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木下恵介劇場「記念樹」(1966〜1967年・TBS)


すべての児童は、
心身ともに健やかにうまれ、育てられ、
その生活を保障される
児童憲章 
    昭和26年5月5日(こどもの日)制定 より

木下恵介ワールドの集大成「記念樹」

 一本のさくらの木の固い絆で結ばれた、あかつき子供園の保母・池貝園子と、卒園生たちが織りなす、さまざまな人生のドラマを感動的に描いた「記念樹」は、木下恵介劇場第三作として、1966(昭和41)年4月5日から翌、1967(昭和42)年ン2月14日にかけてTBS系でオンエアされた全46話、30分一話完結のドラマ。

 ある時、木下恵介監督が脚本の山田太一と、映画『永遠の人』(1961年)で訪れた熊本県阿蘇を目指して、作品の構想を練る旅に出た時のこと。長崎からチャーターしたタクシーの運転手が、熊本の近くで立ち寄りたい場所があると申し出た。聞けば、彼は施設の出身で、その時の保母先生が嫁いだ特定郵便局が近くにあるという。その保母に「この子をどうかよろしくお願いします」と言われ、阿蘇に向かうタクシーのなかで、木下監督の構想は一気にまとまった、という。恵まれない子の養護施設を舞台に、若い保母と子どもたちの交流を一話完結で描くというもの。先生が結婚をして別れるときに、子どもたちが先生の家の庭に植えた「記念樹」を中心に、その成長と子供たちの成長を描く、というものだった。

 主演には、俳優・井上孝雄と結婚引退をしていた馬淵晴子、彼女のカムバック作品でもあり、そのキャリアのブランクも、ヒロイン池貝園子にフィードバックされている。

 物語は昭和41年の現在と、15年前の昭和26年の過去、二つの時点で進められていく。この構成は、木下恵介監督の『風花』(1959年)を思い出させてくれる。回想シーンと現在を縦横に盛り込みながら、登場人物たちの変わらない思いが描かれる。また、毎回、大人になった卒園生たちのドラマが主軸となるが、回想シーンでよく似た子役が演じているので違和感がない。これも木下恵介監督の名作『二十四の瞳』(1954年)の手法、おなご先生と生徒たちの幾春秋ということでは、「記念樹」も同様。若くてハツラツとしていた時代、そして夫を交通事故で亡くし、憂いを帯びている。ヒロインの水原園子が未亡人・池貝園子となった現在の両面を描いている。先生、生徒、記念樹、それぞれの15年という時がバックボーンとなっている。余談だが15年前=昭和26年という設定は、児童憲章が制定された年でもある。

 子供の福祉をめぐる社会派ドラマというだけでなく、子供園出身の若者たちの青春の苦悩、人々の“善意と悪意”など、さまざまなテーマが内包され、木下恵介監督が映画で描き続けてきた“人間ドラマ”を、微苦笑のなかに、娯楽性タップリに描いている。運命の皮肉、そして人間の機微が織りなすドラマの展開も見逃せない。

 脚本は木下恵介(17作)、山田太一(21作)を中心に、様々なライターが参加。監督には木下門下の川頭義郎、今井雄五郎を中心に、やはり様々な演出家が参加している。田村正和、原田芳雄、吉田日出子、秋野太作(当時は津坂匡章)をはじめとする若手が生徒役で出演、渥美清、佐野周二、三宅邦子など豪華なゲストも話題となった。最初は2クール26話の予定が、好評により4クール46話へと延長され、放映中には東宝で『あこがれ』(山田太一脚本、恩地日出夫監督)として映画化された。

【エピソード】

第1話『花に浮ぶ人』(1966年4月4日)
脚本:木下恵介/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/三戸部すえ(あかつき子供園炊事係・三好さん)/長谷川哲夫(園子の夫・池貝健)/ジェリー伊藤(ロジャー・カミング軍曹)/佐伯赫哉(あかつき子供園・安藤先生)/牧よし子(農家の女・池貝家の家主)/八木千枝(あかつき子供園保母・斎藤孝子)/牧理恵(あかつき子供園保母・君塚先生)/稲川善一(久男の上司)/土紀洋児(久男の上司・係長)/沖秀一/川崎巌/大塚君代/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/西山輝雄/堀真奈美/有川博(卒園生・山下久男)/田村正和(大船駅の駅弁売り、卒園生・伊藤信一)
Point  池貝園子先生の夫・健(長谷川哲夫)がダンプ事故で亡くなり、15年ぶりにあかつき子供園に復帰。“記念樹”の由来が明らかにされる。

第2話『散る花の言葉』(1966年4月16日)
脚本:木下恵介/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/三戸部すえ(あかつき子供園炊事係・三好さん)/佐伯赫哉(あかつき子供園・安藤先生)/松川純子(信一の恋人、大船駅の駅そば店勤務・吉田正子)/八木千枝(あかつき子供園保母・斎藤孝子)/牧理恵(あかつき子供園保母・君塚先生)/神山寛/天草四郎(準急の男)/佐々木恒子(準急の女)/和田蓉子/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/川畑佳子(あかつき子供園保母・木村先生)/佐藤京子/田村正和(大船駅の駅弁売り・伊藤信一)
Point  大船駅の駅弁売り・伊藤信一(田村正和)と駅そば店の吉田正子(松川純子)の物語。彼らが勤務する大船軒は、鰺寿司で知られる老舗。二人の物語は、第25話『ある青年の靴』へと続く。

第3話『別れ別れの歌』(1966年4月19日)
脚本:木下恵介/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/松川勉(卒園生・一郎)/花沢徳衛(平塚の瀬戸物店主・一郎の養父)/岸輝子(一郎の実母・村越すえ)/中村美代子(一郎の伯母)/荘司美代子(あかつき子供園保母・鈴木先生)/川上夏代(一郎の養母)/堀真奈美/古田重久/和田蓉子/小泉ひろし
Point  東宝映画『あこがれ』として、この年の10月に映画化される「記念樹」を代表するエピソード。岸輝子は後に「おやじ太鼓」(1968年)でユニークなおばあちゃんを好演。松川勉は木下恵介監督『歌え若人達』(1963年)でデビュー。

