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おやすみエッセイ~November 2023


11月3日  文化の日

時間と本が、空から降ってこないかな。

と、思う真夜中。

昼間に淹れた紅茶の残りを飲みながら、今日やることをさらっていく。

今日のやることリストには、読書とは書いていない。

時間配分が大の苦手な私は、今日も

時間と本が、空から降ってこないかな

と思う。

11月4日

やりたくて始めたことだし、

もう片足突っ込んでしまったのだから今さらさらさら辞める気はないけれど、

たまには泣きたくなって落ち込んで、落ち込み切ったらゲラゲラ笑う。その繰り返し。

一喜一憂しながらもイバラを踏むのは、私の目指すものが、その先にあるから。

11月5日

こどもと大人の境って、なんだろう。

私は大人でもありたいし、こどもでもありたい。

泣きたいし、笑いたいし、わがままだって言いたい時もある。

我慢をするのが大人ならば、大人って不自由だな、って思ってしまう。

なので 私は 私の日常から

不自由さをなくそう

11月6日

ピヨピヨと、音とともに改札から出てきた娘が

防犯カメラにピースしてきた

と言う。

旗日に仕事やだー!って嘆いてる警備員さん、画面見て笑ってるだろうね

と返して、私も笑った。

防犯カメラに大体はピースするらしい娘が世に散らばっていれば、きっと世界は明るくなるね。

11月7日

一回これだけ聴いていこ

いいわよ

もう眠るという頃。

娘のちいさな手が、オルゴールのネジをカチカチとまわす。

ほの暗い空間に錆びれたメロディが響く、湖面に見立てたガラスの上を、これまたちいさなバレリーナがくるくると舞う。

秋の夜長、静かなるひと時

11月8日

少なくとも日に1回以上は、

「今すべきこと」と「今せずとも」とが、喧嘩を始める。

彼らの主人である私は、頭を抱えて2人をなだめるが、

なぜだか毎度「今せずともな事」が勝ってしまう。

そして今日も「今すべきこと」を蔑ろにしてしまい.....いつの間にやら夜が更けた。反省

11月9日

眠たくて眠たくて もう限界だというのに

部屋の暗闇が心地いいと感じて

なかなか目をつむれない

けれど それは

そばに

安らかさが 横たわっているからなのだろう

すべての夜と夜明けが

平穏無事でありますように

11月10日

子どもといると稀に起きる珍事。

今日は

「消しゴムを取りに行ってるあいだに、消そうと思ってた線がいなくなっちゃった!」

というもの。

その声に驚いて飛んで見にいったら、本当に消えていた、というより元から線の筆跡すらなくなっていた状態のノート。

ミステリが深まる夜.

