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絶望と希望、そして愛を

真夜中、除夜の鐘が鳴る。108個のわたしの煩悩は、一体どこへ行くのだろう。今年一年の苦しみや悲しみは、どこへ羽ばたいていくのだろう。そんなことを想う大晦日、わたしは今日もこんな調子。

一年、長いようで短かった。恋と同じように、いつだって終わってみればあっけない。あんなに泣いたり笑ったりを繰り返した日々も、もう遠く。元日に何をお願いしたのか、何を決意したのか全く覚えていなくて、「にんげんだなあ」としみじみ思う。今年もわたしは、どこまでも"にんげんらしい"一年だった。

死にかけたし、絶望したし、転んだし、呪った。でも、その数だけ、生きようとしたし、希望を見出したし、起き上がったし、祝ってきた。ああ、なんて美しい、一年だっただろう。

生きていれば歳を重ね、生きていれば忘れてゆく。それでも、わたしは今年のわたしを忘れたくない。どこまでも必死で生きた、2023年という年を。

初めて書く仕事をいただいたこと、お金をもらったこと。自分の本を出せたこと、買ってもらえたこと。手紙やメッセージ、コメントをたくさんもらったこと。いろんな人が、素敵だと言ってくれたこと。みんなが「生きて」と涙ながらに願ってくれたこと。愛することの喜びを知ったこと、愛されることの喜びを知ったこと。

そして、なによりもあなたに出会えたこと。

画面の向こうで絶望したり、泣いたり、笑ったりしていたあなたを、ずっと見つめてこられたこと。目を凝らして、あなたの「ほんとう」を見ようとしてきたこと。あなたの輝きが眩しかったこと。あなたが生きてるということがなによりも嬉しかったこと。

ぜんぶぜんぶ、わたしの一等星の宝物。

あなたと出会えたことすらいつか、思い出になってしまうとしても。今年わたしが呼吸できたのは、やっぱりあなたがいてくれたから。

ほんとうにありがとう、さまざまな形で支えてくれて。励ましてくれて。そして、愛してくれて。

毎日のように綴りづけた言葉は、あなたが読んでくれなければただ沈むだけ。日の目を見ることなく、誰にも知られず生まれてゆくだけ。あなたが読んでくれたから、いいねを押してくれたから、コメントをくれたから。わたしの文章は初めて光の下で踊り出したんだ。文字が生きはじめたんだ。

ありがとう、ほんとうに。わたしを作家にしてくれて、わたしの文章を作品にしてくれてありがとう。

今年出会ったすべてのひとに、出会いも別れもすべてに感謝しています。

来年はどんな年になるだろう。世界は平和などまだ遠く、今も戦争の音が聞こえてくる。遠くの国では空爆に怯えるニューイヤーズ・イブ。この国でも死にたいと叫ぶ彼女の憂鬱。首吊り台に手をかける彼。怒号に怯えては、愛など信じない君もいる。平和なんて一生来ないって、幸せなんて絶対ないって、それだけは心の底から信じられるあいつもいる。

だけど、だけどね。わたしは、来年も変わらず希望と絶望と愛を紡ぎつづけるから。それだけは、絶対に揺るぎのない真実だから。ううん、真実にするから。だからついてきてよ、なんて格好いいことは言えないけれど。わたしはあなたに愛を伝えつづけよう、一緒に生きようと涙を流そう。だから、来年もどうか、大晦日に一年をともに振り返ってください。

一年を生きるというのは、ほんとうに大変なこと。お金も政治も家族も恋人も友人も。考えることばっか。だから、一年生きようとしないでね。今日を生きてね。明日なんてどうでもいいよ、今日を生き延びて、ただ夜におやすみを言い合おう。

ありがとう、ほんとうに。今年一年を生き延びたわたしたち、何度だって乾杯しよう。半泣きの笑い顔で、何度でも、何度でも。

今年最後の、そして来年も何十回、何百回言うだろうことを言わせてください。

「今日を、生きててくれてありがとう。」

ツジアスカ、を一年ありがとうございました。どうぞ来年もよろしくお願いいたします。

よいお年を。

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