第4話『四月の涙』(1966年4月26日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/長谷川哲夫(園子の夫・池貝健)/水木涼子(浅草の飲み屋の女将)/川畑佳子(あかつき子供園保母・木村先生)/赤崎和男/田中春男(岩田卓三)/東京ぼん太(岩田稔)
Point「夢もチボーもない」で一世を風靡したコメディアン、東京ぼん太が登場。山田太一のルーツでもある浅草を舞台にした人情話が展開される。

第5話『緑の風に聞けば』(1966年5月3日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/坂東璋子(卒園生・中田光子)/松本朝夫(松田マネージャー)/三戸部スエ(あかつき子供園炊事係・三好さん)/佐伯赫哉(あかつき子供園・安藤先生)/内田透(ニコニコ装飾・主人)/荘司肇(ニコニコ装飾・店員)/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/千葉晃一/出口玉枝/中川秀人/仲宗根美樹(流行歌手・青葉まゆみ)
Point 「川は流れる」のヒットで知られる、沖縄出身の歌手・仲宗根美樹がゲスト出演。

第6話『消えて行く歌』(1966年 5月10日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/岸久美子(卒園生・野村美子)/中村たつ(正子の母・秋子)/小栗一也(表具店の親方、正子の父・松本松造)/岩田安生/石川十郎/木内稔/北沢宗公/大貫弓子/秋好光果(英太郎の同級生の母親)/宮下捷(表具店勤務、卒園生・中西英太郎)/亀井光代(松本正子)
Point 「生と死」をテーマにした切ない物語。ラストの池貝先生の台詞が感動的。

第7話『それぞれの女』(1966年5月17日)
脚本:木下恵介/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/桑山正一(視察団員・近藤)/村上冬樹(視察団員・安田)/近藤準/成瀬昌彦(視察団員・神谷)/三戸部スエ(あかつき子供園炊事係・三好さん)/佐伯赫哉(あかつき子供園・安藤先生)/平松淑美(視察団員)/長谷川哲夫(園子の夫・池貝健)/館敬介(警察官)/和地広幸/渡辺紀行(視察団員)/北川恭子(あかつき子供園保母・鈴木先生)/牧よし子(農家の女・池貝家の家主)/杉山徳子(卒園生・竹山幸子)
Point 俳優座のベテラン杉山とく子(当時は徳子)が、生活に疲れた女性を好演。杉山は木下恵介監督『女の園』(1954年)に女学生の一人として出演。

第8話『兄さん お父さん』(1966年5月24日)
脚本:木下恵介/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/串田和美(春男の兄・秋男)/牧よし子(農家の女・池貝家の家主)/長谷川哲夫(園子の夫・池貝健)/坂口芳貞(ヨコハマ食堂会館・コック)/水橋和夫(ヨコハマ食堂会館・コック)/市川映子/林家珍平(卒園生・春男)/柳家金語楼(ヨコハマ食堂会館、親方)
Point 戦後の若手・林家珍平と戦前からのベテラン・柳家金語楼。二人の落語家出身タレントが共演した心温まる一篇。自由劇場を設立したばかりの串田和美も出演。

第9話『人知れぬ吐息』(1966年5月31日)
脚本:木下恵介/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/高野真一/入川保則(大学生・本多)/槙杏子(卒園生・ひろ子)/石山政春(本多の兄貴分)/三戸部スエ(あかつき子供園炊事係・三好さん)/荒木健史/阿部剛三/島伸行/高畑喜三(バー”ミミ”常連客・前田)/松本典子(卒園生、”ミミー”のマダム・ミミ)/望月優子(”ミミ”・松江)
Point 子供園出身のひろ子(槙杏子)を不良学生から守ろうする、ミミを演じた松本典子は、木下恵介劇場「喜びも悲しみも幾歳月」「おやじ太鼓」に出演。

第10話『ジョニーが凱旋する時』(1966年6月7日)
脚本:山田太一/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/江守徹(雄一の同僚、料理人・タカシ)/信実和徳(雄一の同僚)/根津克己(雄一の同僚)/真理明美(三浦襟子)/ジェリー伊藤(ロジャー・カミングス)/石立鉄男(卒園生、ゴルフ場キャディ・山西雄一)
Point 毎週「記念樹」を植樹する場面に登場するロジャー軍曹(ジェリー伊藤)と、子供園出身の雄一(石立鉄男)の父子のような友情を描いた感動篇。

第11話『六月のお母さん』(1966年6月14日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/青木千里(河村夫妻の仲人、ペンキ屋の妻)/氏家慎子(乾物屋の客・森田夫人)/原ひさ子(乾物屋の客)/中田耕二(結婚式の親戚)/高原駿雄(河村夫妻の仲人、ペンキ屋)/秩父晴子(乾物屋の客)/戸川美子(乾物屋の客)/比嘉照子/西村和代/土田桂司/岡村文子(宏の母、河村なつ)/加藤勢津子(卒園生・河村俊江)/田中晋二(乾物屋店主、俊江の夫・河村宏)
Point  俊江の夫を演じた田中晋二は、木下恵介監督の『野菊の如き君なりき』(1955年)に抜擢され、『夕焼け雲』(1956年)などに出演。テレビに登場する漫才はWけんじ(東けんじ、宮城けんじ)。

第12話『晴れて来る空に』(1966年6月21日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/吉野謙二郎(西沢修)/石川十郎(修の青年時代)/森塚敏(修の父・有吉)/佐伯赫哉(あかつき子供園・安藤先生)/三戸部スエ(あかつき子供園炊事係・三好さん)/北川恭子(あかつき子供園・鈴木先生)/竹尾光三/堀真奈美/青山万里子(道を尋ねる老女)/藤原釜足(児童相談所員)
Point  東宝『あこがれ』の原作の一つとなったエピソード。修の少年時代を演じた吉野謙二郎は、雷門ケン坊の名でドラマや「サスケ」(1968年)などアニメ声優としても活躍、60年代を代表する子役。

