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ヒューマンルネッサンス研究所という、おもしろい未来研究所で、1970年にオムロン創業者…

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ヒューマンルネッサンス研究所という、おもしろい未来研究所で、1970年にオムロン創業者立石一真らが発表した未来予測理論「SINIC理論」を下敷きに、暮らしの中から未来の兆しを、鳥の目、虫の眼になって見つけ、未来ソウゾウしています。 https://www.hrnet.co.jp/

マガジン

  • 自律社会という近未来へ

    ヒューマンルネッサンス研究所は、オムロンの未来社会研究所です。未来予測の基盤は「SINIC理論」というオムロン創業者らが構築した理論です。半世紀以上前の未来予測を愚直に羅針盤とし続けられるのは、この理論への共感が大きくなる一方だからです。みなさんも共感の船に乗りませんか?

最近の記事

豊かな社会の中で、家畜化する人間と人間化する機械。人と機械の未来はいかに?

4割の自治体は消滅可能性自治体  前回(4月15日)コラム「ソロ暮らし社会が、そろりそろりとやってくる」で人口減少問題を取り上げた。思いのほか反響が届いて驚いていたのだが、さらに、4月24日には人口戦略会議から2050年までの人口減少の分析結果が発表された。  この分析は、「20~39歳の女性人口」(以下、若年女性人口)の将来動向を指標化したところに特徴がある。その結果、全国1729自治体の4割にあたる744自治体で、若年女性人口が50%以上減少することが予測され、このよう

    • ソロ暮らし社会が、そろりそろりとやってくる

      いちばん確かな未来予測  未来を完璧に予測することは不可能だ。しかし、それら数多の未来の見方の中でも、最も確からしさの高い未来予測は何か?お気付きのとおり、「人口動態」からみる未来の姿は、かなり高い確度の未来予測だ。  WHOが発表している最新の世界の平均寿命(0歳時点での平均余命)を見ると72.5歳、また日本は世界1位の長寿国であり84.3歳である。それほどに寿命が長くなっているということは、今いる人々と、次世代として生まれる規模を推し計り易い。今後数十年間の世界の人口構

      • 今の"適切"は、未来の"不適切"

        新しい年度がスタートした。今朝の電車内には、スーツ姿の若い人たちも目立っていた。「ウチの会社ってさ…」とか、「やっぱり早めに海外出たいよな」など、聞こえてくる声も、就活時代の第三者モードや忖度モードとは違う、前向きな当事者感ある声が聞こえてきて気持ちいい。満員電車内での立ち居振る舞いは早めに身につけてほしいが、会社内での立ち居振る舞い方は、今を忘れずに続けてほしいものだ。 「同級生」という同時代感覚  そんな四月始まりの時間区分の単位というのは、学校の暦がそれであるため、

        • 道具の歴史は、人間が機械にできることを機械に任せようとしてきた創造の歴史

           私は、博物館を楽しむのが好きです。博物館に並ぶものを、じぃっと見ていると、自分の中の記憶と反応して、プチプチと音を立てて反応が始まります。未来もみえてきたりします。  日本博物館協会の資料によると、総合的な施設から特定分野のコレクションまで含めて、日本国内には、4,484館(令和3年度実績)があるということです。数多の博物館の中でも、特定の分野やテーマに絞った、ある種マニアックな収蔵品を展示する館に、私はとても惹きつけらます。神戸にある竹中大工道具館は、まさにその一つです。

        豊かな社会の中で、家畜化する人間と人間化する機械。人と機械の未来はいかに?

