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なんらかのレビュー

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恨むことを選ぶ権利:『マギ』

恨むことを選ぶ権利:『マギ』

この夏、私の睡眠時間を奪ったのはサッカーではなく『マギ』だった。

私はネタバレが大嫌いなのだが、というのは私自身が、我慢できずにネタバレを読んでしまったことをいつも後悔しているクチだからなのだが(新鮮な気持ちでこの展開に出会えたらどんなによかったろう…と不可逆性に臍を噛む)、『マギ』の面白さをネタバレなしで伝えることは困難であるから、今日は解禁したいと思う。そうであっても、新鮮さはやはり大事なの

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無臭の恋人を抱き締める:『青野くんに触りたいから死にたい』レビュー

無臭の恋人を抱き締める:『青野くんに触りたいから死にたい』レビュー

あれほど、物語で容易に人を殺すなと言っただろう。どうして冒頭で早速青野くんは死んでしまうのか。なんで恋人ができて2週間で、交通事故なんかで死んでしまうのか。どうして彼女にとっては初めての彼氏なのに、死んでしまうのか。私は怒っている。

青野くんはこの世に留まり、引き続き優里ちゃんと恋人の時間を楽しもうとする。一緒に歌ったり、家で映画を観たりする。じゃあいいじゃん、めでたしめでたし…とは、ならないよ

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休み休みつらくてもいいじゃんか:『岡崎に捧ぐ』

休み休みつらくてもいいじゃんか:『岡崎に捧ぐ』

私は、私だけがつらいと思いたい。
他の誰よりも私がつらいと信じたい。
私のつらさについて話してもどうせわかってもらえないから(というか、向こうが「わかるよ」というのがいまいち信用できないから)人に話したくはないけど(というか話してはいて、その度に「やっぱりだめだった!」と敗れ続けているけど)、なんか、寄り添ってもらった、って実感がほしい。

…というときに読むべき漫画が『岡崎に捧ぐ』である。

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仲良しじゃない人と共有する、輝く時間について:『ハレ婚。』

仲良しじゃない人と共有する、輝く時間について:『ハレ婚。』

「非イスラム教徒の日本の人が、一夫多妻制度をやったらどうなるんだろうなあ」とは、やっぱり考えるのであって、そんな思考実験を漫画にしてくれている(たぶん)のが、『ハレ婚。』である。

家族について考えさせられる作品だということで読み始めたのだが、読み進めるうちに共通するものがあるとひらめいたのは、意外にも、『SLAM DUNK』だった。

私の人生の目標として、私のことをいいと思ってくれる人とばっか

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六方美人:『A子さんの恋人』

六方美人:『A子さんの恋人』

「八方美人」は、顔を向ける人の視点からみた言葉だけど、向けられる八方からその人を眺めたら、たぶん、よくても「六方美人」くらいなんじゃないかね。

A子さんの恋人は、「二方ぶす」も丁寧に描いている作品で、だから私は好きだと思う。もっと言えば、「六方ぶす」も「一方ぶす」も、色々出てきて、それぞれがきちんと描かれているから、好きだと思う。

例えばA太郎という人が出てくる。この人、モテる。恋愛だけじゃな

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