第13話『追憶の白い雲』(1966年6月28日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/牧よし子(農家の女・池貝家の家主)/三戸部スエ(あかつき子供園炊事係・三好さん)/佐伯赫哉(あかつき子供園・安藤先生)/村上記代/泉真喜(あかつき子供園勤務 岩本さん)/堀真奈美/大塚君代/山本豊三(田代豊)/長谷川哲夫(園子の夫・池貝健)
Point  池貝先生が夫・健の出会いと二人が過ごした日々を追想。ラスト、田代豊が登場するが、これが第19話『俺のお嫁さん』と繋がる構成となっている。

第14話『入日の詩』(1966年7月5日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/浦部粂子(養老院"長寿園"・キク)/武智豊子(養老院"長寿園"・種)/森野五郎(養老院"長寿園"・作造)/出雲八重子(養老院"長寿園"・染子)/川辺富明(養老院"長寿園"・職員)/堀真奈美/加藤嘉(弥左衛門)/小坂一也(卒園生・杉山一也)
Point  加藤嘉、浦部粂子ら、ベテラン俳優と子供園の少年の交流が描かれる。主題歌を歌っている小坂一也がゲスト出演。小坂は木下恵介監督『惜春鳥』(1959年)に出演、以来「おやじ太鼓」「二人の世界」など、木下ドラマでも常連。

第15話『別れの日の葉桜』(1966年7月12日)
脚本:木下恵介/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/織賀邦江(五条果物屋の奥さん)/三戸部スエ(あかつき子供園炊事係・三好さん)/市山達巳(五条果物屋の息子)/泉真喜(あかつき子供園勤務 岩本さん)/十朱久雄(五条果物屋の主人)/佐川ミツオ(五条果物屋店員・孝二)/吉行和子(卒園生、五条果物屋店員・美代子)
Point 卒園生で果物店につとめている美代子(吉行和子)と、弟のように可愛がっている孝二(佐川ミツオ)への淡い思いを描く。歌手でもある佐川は1968年「今は幸せかい」が大ヒット。

第16話『汗のにじむ夢』(1966年7月19日)
脚本:山田太一/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/清水紀八郎(卒園生・登)/赤沢亜紗子(椎名清子)/伊福部昇(登の先輩・啓作)/宮崎和命(ライバル店の店員・平次)/上西孝(少年時代の登)/露原千草(清子の母親)/加藤隆/牟田梯三(登の父の声 )/多々良純(丸山クリーニング店主・野口)
Point 人の良いクリーニング店主を演じた多々良純は、戦前から映画や演劇で活躍したベテラン。テレビCMやコントなどでも達者なところを見せた名バイプレイヤー。

第17話 『小さい小さい貝殻』(1966年7月26日)
脚本:木下恵介/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/菊沖薫(きよ子の少女時代)/武内亨(中越勉)/織本順吉(八百屋店主・きよ子の夫)/阿部百合子(中越啓子)/谷よしの(八百屋の客)/ミッチー,サハラ(テレビの歌手)/坂口美奈子(きよ子)/山本勝(中越啓子の弟・折井洋二)
Point 木下恵介監督の姪・菊沖薫の作った詩「小さい小さい貝殻」をモチーフに物語を書き下ろし、菊仲薫が主人公を演じている。挿入歌「小さい小さい貝殻に」「雪割草のうた」(作詩・作曲:菊仲薫)。テレビ画面のミッチーサハラは60年代注目を集めたシンガーソングライター。

第18話『終点で語る二人』(1966年8月2日)
脚本:山田太一/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/石井富子(高山の見合い相手)/松島滋広/金内喜久男(バスで揉める労働者)/永田光哉/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/前田修作/内藤武敏(バス運転手・高山)/十朱幸代(バス車掌、卒園生・きょう子)
Point ハーフであることにコンプレックスを感じている、子供園出身のバス車掌を演じた十朱幸代は、木下恵介監督『惜春鳥』(1959年)で映画デビューしている。

第19話『俺のお嫁さん』(1966年8月9日)
脚本:木下恵介/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/中村是好(大磯”植繁”主人)/吉田義夫(野中)/北川恭子(あかつき子供園・鈴木先生)/牧よし子(農家の女・池貝家の家主)/三戸部スエ(あかつき子供園勤務・三好さん)/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/吉田仁美(野中の姪)/一樹暁太/山本豊三(大磯”植繁”の植木職人、卒園生・田代豊)
Point  木下恵介監督『惜春鳥』で足の悪い青年を好演した山本豊三扮する田代豊は、国府津の「記念樹」の手入れを欠かさない植木職人。第13話「追憶の白い雲」、第40話「報恩記」、最終回「記念樹よ!永遠に」にも登場。

第20話『十年目の父』(1966年8月16日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/浜村純(明の父・恒吉)/清川玉枝(明の下宿のおばさん)/浅野進治郎(保男の雇主、小林プロパン店主・小林惣造)/川崎巌(保男の同僚)/須藤照夫(保男の同僚)/日暮里子(惣造の妻・静子)/関口宏(卒園生・西田明)/工藤堅太郎(小林プロパン店勤務、卒園生・宮本保男)
Point  木下恵介監督『お嬢さん乾杯!』(1949年)に主演した佐野周二の息子・関口宏は、テレビ版「名作劇場・お嬢さんカンパイ」(1963年・NET)でデビュー。

第21話『かげろうの行方』(1966年8月23日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/野々村潔(幸夫の雇主、自動車修理工場主人・吉岡鉄之助)/葵京子(卒園生・信子)/城戸卓(信子の夫)/松原直/平浩一/小夜福子(鉄之助の妻・桃子)/中野誠也(卒園生・幸夫)/松本染升(クレームをつける同業者)
Point  他人の不幸を見逃すことの出来なかった子供園出身の少年が、養子となり、稼業を切り盛りするなかで、その感覚を見失いそうになる。幸夫を演じた中野誠也は俳優座の俳優、木下恵介アワー「たんとんとん」(1971年)に出演。