        • ソロ暮らし社会が、そろりそろりとやってくる

        • 今の"適切"は、未来の"不適切"

        • 道具の歴史は、人間が機械にできることを機械に任せようとしてきた創造の歴史

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        • 自律社会という近未来へ
          29本

        記事

          『ウェルビーイング』、それは一人ひとり違う状態だろう。未来への日本型ウェルビーイングのヒントが見えてくる。

           この本は、ウェルビーイングの第一人者の石川善樹さんが、ニッポン放送のアナウンサー吉田尚記さんと語り合ったポッドキャスト番組をもとに加筆した書籍だ。二人の掛け合いだけでなく、医師である石川さんの父親も交えての鼎談「元気と病気とウェルビーイングの関係性」という鼎談もあり、偶然手に取ったのだが、サクサク読めたし、日本文化とウェルビーイングという切り口もおもしろく読めたので、備忘録に残してみた。 圧倒的にbe(いる)が足りていない社会  この本は、ポッドキャストの番組総集編とい

          『ウェルビーイング』、それは一人ひとり違う状態だろう。未来への日本型ウェルビーイングのヒントが見えてくる。

          映画『PERFECT DAYS』から感じとった「完璧な日常」へのいきかた

          ルーチンの語感と実感 「ルーチンワーク」という言葉を使う時、どちらかと言えば、難易度の低い、誰にでも、あるいは人間でなく機械にでもできる付加価値の低いワークを指して使っていないだろうか。「クリエイティブワーク」とか、高収入の仕事と対置して使っていないだろうか。  しかし、同じ動作を繰り返し続けること、本来、それは人間にとって楽ではなく、辛い苦行のはずだ。持続しきれずに飽きて放棄してしまう性向は、誰もが持っている人間の性だと思う。そこから体よく逃れるために、次々に新しい課題

          映画『PERFECT DAYS』から感じとった「完璧な日常」へのいきかた

          『人類冬眠計画』、それはユートピアでもディストピアでもない。「人工冬眠」という現実の科学技術研究であり未来創造テーマだ。

           この本のタイトルを見て、多くの人は「SF小説なんだ」と思うだろう。しかし、岩波科学ライブラリーのシリーズの一冊であり、空想ではない、サイエンスの書だ。冬眠研究者の著者である砂川さんは、理化学研究所で冬眠生物学研究チームのリーダーであると共に、今もなお臨床の医師として医療現場の最前線にも身を置いている。彼の冬眠研究の動機、そして未来の人類への意味、自然社会以降の少し先の未来を考える深い思考実験ができる書だ。 著者、砂川玄志郎さんとの出会い  私が砂川さんに出会ったのは偶然

          『人類冬眠計画』、それはユートピアでもディストピアでもない。「人工冬眠」という現実の科学技術研究であり未来創造テーマだ。

          バリ島で感じた「懐かしい未来」

          オムロン創業者らが構築し、半世紀以上経った今もなおオムロン経営の羅針盤として活かされる未来予測理論「SINIC理論」の未来ダイアグラムでは、あと10年で100万年前からの人類史、社会発展の1周期が完了します。そして、新たな2周期目の「自然社会」が始まると予測しています。  これは、農業社会、工業社会、情報社会という大きな社会区分レベルのまったく新しい社会の到来です。しかし、これまでのような産業区分で説明できた社会とは異なる自然社会のイメージは、なかなか想像したり具体化しづらい

          バリ島で感じた「懐かしい未来」

          新年明けましておめでとうございます。今年も、みなさんと共に未来ソウゾウを進めたく、よろしくお願いいたします。

          トランジションを超えられるか?  さて、2024年です。SINIC理論の未来ダイアグラムでは、最適化社会の最終年、新たな価値観に基づく自律社会を迎える準備の完了という時期に位置づけられます。この予測について、次の3択の世論調査をしてみたらどういう結果になるでしょう? Q. 2025年から自律社会はスタートできると思いますか? ① そう思う ② あり得ない ③ そうしないと、手遅れになる  常識的に推測すると、②の回答者が過半数になることは確実でしょう。「現実を見れ

          新年明けましておめでとうございます。今年も、みなさんと共に未来ソウゾウを進めたく、よろしくお願いいたします。

          2023年最後の読書備忘録は『ドラッカー最後の言葉』(講談社BIZ)。2005年に世を去った数ヶ月前のインタビュー集。21世紀を見据えて、20世紀を生きた”社会生態学者”の言葉を、未来に向けて噛みしめてみた。

