばんはだったかは、緊張して覚えていない。ただ、明るく向かい入れてくれたことにホッとしていたことは覚えている。

入ったはいいが僕は、よくあるいわゆる普通のバーにも行ったことはないし、こういうLGBTQの方が集まるバーにも行ったことがないので、どうしていいのか分からず、動きとか喋り方がぎこちないなと自分自身でも気づくくらい緊張していた。

「ここどうぞ」と案内されてカウンター席に座った。一つ席を空けた左隣には二十代後半くらいの男性が一人座っている。

オーナーのマサキさんが「名前聞いていい?」と聞いてくれた。僕が「えっと、名字ですか?」と聞くと、「あ〜、なんでもいいよ。通称名でもいいし。」と言ったので通称名使おうと思い「えっと、曜です」と答えた。

「何飲む?」と聞かれた。19歳で一応未成年だから「えっと、僕、お酒飲めないので…」と答えると「ソフトドリンクならあるよ?どれにする?」と言う。「あっ、じゃあ、ジンジャエールで」ととりあえず注文を済ませた。

この会話を書いていて気づいたのだが、僕は緊張すると「あ、」とか「えっと」とかが多くなるのだな〜。

注文をした後、もう一人の店員さんが自己紹介をしてくれた。けんとらさんという方で「とらちゃんって呼んでね」と言った。僕は「あ、はい」と名前を覚えようと思いながら答えた。


まだかなり緊張していた。頭がほぼ真っ白状態で話そうと思ってたことも全然出てこない。バーに行く前に、スマホのメモにバーで話すことや聞きたいことをまとめておいたのに。カウンターから手が伸びてきて、ジンジャーエールと柿ピーが置かれた。とりあえず写真でも撮って落ち着こうと思い、スマホの写真アプリfoodieをタップする。ジンジャーエールと柿ピーを撮る、スマホを持つ手が震えているのが分かる。

撮った後、左隣のお客さんや店員さんのマサキさんやとらちゃんさんを交えて、どこに住んでるとか今日来た理由とかを話した。正直言うと最初はかなり緊張していて半分くらいしか話した内容を覚えていない。

途中で男女二人組のお客さんが来店した。マサキさんはそちらの二人組と話していたから、僕は左隣のお客さんととらちゃんさんとで話をしていた。恋愛の話になり、左隣のお客さんが「僕、バイなんですよ〜。」と言ったりしていていて、どんな人がタイプかとかの話になったりした。


そんな話など30分くらいしていたとき、またドアが開いた。今度は誰だろう?と振り返ると男性二人組が小さなドアから背をかがめながら入ってきた。一人は20代でもう一人は30代くらい?席がだいぶ埋まっていたので、僕の右隣に二人組が座った。

とらちゃんさんがその人たちと話し始めた。「二人は付き合ってるの?」と聞いた。「いや〜、そういうのじゃないですね。こいつ彼氏いるし。」と30代くらいの人が言う。とらちゃんさんが「へ〜、そうなんだ。やるね〜。ここのバーはやっぱり来る人はFtMが一番多いんだよね。次に女の人。ゲイの人はあんまり来ないから嬉しい。」と言っているのが聞こえる。

ここではセクシュアルマイノリティであることが普通で、それが当たり前な雰囲気で話が進んでいる。そのことに僕はまだ戸惑っていた。こんなに自分をそのまま出せる空間に巡り合ったことがないからだろう。

マサキさんがカウンターの方に戻ってきたので、僕は今の気持ちを伝えようと思って口を開いた。「あの、まだ戸惑ってます。なんか、普通にゲイとかFtMとかそういう話題がバンバン出てきて、みんなここではオープンで、そういう話していいんだってのにびっくりしてて…未だに戸惑ってて…。」と少しつっかえつっかえで話していたら、いつのまにか涙で視界が滲んで泣きそうになっていた。「まずい…涙出るっ」と思った時には、すでに目から涙が溢れていた。泣いている僕を見てマサキさんが「どうしたの〜??何の涙?大丈夫?」と声をかけてくれた。僕は泣きながら「いや、こんな風にLGBTの人沢山いるんだなって思って。地元だと全然言わないっていうか会ったことなくて、すごく不安で。安心したっていうか。すいません泣いちゃって。」と楽しいバーなのに暗い雰囲気にしてしまったのでは…と、すいませんを連呼した。するとマサキさんが「うん。いっぱいいるよ。安心して。存分に泣け〜い!」と明るく言った。

泣いたからか緊張の糸がプツンと切れて、だいぶいつもの自分になった。右隣の男性二人組とも話すことができた。その2人はこういう場所はとても慣れているようだった。面白い方たちでお酒をかなり飲んで、1人は1時間くらいしたらかなり酔っていた。お客さんや店員さんと沢山話せて思った以上にすごく楽しかった。

その男性二人組が店を出るということで、僕もそろそろホテルに帰らないと終電がまずいと思い、23時くらいに「僕も会計をお願いします」と言った。会計を済ませ帰ろうとすると、マサキさんととらちゃんさんが見送ってくださった。二人と温かいハグをした。冬の寒さがより一層ハグを温かいものにした。とらちゃんさんが「また来てね。いっぱいいるから(LGBTQの人)。」と言った。僕は「はい。また来ます。ほんとにありがとうございました」と答えた。二人はお兄さんみたいな存在で、先を歩む二人に出会えて、僕もこんな風になれるんだと思えて嬉しかった。もう一回「ありがとうございましたっ」と言って祖父母の家にあるくらい急な階段を降りてGoogleマップを開いた。


・バイ→バイセクシャルの略。バイセクシャルとは男性も女性もどちらも愛せる人のこと。
・ゲイ→ 同性愛の人々のこと。日本では特に男性同性愛者を指す場合が多い言葉である。
・FTM→ 生まれ持った体が女性で自分で認識しているの性が男性である人のことである。また、自分の体の性を女性から男性に移行したい人。

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