第22話『さゝやく秋の真心』(1966年8月30日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/山口崇(卒園生・三谷陽平)/横井徹(宮地の長男・伸一郎)/山岸瑛子(宮地の長女・美香子)/高杉和宏(宮地家の運転手)/柏田旦子(宮地家のお手伝いさん)/川畑佳子(あかつき子供園保母・木村先生)/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/奈良岡朋子(宮地たつ子)/佐野周二(たつ子の夫・宮地)
Point 宮地たつ子(奈良岡朋子)と三谷陽平(山口崇)が出会う、鎌倉の円覚寺は、小津安二郎の墓所。木下恵介監督もここに眠っており、田中絹代、小林正樹、佐田啓二ら、木下監督所縁の人々の墓所でもある。

第23話『その心に降る雨』(1966年9月6日)
脚本:山田太一/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/寺田農(卒園生・栄二)/真屋順子(栄二の見合い相手・鈴木文子)/浜田寅彦(文子の父)/福田妙子(文子の母)/荒瀬友孝/可香谷静代/坂上栄一/山樹一平/青野導/山田浩策/沢村貞子(社員寮の寮母・マサ)
Point ハンデキャップのある文子(真屋順子)の縁談話に、子供園出身の栄二(寺田農)が、孤児への差別と憤りを感じるが、次第に二人は向き合うようになる。文子と栄二は、第24話『秋の墓』にも登場。

第24話『秋の墓』(1966年9月18日)
脚本:山田太一/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/寺田農(卒園生・栄二)/真屋順子(栄二の恋人・文子)/青野平義(元石工・田口菊二)/竜岡晋(秋山良平)/飯沼慧(菊二の息子・田口昇)/大塚道子(登の妻・光江)/吉田日出子(田口家のお手伝いさん、卒園生・礼子)
Point  第23話で雨の中過ごしたために池貝先生が肺炎で入院。自由劇場の吉田日出子が、裕福な家庭の家政婦となるが、老父(青野平義)を祖末にする一家に疑問を持つ卒園生で出演。

第25話『ある青年の靴』(1966年9月20日)
脚本:山田太一/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/松川純子(大船駅の駅そば”大船軒”勤務、信一の恋人・吉田正子)/有川博(卒園生・山下久男)/桜むつ子(正子の母・きく)/辻伊万里(とめの同僚・ゆき)/上田吉二郎(正子の父・吉田徳平)/高見孝三郎/大久保敏男/日向輝/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/菅井きん(信一の母・とめ)/田村正和(大船駅の駅弁売り、卒園生・伊藤信一)
Point  第2話『散る花の言葉』の伊藤信一(田村正和)と吉田正子(松川純子)の恋物語のその後を描いた傑作。池貝先生が入院している病院の下足番を演じた菅井きんは、木下恵介アワー「おやじ太鼓」「3人家族」にも出演。

第26話『太郎の子守唄』(1966年9月27日)
脚本:木下恵介/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/北沢彪(川口研造)/文野朋子(研造の妻)/木村美恵子/河村久子(ユリ子の母)/稲葉義男(ユリ子の父)/寺島達夫(研造の息子・正)/佐々木愛(卒園生・秋田ユリ子)
Point  卒園生、秋田ユリ子(佐々木愛)の下宿先の息子・正を演じた寺島達夫は、元プロ野球選手で、引退後に映画俳優となった人。

第27話『雲水の秋』(1966年10月4日)
脚本:木下恵介/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/長谷川哲夫(園子の夫・池貝健)/三戸部スエ(あかつき子供園炊事係・三好さん)/平松公太郎(国府津実修学園・先生)/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/本橋和子/大杉莞児(円覚寺の寺男)/戸川美子/西川宏(雲水、卒園生・北原文夫)/美川陽一郎(佐山)
Point  今回も鎌倉円覚寺が舞台、卒園生で僧籍に身を置く・北原文夫を演じているのは、「おやじ太鼓」で二男・洋二を演じることになる西川宏。円覚寺の寺男に扮した大杉莞児(侃二朗)は、戦前からのベテランの松竹の大部屋俳優。

第28話『コンパクトの中の青空』(1966年10月11日)
脚本:伴田英司/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/川口知子(節子の先輩ウエイトレス・幸子)/初井言栄(材木店の妻)/照井湧子(節子の同僚ウエイトレス・良江)/桜井とし子(節子の同僚ウエイトレス・国子/進藤和子/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/高木信夫(浜川荘の管理人)/リーガル千太(巡査)
宮田羊容(材木店の主人)/嘉手納清美(材木店、喫茶店勤務、卒園生・節子)
Point  昼は工務店で、夜は喫茶店で働く子供園出身の節子(嘉手納清美)が、大好きな先輩に裏切られてしまう。人間の “善意”と“悪意”を描いている。

第29話『遠く別れてもなお』(1966年10月18日)
脚本:木下恵介/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/松川勉(卒園生・一郎)/有川由紀(卒園生・信子)/花沢徳衛(平塚の瀬戸物店主・一郎の養父)/北見治一(信子の父・恒吉)/川上夏代(一郎の養母)/中村美代子(一郎の伯母)/古田茂久/富田千鶴子/岸輝子(一郎の実母・すえ)
Point  東宝『あこがれ』の公開後に放映された、木下恵介脚本による、第3話『別れ別れのうた』の後日談。映画で内藤洋子が演じた信子を有川由紀が演じている。

