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泣けないわたし


湿った薄灰色の空のにおい

ちょっとだけ強気な風が通りすぎる


午後はものすごーく、眠くて
ほんの少しだけうとうとした。。


色のない夢を見た

内容はあまり覚えてないけど、
小さなわたしが泣いている夢だった

.
.

わたしは、昔から
泣いちゃいけない。って思っていて
気づいたら、
泣くことができない人間になってた

嬉しくても
悲しくても
痛くても
怖くても

人前では絶対に泣かなかったから

我慢強い子だねって
ずっと言われてきたし

ちょっと冷たい人って
思われていたかもしれない


素直に心のふるえるままに
泣ける人がうらやましかった




幼い頃、両親が離婚し別居して
わたしと弟は母に引き取られた


数か月たって、
離婚、別居という事実を知った北海道の父方の祖母と叔母が
わたしと弟を母の元から奪い去り、
勝手に転校手続きをして
そのまま関東から北海道へと連れて帰ってしまったのだ

わたしは、10歳。弟は、5歳だった

当時のことは、
わたし自身もあまりよく覚えていない

本当のところ、
どんな経緯でこうなったのか
よくわからない

ただなんとなく覚えているのは
ちょっと遠くへ旅行にでも行くみたいな。。
そんな軽い気持ちだった

またすぐに帰ってこれると思っていた

きっとすぐに母が迎えに来てくれるだろうと。。


大人たちは何ひとつ
真実を教えてはくれなかった

北海道へ行ってからは、
祖母と同居していた叔父夫婦に育ててもらうことになり
10年という長い長い時間をそこで過ごすこととなった 


大人はいつも大事なことを隠している

どんなに足掻いても
小さなわたしたちは、
ひとりでは生きていけなかった

飛行機に乗って、母の元へ帰ることも
父に、迎えに来て!と伝えることも
なんの力もないわたしたちには、
理不尽だらけの現実を変えることなんて
とうてい出来なかった

無力さに絶望して
毎晩泣き続けたら
ある日とうとう涙さえ出なくなった

心は声を上げて泣き叫んでいるのに
一粒の涙さえ出ない

泣いてもわめいても
もうあの場所には戻れないと
小さな体は気づいていたから

ママに会いたい!と毎日泣き叫ぶ弟を
慰めることもできず、ただ耳をふさいだ

弟が泣き疲れて眠ってしまった姿を見て
わたしの胸はビリビリに張り裂けそうだった

でも、
泣いちゃいけない
わたしはもう、泣いちゃいけないんだ

そう、何度も自分に言い聞かせた

その頃からわたしは、
魂の声に蓋をして、自分を押し殺して
生きるようになった


あれから。
30年以上たった今も、
わたしは上手に泣くことができない


あふれる感情のままに涙を流すことが
まだ許されていないかのように

だれもいない
たったひとりでいるときにだけ
涙は流れてくる
なんの涙かはわからないけど。。

もう泣いちゃいけない。
涙はだれにも見せない。


そう決めたあの日から

わたしは上手く泣けなくなったんだ



だけど、最近ね。
心をゆるめることが上手になってきて
魂がひらかれていく感覚があって

もう泣いてもいいんだよ。って
どこからか声が聞こえたんだ



子供みたいに
泣けるようになるかな?


ゆっくり
ゆっくり
魂をひらいて
ゆるめて
ゆるんで
ゆるしていこう

そして
わたしは、もう一度
わたしを生きていこうと思う



どこかで読んだことがある

涙は、魂が震えた時に
"魂の汗"として現象化する

だから、その涙を止めてはいけない
その涙を止めてしまうのは、
"無かったことにする"という行為になるから


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