          ドラッカーという人  ピーター・F・ドラッカーという人物は、専門領域を特定できないほどに多才な人だ。自分の意志と好奇心のままに生きた自由人に見える。それが可能な家庭環境でもあったのだろう。  ウィーン大学教授の父親はフリーメイソンだというし、wikiによれば、両親の紹介で幼少期に心理学者のフロイトに会っていたり、フランクフルトの新聞記者の時代には、ヒトラーからもインタビューが許されていたという。  そして、ナチスから逃れてイギリスに移っては、投資銀行で働きながらケンブリッジ

          2023年最後の読書備忘録は『ドラッカー最後の言葉』(講談社BIZ)。2005年に世を去った数ヶ月前のインタビュー集。21世紀を見据えて、20世紀を生きた”社会生態学者”の言葉を、未来に向けて噛みしめてみた。

          今年も遂に師走に入ってしまった。今年も多くの未来予兆を感じ取れたことがうれしい。前回のコラムでも速報したが、オランダで見聞できたことは、その中でも大きなインパクトがあった。約20年前に「オランダに自律社会モデルを見つける!」と意気込んで出かけた時の興奮とは違う、興奮を静かに沈殿させて結晶化させるようだった。そこで、今月もオランダネタの中でも、最も大きな印象であった「灰色」を扱う人々の価値観について徒然に語ってみたい。

          「低地の国」ネーデルランドの未来デザイン  オランダと言えば、小学校の社会科で習ったとおり、面積は九州の大きさ程度でで、国土の1/4は海面よりも低く、最高峰の山の標高が321mという平たい国だ。13世紀以来、浅海の干拓によって国土を広げて、文字通り「つくってきた国」だ。かつての調査でも「ポルダー(干拓地)の上にあるオランダという国は、まさに、そこに暮らす市民自身が自分たちでデザインする文化を持つ国なのです」という現地での説明を聞いた。「世界は神がつくったが、オランダはオラン

          今年も遂に師走に入ってしまった。今年も多くの未来予兆を感じ取れたことがうれしい。前回のコラムでも速報したが、オランダで見聞できたことは、その中でも大きなインパクトがあった。約20年前に「オランダに自律社会モデルを見つける!」と意気込んで出かけた時の興奮とは違う、興奮を静かに沈殿させて結晶化させるようだった。そこで、今月もオランダネタの中でも、最も大きな印象であった「灰色」を扱う人々の価値観について徒然に語ってみたい。

          追悼、未来研究の恩師 加藤秀俊先生。 渋谷駅伝言板調査の想い出。

          未来をスコープする考現学者  私が一方的に、師の一人とさせていただいている方の訃報に新聞紙上で接した。「中間文化論」をはじめ、独特かつ深い社会洞察を展開されてきた加藤秀俊先生が亡くなった。つい最近まで、facebookの投稿にご自身でコメントを上げたりされていて、いつまでも文明社会のフロンティアに立って、お元気に過ごされているなと感心していたが、93歳の大往生だったようだ。現代都市文明に眼差しを注ぎ、遙かな歴史を探訪し、来たる未来を見ていた、「見物」の精神を体現した考現学者

          追悼、未来研究の恩師 加藤秀俊先生。 渋谷駅伝言板調査の想い出。

          未来をみるために、鳥の眼、虫の眼、心の眼を塩梅よく使って世界をみようと30年以上やってきました。そのためには、未来の兆しに接する高飛びも大切です。久しぶりに1週間オランダのアムステルダムを訪ねました。安居昭博さんの素晴らしいコーディネートで、眼、耳、鼻、舌、手足、持てるセンサー全開にして、すぐそこまでやってきている自律社会を確信しました。そのいくつかを、忘れないうちにコラムで速報してみます。