第30話『ペガサスの詩』(1966年10月25日)
脚本:小出龍夫/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/佐々木竹見(パールレイモン騎手、卒園生・田畑晋一)/三鬼濁(競馬場の職員)/南泰介/岡本忠行/磯野秋雄(晋一の父)/佐伯赫哉(あかつき子供園・安藤先生)/吉川久夫(TBSアナウンサー、実況)
Point  池貝先生たちが競馬場で馬券を手にする異色篇。田畑晋一には大井競馬場の騎手・佐々木竹見が扮している。

第31話『涙は誰れのために』(1966年11月1日)
脚本:楠田芳子/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/樋浦勉(大工の弟子、卒園生・前田良平)/袋正(国府津の家の新しい間借り人・山本新次)/牧よし子(農家の女・国府津の家の家主)/長谷川哲夫(園子の夫・池貝健)/夏圭子(新次の妻・鈴子)
Point  池貝夫妻の住んでいた国府津の借家の新たな間借り人(袋正、夏圭子)と、卒園生・良平(樋浦勉)の交流を描く。家主を演じる牧よし子は、木下恵介アワー「二人の世界」でもアパートの大家として出演。

第32話『砂の中の星屑』(1966年11月8日)
脚本:横堀幸司/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/淳(金子友貞)/誠(山本善朗)/和子(砂川カスミ)/文吾(松岡秀則)/代子(工藤ミヨ子)/武(土田義厚)/児玉千賀子(淳の新しい母)/川畑佳子(あかつき子供園保母・木村先生)/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/高須賀夫至子(あかつき子供園・栗原先生)/田口計(雑誌記者、淳の父・佐藤)
Point  クライマックスの運動会は、「あかつき子供園」のモデルで横浜市本牧にある高風子供園の運動会で撮影。先生も五十人あまりの園児も出演。撮影に使った運動会の賞品は撮影後、子供たちに寄贈したという。

第33話『形見の勲章』(1966年11月15日)
脚本:木下恵介、菊地勉/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/早川保(卒園生・藤田高)/夏川大二郎(東洋電工株式会社・専務)/松本克平(東洋電工株式会社・社長)/泉真喜(あかつき子供園勤務 岩本さん)/園江梨子/川畑佳子(あかつき子供園保母・木村先生)/土田桂司/益田喜頓(クズ屋のオジさん・後藤平四郎)
Point  戦前“あきれたぼういず”で一世を風靡し、戦後はコメディアン、俳優、ミュージカルへの出演で活躍した益田喜頓がゲスト出演。

第34話『彼の行く道』(1966年11月22日)
脚本:森川英太郎 監督:中新井和夫

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/林秀樹(銀座"浜吉"の板前見習い、卒園生・努)/高井章子(しづの次女・郁子)/島津元(しづの長男・康雄)/小石真喜(しづの長女・俊子)/吉水慶(努の同僚)/蛎崎巌(努の同僚)/三宅康夫(努の同僚)/川辺久造(板前・西田真吉)/荒木道子(銀座”浜吉"の女将・浜吉しづ)
Point  銀座の料理屋を舞台に“修業”をテーマに人生の機微を描いた佳作。木下恵介監督の『今年の恋』(1962年)同様、料理屋を切り盛りする苦労が描かれている。脚本は松竹『武士道無残』(1960年)の森川英太郎監督。

第35話『黒い冬の謎』(1966年11月29日)
脚本:木下恵介/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/柴田侊彦(湘南電工勤務、卒園生・田辺安夫)/松村達雄(湘南電工・社長)/東恵美子(社員寮の管理人・小山貞子)/草野大悟(安夫の元同僚・坂口五郎)/尾和義三郎/木村賢治(野次馬)/篠原靖夫(野次馬)/国光正人/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/北村和夫(藤沢警察署・金子刑事)
Point  ミステリータッチの異色篇。湘南電工社長に扮した松村達雄は「男はつらいよ」二代目おいちゃんとして、松竹映画でもおなじみ。

第36話『船を見に行く』(1966年12月6日)
脚本:楠田芳子/監督:今井雄五郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/小林昭二(保の兄・鈴木進)/黒田絢子(進の妻・鈴木珠子)/戸川美子(団地の夫人)/田中筆子(安次郎の妻・梅)/寄山弘(勇吉の友人・加藤安次郎)/加藤恒喜(正子の夫・鈴木保)/北川めぐみ(鈴木正子)/森川信(保の父・鈴木勇吉)
Point  木下恵介監督の実妹・楠田芳子シナリオによる佳篇。頑固一徹の父・鈴木勇吉に扮したのは「男はつらいよ」初代おいちゃんで知られる森川信。

第37話『冬の旅』(1966年12月13日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/三宅邦子(孝子の母・国子)/安東光治(岸田の教え子、定時制高校生)/川畑佳子(あかつき子供園保母・木村先生)/八木千枝(あかつき子供園保母・斎藤孝子)/大塚国夫(定時制高校教師、卒園生・岸田)
Point  子供園の保母・斎藤孝子(八木千枝)が、“自分の自由が欲しい”とその仕事に疑問を持つところから、“仕事とは何か?”をテーマに展開。母・国子を演じた三宅邦子は、戦前から松竹を代表する女優として活躍、木下恵介監督『肖像』(1948年)、『太陽とバラ』(1956年)などに出演。

第38話『冬の銀河』(1966年12月20日)
脚本:木下恵介/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/川畑佳子(あかつき子供園保母・木村先生)/泉真喜(あかつき子供園保母・岩本先生)/中川緑/八木千枝(あかつき子供園保母・斎藤孝子)/高須賀夫至子(あかつき子供園・栗原先生)/平野恒子(高風子供園園長・平野恒子)/小林桂樹(TBS「おはよう・にっぽん」司会)/下條正巳(毛利節子の元夫・菊石徹)
Point  毛利園長の知られざる過去が描かれる。かつての夫・菊石徹を演じた下條正巳は、劇団民藝のベテランで、「男はつらいよ」三代目おいちゃんとしても活躍。劇中登場するTBS「おはよう・にっぽん」は、「記念樹」特集で木下恵介監督も出演した回から、あかつき子供園のモデルとなった高風子供園の平野園長も出演。