11月11日

その瞬間の重なりが   今となる

今がたくさん紡がれれば   時がうごきだす

一日がまた  明日へと続く

私とあなたのつながり  どこかで折り重なったとき

はじけて世界がまた、広がる

11月12日

ニューヨークチーズケーキの角を落とす、なんたる贅沢なことか

雨あられのように 降るモノに怯えることも知らず

灼熱の地獄を見ることも知らず

私はただその軟い角を落としている

この行為はいったい 正しいものかと考えている間に

珈琲の温もりが

なくなってしまった

11月13日

月曜の夜。

疲れが出たのか、どうも気も体力も元気のないままに、日が落ちてしまった。

ガス.ストーブをひっぱり出し、一年ぶりに嗅ぐ匂いと火照る頬を冷えた手で包む。

皆が寝静まった頃。

手製のウメ酢湯をマグに入れ、月も星もなにもない夜を見上げて、深呼吸。

11月14日

今日も一日が終わる。

最後の食器を片づけ、うさぎにチモシーをやったら

煌めくクリスマスツリーを横切り2階へと上がる。

静かになった洗濯機、小さな寝息と睡魔と。

ハンカチ、タオル、服にパジャマ。ハンガーに干したら

夜のルーティン、やっとおしまい。

おやすみなさい。

11月15日

夜は空からやってきて、朝も空からやってくる

暗闇にひかる月も 星も 夜空、

日の出入りのすべてが

広大な宇宙からやってくる

1日のはじまりと終わりも、すべてが空。

心が落ち込んだらそんな時は

夜を終わりとして、また

新しい空を見上げよう

11月16日

ちょっと疲れた、な日。

そんな日は、子どもも疲れている。

特に週の終わり、木金なんて子どもたち疲れてますよ、と前に保育園の先生に言われたことを思い出す。

誰だって疲れるし、辛い時がある。

様々な思いが駆け巡るこの現世で、私は本当にこのままでいいんだろうか。

11月17日

今朝がた ひとり東の空を見上げたら

光の柱が降りていた

雲雲雲 そこだけぽっかりと空があって

どこか地上をすっと差したそれは

きっと そこに 大いなる力がはたらいているのだろう

いいな、見たかったな

と、学校帰りの娘。明日は一緒に見れたらいいな。

11月18日

活字に思うことがある。

不思議なことに
たったの50音、声を出さずとも
読んでいるだけで

なぜだか
温度を感じる時がある。

それは温かさや冷たさ、怖さや笑ってしまう瞬間。色んな温度がある。

私は、夜に綴る今だけは
温かさと静けさを与える
そんな言葉を紡いでいこう。

11月19日

たまには

スマートフォンもパソコンもテレビもradioもユーセンも、

何も見ずに聞こえない

そんな一日を過ごしたいですね。

朝から鳥の声を聴き、山積みの本と珈琲と紅茶。なにか美味しいお菓子。

あとは、子どもたちの笑い声と

夜の静けさがあったら

どれだけ贅沢だろう。

11月20日

私はいい歳して未だに

どんぐり拾いが好きです

松ぼっくりも拾います

今が旬、色とりどりのカエデの葉も集めます

野花摘みもします

集めたものは庭や家の棚に飾ります。

子どもにつき合ってもらって

摘んだり拾ったり、それだけで

幸せ感じる、春夏秋冬。

11月21日

日暮れに見かける燃えるような一等星は

わぁ大きい!と喜ぶのも束の間、
向きが変わればたいがいが飛行機だったりする。

見る角度でカタチが変わるのは、なにも飛行機だけじゃない。

人の紡ぐ言葉ですらカタチや通じかたが変わる。

だから物書きは、たまらないのです。

11月22日

赤い帽子のサンタクロースが
夜の森、木々の合間をぬって雪の丘を上がっていく。

あれ、

背負った袋が破けてます。

プレゼントがひとつ、またひとつと雪に落ちています。

サンタさん、後ろ、大丈夫ですか?


お土産の箱の絵。
中には美味しいラスクが入っていました。

11月23日  勤労感謝の日

今日ふと、気づいてしまった

どうして私、大人になってから
本を読まなくなったのか

そうだ、そうだった。

大人になってからの読書は"娯楽"の部類で

たくさん働いて稼がなきゃって

平日も休みも関係なく働いてた、ずっと。

そんな暇あったら
働かなきゃって、思ってたんだ。

11月24日

ここのところ数日おきに

図書館通いしている。

決まって1冊ずつ、本を借りるのだ。

不思議なことに

手にした本すべてが、短編小説。

狙ってないのに、なんでだろう。

もしや気づかれてるのかな。

私が短編小説派だということが、本たちに

読まれているのかもしれない。

11月25日

とろりとした琥珀色。

匙でひとすくい、うっかり垂らしてしまって、お台所の作業台に、ぽとり。

そのちいさな一粒を、東の空がぼんやりとてらす。

台にかげるそのきらめきは、淡い琥珀色。

そっと、つまんでみる。

私の心から垂れた、あまい一粒。

11月26日

アップルパイが焼けた。
言葉を紡ぐ。
本を読む。
知り合いのカフェに入り浸る。
誰かと笑い合う。
赤ちゃんを抱く。
おいしいと言ってもらえる。
ローズマリーの香り。
朝の珈琲。
玄関からのぞく打ち上げ花火。
夜空に星月。
金木犀の匂い。
私の心が、解放される瞬間。

11月27日

東の空が明るくなれば
いつもの散歩道、いつもの顔ぶれ

おはようございますと声をかける顔見知り、出勤前のご近所さん、必ずすれちがう誰かさん

小学生たちが楽しげに
大人をからかいながら歩いていく

こらこら、そこ、危ないから降りなさい。

いつもの朝
いつもの、私の朝

11月28日

ママは何してるときがいちばんたのしい

と、定期的に娘に聞かれる。

あなたと一緒に遊んでる時かな

そう答えると

そうじゃなくて!と、何故か怒られる。

最近、また聞かれたので

子どもみたいに遊んでる時かな

そう答えたら、静かに頷いてた。

娘はなにを見極めたのか。

11月29日

トン トン トン
だいこん トン

トン トン トン
にんじん トン

トン トン トン
ながねぎ トン

トン トン トン
おいもを トン

トン トン トン
おにくを トン

コロ コロ コロ
たまごを ポチャン

みんな グツグツ あったかい

はい、できあがり。

11月30日

雪のカタチを知っていますか。
わたしは知っています。

あれは小学生の時、雪がふりだして
友だちが隣にいました。

どれだけ説明しても、友だちは信じてはくれませんでしたが

わたしのはいた手袋には

結晶をかたどる粒が、まるで顕微鏡にかざしたやうにはつきりと見えました。

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