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【気まぐれエッセイ】お風呂セラピー

憂鬱なとき、落ち込んでいるとき、なーんにもやる気がしないとき……。気晴らしに散歩する姿が、ぼーっと窓の外を眺める横顔が、ドラマのワンシーンのように絵になるとしたら、それだけで悩みの9割は飛んでいきそうな気がするのに。


ストレスが肌に出ない人っていいな。落ち込むと食欲が増すんじゃなくて減る人が、心の底から羨ましい。


学生時代から思っていた。

失恋してどれほど傷つこうと、泣き腫らしたその顔にニキビひとつなかったら、立ち直るまでに要する時間はやっぱり少し短くなるんじゃないかって。

私が中学生の頃ってさ、椎名林檎さんとか鬼束ちひろさんとか、Coccoさんとか、漫画のNANAとかさ、ちょっと病んでる感じが流行ったんだよ。今で言うメンヘラみたいな残念な感じじゃなくてさ、センスのかたまりみたいなイケてる人が、暗くて重たいものを抱えている感じに、多くの女の子が憧れたんだ。

だからイケてる子ほど、落ちて学校来ない、とかよくあった。

でもさ、やっと登校してきたその子の顔はやっぱり可愛くて、脚はやっぱり細いんだよ。

病んで学校には来られなくても、きっとお風呂には入れていたんだろうって、私はそういう子を見ていつも思っていた。


落ち込むと、食べる量と寝る時間が異様に増えて、お風呂に入る気力がなくなる。やっとベッドから出てみたら、少し太っていて、大きなニキビがポツポツと出来ている。そんな私が抱える決して絵にはならない闇が、きっと1番深いんだろうって、もっとも廃人に近いんだろって、あの頃から思ってた。

だから深刻になりすぎないようにさ、どんなに落ち込んでもお風呂にだけは絶対入るって、もう何年も前から決めている。自分からふわっとシャンプーの香りがすれば、体臭がするより、立ち直るまでに要する時間がやっぱりとても短くなるからね。

どうしたって肌は荒れやすい質だからさ、せめてそれだけは。

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