第39話『去り行く年』(1966年12月27日)
脚本:山田太一/監督:永塩良輔

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/児玉謙次(誠の同僚)/平島正一(誠の同僚)/名取幸政(誠の同僚)/伊東新二/八神淳/広元冽/増富信高/宝生あや子(信吉の妻・敏子)/増田順二(東急東横線助役)/笠井一彦(東急東横線車掌、卒園生・西田誠・22才)/河野秋武(東急東横線運転士・野村信吉・52才)
Point  1966年の年末に放送されたのは、定年を目前にした鉄道マンの物語。卒園生の西田誠を演じた笠井一彦は、「男はつらいよ」シリーズで裏の工場の中村君を演じることになる。

第40話『報恩記』(1967年1月8日)
脚本:木下恵介/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/佐々木功(卒園生・多賀見敬一)/山本豊三(卒園生・田代豊/林家珍平(卒園生・春男)/松川勉(卒園生・一郎)/山口崇(卒園生・三谷陽平)/寺田農(卒園生・栄二)/宮下捷(卒園生・中西英太郎)/柴田侊彦(卒園生・田辺安夫)/樋浦勉(卒園生・前田良平)/有川博(卒園生・山下久男)/吉田日出子(卒園生・礼子)/槙杏子(卒園生・ひろ子)/坂東璋子(卒園生・中田光子)/石川十郎(卒園生・西沢修)/清水紀八郎(卒園生・登)/春川ますみ(徳三の妻・松子)/渥美清(床屋・吉田徳三)
Point 「泣いてたまるか」(1966〜68年)でお茶の間でも人気の渥美清がゲスト出演。正月放映に相応しく、これまでの卒園生がズラリと出演。卒園生・只見敬一に扮した佐々木功(ささきいさお)は、和製プレスリーと呼ばれロカビリー歌手で活躍後松竹を中心に活躍。

第41話『目覚時計の歌』(1967年1月10日)
脚本:山田太一/監督:野崎正郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/信欣三(小池清吉)/清川新吾(卒園生、移動ホットドッグ店主・田川実)
Point  主要キャスト3人という小品ながら、人の善意を描いた佳作。ホットドッグ屋台を出してしるのは横浜ドリームランド。

第42話『風の音』(1967年1月17日)
脚本:田向正健/監督:野崎正郎
出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/北林早苗(対岸の女)/和田周(修の同僚・サブ)/榎本市郎
山中淳/志賀真津子(バーのマダム)/林千鶴/川畑佳子(あかつき子供園保母・木村先生)/井川邦子(修の母)/三浦弘久(大和鉄工勤務、卒園生・原田修)
Point  修の母を演じた井川邦子は、『歓呼の町』(1944年)、『わが恋せし乙女』(1946年)など木下恵介監督に古くから出演。

第43話『春にさきがけて』(1967年1月24日)
脚本:久板栄二郎/監督:中新井和夫

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/塚本信夫(風間組・浜係長)/日野道夫(ラジオ商会店主・良子の父)/中北千枝子(良子の母)/西村和代/川畑佳子(あかつき子供園保母・木村先生)/高野道子(風間組勤務、徹の恋人・夏山良子)/原田芳雄(風間組勤務、卒園生・北川徹)
Point  俳優座養成所“花の十五期生”の一人、原田芳雄が、子供園出身ゆえに結婚問題に悩む青年を好演。脚本は木下恵介監督『破壊』(1948年)『新釈 四谷怪談』(1949年)、黒澤明監督『白痴』(1951年)などの名手・久板栄二郎。

第44話『佐渡は荒海』(1967年1月31日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/清水良英(保男の恋人・田原優子)/堀越節子(優子の母・邦子)/早川恭二(保男の同僚・中川)/町田博子(保男の下宿の大家・大崎きく)/島伸行/秋田のり子/高山千恵子/松橋紀以子/庄司永建(刑事課長)/岩崎信忠(小笠原建材新潟支店勤務、卒園生・橋本保男)
Point  新潟ロケを敢行したミステリー仕立ての一篇。建材会社の資金横領の嫌疑がかけられた卒園生を想う池貝先生の気持ち。重いテーマを感動的に描く。刑事課長を演じたのが、後に「西部警察」でおなじみとなる庄司永建。

第45話『産ぶ声』(1967年2月7日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/日色ともえ(田川明子)/山吉克昌/岩崎智江/久保まづるか/小峯あき子/井上千枝子 (孫娘の出産を待つ祖母)/佐々木すみえ(娘の出産を待つ母親)/三崎千恵子(娘の出産を待つ母親・山下)/今福正雄(娘の出産を待つ父親)/野々浩介(娘の出産を待つ父親・山下)/曽我廼家一二三(救急隊員)/藤田尚子/於島鈴子/高山秀雄/小杉勇二 (妻を捨てた男・杉本)/津坂匡章(卒園生・田川順三)
Point  秋野太作(津坂匡章)の本格的デビュー作。病院の産科待合室を舞台にした人生の悲喜こもごも。「男はつらいよ」のおばちゃんこと三崎千恵子、山田太一脚本「ふぞろいの林檎たち」にも出演する佐々木すみえなどベテランの演技が味わい深い。