          HRI未来研究フィールドとしてのオランダ 私が未来研究でオランダに注目したのは、ちょうど今からおよそ20年前。世界に自律社会のモデルを探した結果、北欧のスウェーデンとオランダに辿り着いたというわけでした。下記URLの2003年HRI発刊のリサーチレポートには、私の若き日の熱い問題意識が記されています。ご興味があれば目を通してみてください。 『自律社会としてみるオランダ』HRI刊, 2003.1 オランダ社会のエッセンス  当時は、高い失業率などの社会低迷から蘇ったオラン

          未来をみるために、鳥の眼、虫の眼、心の眼を塩梅よく使って世界をみようと30年以上やってきました。そのためには、未来の兆しに接する高飛びも大切です。久しぶりに1週間オランダのアムステルダムを訪ねました。安居昭博さんの素晴らしいコーディネートで、眼、耳、鼻、舌、手足、持てるセンサー全開にして、すぐそこまでやってきている自律社会を確信しました。そのいくつかを、忘れないうちにコラムで速報してみます。

          制御しきれない様々な要素から紡ぎだされる未来社会は予測し難い。しかし、かなり高い確度で予測できることもある。「人口動態(デモグラフィック)」、もちろん、人口動態も不確実だけど、増減の傾きがひとたび生まれると、その加減速はあっても、転換は長期間にわたって難しい。もっとロングレンジで気にしたい未来シグナル。

          世界人口縮減宣言 昨年2022年7月、国連による世界人口将来推計(UN World Population Prospects 2022)が発表された。私は、2080年代に世界人口はピークに達して「世界人口縮減」が始まることを示したという点を、未来への大きなメッセージだと感じ取った。しかし、世間はそんな遠い先は気にせずに、「人口の重心アフリカへ」とか、「年内に世界人口80億人へ」などと、当面続く世界人口の増加と、アジアからアフリカへの人口重心のシフトを取り上げた程度でスルーさ

          制御しきれない様々な要素から紡ぎだされる未来社会は予測し難い。しかし、かなり高い確度で予測できることもある。「人口動態(デモグラフィック)」、もちろん、人口動態も不確実だけど、増減の傾きがひとたび生まれると、その加減速はあっても、転換は長期間にわたって難しい。もっとロングレンジで気にしたい未来シグナル。

          ロシアがウクライナ侵攻を開始したのは2022年2月24日、そして一方的に南部の州の併合を宣言してからは1年経った。戦争は、終息のシナリオを描けぬまま続いている。

          秩序は、対立から消失へ  ほぼ、欧米や国内メディアの情報を受け取っているだけの私たちの立場だと、この紛争は、ロシアが圧倒的な悪の存在である。しかし、戦争や紛争には、それぞれの「正義」がある。そして、正義を維持して強固にするために、それぞれの秩序(order)がある。二度の世界大戦を終えた世界は、秩序の対立という冷戦を経て、次第に一つに収斂していくかのようだった。しかし今、世界各地で起こる紛争は、秩序の対立に戻るというより、秩序を失う「渾沌(カオス)」の海の中のようだ。とは言

          ロシアがウクライナ侵攻を開始したのは2022年2月24日、そして一方的に南部の州の併合を宣言してからは1年経った。戦争は、終息のシナリオを描けぬまま続いている。

          未来への軌跡を刻んできた北の大地の行政マン

          狂牛病発生の激震  狂牛病による牛肉パニックの記憶を思い起こせるだろうか。今から22年前2001年9月10日、イギリスに端を発した狂牛病に感染した牛が、とうとう千葉県内でも確認された。翌11日は、アメリカ同時多発テロが世界中を震撼させた日である。しかし、酪農王国北海道の道庁では、より大きな激震が走っていた。狂牛病の感染牛が生まれたのが北海道生まれだとわかったのだ。  当時の副知事が、この本の主人公の磯田憲一さんだ。すぐさま狂牛病対策本部長を担うことになった彼は、この原因も

          未来への軌跡を刻んできた北の大地の行政マン