最終回『記念樹よ!永遠に』(1967年2月14日)
脚本:山田太一/監督:川頭義郎

出演:馬淵晴子(あかつき子供園保母・池貝園子)/高杉早苗(あかつき子供園園長・毛利節子)/牧よし子(農家の女・池貝家の家主)/長谷川哲夫(園子の夫・池貝健)/三戸部スエ(あかつき子供園勤務・三好さん)/八木千枝(あかつき子供園保母・斎藤孝子)/川畑佳子(あかつき子供園保母・木村先生)/山本豊三(卒園生・田代豊)/林家珍平(卒園生・春男)/松川勉(卒園生・一郎)/山口崇(卒園生・三谷陽平)/寺田農(卒園生・栄二)/宮下捷(卒園生・中西英太郎)/柴田侊彦(卒園生・田辺安夫)/樋浦勉(卒園生・前田良平)/有川博(卒園生・山下久男)/吉田日出子(卒園生・礼子)/槙杏子(卒園生・ひろ子)/坂東璋子(卒園生・中田光子)/石川十郎(卒園生・西沢修)/清水紀八郎(卒園生・登)/ロバート・M・リューリー(ロバート・ダドリー)
Point  池貝先生にとっても、卒園生にとってもモニュメンタルな国府津の記念樹が火事で焼失してしまう。“善意”“幸福”をテーマに46話続いてきた「記念樹」の感動のフィナーレ。ロバート・ダドリーに扮したロバート・M・リューリーは、オードリー・ヘップバーン主演『昼下りの情事』(1957年)の製作者でもある。

<キーワードで読み解く「記念樹」の世界>

【あかつき子供園】
横浜市の高台にある児童養護施設。モデルとなったのは横浜市中区本牧にある、児童福祉施設・高風子供園と、当時の園長・早野恒子先生(1899〜1998年)。撮影も高風子供園で行われている。平野恒子先生は1931(昭和6)年、相沢託児園、中村愛児園の園長を皮切りに、1941(昭和16)年には保母育成のために横浜保母園の院長となり、敗戦後の1946(昭和21)年には戦災孤児のための高風子供園を発足させ、恵まれない子供と保母のためにその生涯を捧げた。

【あこがれ】
番組放映中の1966年10月1日公開された東宝映画。「記念樹」を原作に山田太一脚本、恩地日出夫監督、内藤洋子と田村亮主演で作られた。水原園子先生に新珠三千代、毛利園長には小夜福子。第3話『別れ別れの歌』、第12話『晴れて来る空に』をベースに映画用に脚色。松川勉が演じていた吉岡一郎には田村亮、岸輝子が演じた母には乙羽信子。映画で内藤洋子が演じた西沢信子のエピソード第29話『遠く別れてもなお』は、映画公開後の10月18日に放映され、信子を有川由紀が演じた。

【記念樹】
水原園子先生が池貝健と結婚、子供園を辞める。その祝いで子どもたちが、神奈川県国府津の池貝家まで、米軍のロジャー・カミング軍曹のはからいで、バスを仕立ててさくらの苗木を植樹しにやって来た。毎回、クラウン・ポニー・ボーイズの歌う主題歌とともに、回想シーンが登場。撮影は1966年3月1日、国府津から一キロ離れた農家の庭で行われた。

<キャラクター・プロファイル>

池貝園子(馬渕晴子)
あかつき子供園・保母。15年前、結婚のためあかつき子供園を辞め、夫で学校教師の健(長谷川哲夫)をダンプ事故で亡くし、再び保母となる。かつての教え子たちとの交流を通して現実問題に真摯に向き合う。旧姓・水原。

馬淵晴子
1936(昭和11年)11月2日、東京世田谷生まれ。1954(昭和29)年、製作再開した日活の『女人の館』でデビュー。映画やテレビで活躍。昭和35(1960)年、井上隆雄と結婚を機に引退するも、「記念樹」でカムバック。木下恵介アワーでは「女と刀」(1967年)「太陽の涙」(1971〜72年)に出演。

毛利節子(66才・高杉早苗)
あかつき子供園・園長。戦後、水原先生とともに、苦労してあかつき子供園を運営、今日まで築き上げた。行政などの現実に直面しながらも、恵まれない子供たちのための努力を続ける。

高杉早苗
1918(大正7)年10月8日東京浅草生まれ。1934(昭和9)年、『隣の八重ちゃん』島津保次郎監督でデビュー。以来、松竹映画のスターとして数多くの作品に出演。1938(昭和13)年、市川段四郎と結婚、長男は二代目市川亀治郎、孫は香川照之。木下恵介アワーでは「女と刀」に出演。1995(平成7年)11月26日没。

池貝健(長谷川哲夫)
中学教師、水原園子先生と生徒のことがきっかけで出会い恋愛結婚。国府津の農家で新婚生活を始めるが、15年後の1966(昭和41)年2月18日に、交通事故で急逝。

長谷川哲夫
1938(昭和41)年7月15日、富山県下新川郡生まれ。1958(昭和33)年俳優座養成所に十期生に入所。大映映画『その夜は忘れない』(1962年)でデビュー。木下恵介劇場「喜びも悲しみも幾歳月」(1965年)「二人の世界」(1970〜71年)に出演。「水戸黄門」(TBS)では徳川綱吉を演じている。

<スタッフ・プロファイル>

木下恵介
1912(大正元)年12月5日、静岡県浜松市に生まれる。1933(昭和8)年松竹蒲田撮影所に入所、撮影助手を経て助監督となる。1943(昭和18)年『花咲く港』で監督デビューを果たし、日本初のカラー作品『カルメン故郷に帰る』(1951年)を手掛け、『女の園』『二十四の瞳』(1954年)、『喜びも悲しみも幾歳月』(1957年)、『楢山節考』(1958年)などの名作を手掛ける。1964(昭和39)年、木下恵介プロダクションを設立し、木下恵介劇場「喜びも悲しみも幾歳月」(1965年)、「記念樹」(1966〜1967年)、木下恵介アワー「おやじ太鼓」(1968年)、「三人家族」(1968〜1969年)、「二人の世界」(1970〜1971年)などヒット作を企画、制作、演出。1998(平成10)年12月30日没。

川頭義郎
1926(昭和2)年4月28日、東京市牛込区に生まれる。1945(昭和20)年松竹大船撮影所に入所、撮影助手を経て、木下組の助監督となり『カルメン故郷に帰る』など数々の作品を支える。1955(昭和30)年『お勝手の花嫁』で監督デビューを果たし、『涙』(1956)年などで、良心的作品を手掛ける。木下恵介プロダクション制作のテレビドラマのメイン監督として、松竹大船スタイルのテレビドラマを精力的に演出。俳優・川津祐介の兄。1972年12月30日没。

今井雄五郎
1925(昭和元)年11月25日、群馬県多野郡に生まれる。1949(昭和24)年松竹大船撮影所に入所、木下恵介監督の『カルメン故郷に帰る』『二人で歩いた幾歳月』(1962年)などに助監督として参加。松竹在籍のまま「喜びも悲しみも幾歳月」「記念樹」などの木下恵介劇場を演出。1996(平成8)年5月29日没。

山田太一
1934(昭和9)年6月6日、東京都台東区浅草に生まれる。1958(昭和33)年、松竹大船撮影所に助監督として入所、木下恵介監督に師事。木下監督の『歌え若人達』(1963年)の脚本を担当、木下作品のテレビ版脚色を手掛ける。1965(昭和40)年フリーとなり、木下恵介劇場「記念樹」などを手掛け、「3人家族」で連続ドラマを全話執筆。木下恵介・人間の歌シリーズ「それぞれの秋」(TBS)、「男たちの旅路」(NHK 1976〜1982年)、「岸辺のアルバム」(1977年)、「ふぞろいの林檎たち」(1983〜1997年)などの名作ドラマのシナリオでテレビドラマの時代を牽引。

木下忠司
1916(大正5)年、木下恵介の弟として、静岡県浜松市に生まれる。音楽理論、声楽を学び、1940(昭和15)年に新交響楽団(NHK交響楽団)の機関誌編集に携わり、その後応召。復員後、兄の紹介で松竹映画の音楽部員として、1946(昭和21)年『わが恋せし乙女』の音楽を皮切りに、木下恵介作品の音楽を手掛ける。『破れ太鼓』(1949)年では次男役で出演、主題歌も歌った。木下恵介劇場、木下恵介アワーの音楽も担当し、「記念樹」「おやじ太鼓」「三人家族」「二人の世界」などの主題歌の作曲も手掛けている。

<作品データ>
木下恵介劇場『記念樹』

優秀映画鑑賞会推薦 
厚生省中央児童福祉審議会推薦 
日本PTA全国協議会推薦

1966(昭和41年)4月5日〜1967(昭和42)2月14日
毎週火曜 夜9:00〜9:30
提供:大正製薬
キー局TBS
ネット局
TBS/HBC/IBC/TBC/SBC/BSN/CBC/RSK/BSS/RKB/NBC/RKK/OBS/MRT/MBC/RBC

スタッフ
原作・制作・脚本 木下恵介 #1 #2 #3 #7 #8 #9 #15 #17 #19 #22 #26 #27 #29 #33 #35 #38 #40
脚本:山田太一 #4 #5 #6 #10 #11 #12 #13 #14 #16 #18 #20 #21 #23 #24 #25 #37 #39 #41 #44 #45 #46
   伴田英司 #28
   小出龍夫 #30
   楠田芳子 #31 #36
   横堀幸司 #32
   菊地 勉 #33
   森川英太郎 #34
田向正健 #42
   久板栄二郎 #43
監督:川頭義郎 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #11 #12 #13 #14 #19 #20 #21 #22 #27 #29 #30 #37 #38 #40 #44 #45 #46
   今井雄五郎 #7 #8 #9 #10 #15 #16 #17 #18 #23 #24 #25 #26 #28 #31 #32 #33 #35 #36
   中新井和夫 #34 #43
   永塩良輔 #39
   野崎正郎 #41 #42
プロデューサー:小梶正治 (松竹)山本典助(TBS)
音楽 木下忠司
撮影:渡辺浩 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #17 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #27 #28 #29 #30 #37 #38 #40 #44 #45 #46
   保積善三郎 #15 #16 #18 #25 #26 #31 #32 #33 #34 #35 #36 #39 #41 #42 #43
美術:猪俣邦弘 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #17 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 #32 #33 #34 #35 #36 #37 #38 #39 #40 #41 #42 #43 #44 #45 #46
   出川三男 #15 #16 #18
照明:戸井田康国 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #17 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 #32 #33 #34 #35 #36 #37 #38 #39 #40 #41 #42 #43 #44 #45 #46
   青本辰夫 #15 #16 #18
編集:岸田和司 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #17 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 #32 #33 #34 #35 #36 #37 #38 #39 #40 #41 #42 #43 #44 #45 #46
池田禅 #15 #16 #18
助監督:中新井和夫 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #17 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 #33 #36 #38 #39 #40 #44 #45 #46
    熊谷勲 #15 #16 #18
大嶺俊順 #32 #35
堀内孝三 #34
白木慶二 #37
大江英夫 #41 #42 #43
装置 中村文吾
装飾:深澤重雄 #1 #2 #3 #4 #5
奥村松太郎 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #17 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 #32 #33 #34 #35 #36 #37 #38 #39 #40 #41 #42 #43 #44 #45 #46
   安田道三郎 #15 #16 #18
記録:森崎則子 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #17 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 #32 #33 #34 #35 #36 #37 #38 #39 #40 #41 #42 #43 #44 #45 #46
   福島マリ #15 #16 #18
結髪:畔柳敞暢 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #17 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 #32 #33 #34 #35 #36 #37 #38 #39 #40 #41 #42 #43 #44 #45 #46
   菊地絹 #15 #16 #18
進行 徳重里司
現像 東洋現像所
録音 松竹録音スタジオ
衣裳 東京衣裳
制作主任:石和薫 #1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8 #9 #10 #11 #12 #13 #14 #17 #19 #20 #21 #22 #23 #24 #25 #26 #27 #28 #29 #30 #31 #32 #33 #34 #35 #36 #37 #38 #39 #40 #41 #42 #43 #44 #45 #46
     岸本公夫 #15 #16 #18
主題歌「記念樹」 作詩.作曲 木下忠司  唄 小坂一也/クラウン・ポニー・ボーイズ(劇中歌唱)

制作 松竹テレビ室 木下恵介プロダクション TBS



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