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2023年最後の読書備忘録は『ドラッカー最後の言葉』(講談社BIZ)。2005年に世を去った数ヶ月前のインタビュー集。21世紀を見据えて、20世紀を生きた”社会生態学者”の言葉を、未来に向けて噛みしめてみた。
ドラッカーという人 ピーター・F・ドラッカーという人物は、専門領域を特定できないほどに多才な人だ。自分の意志と好奇心のままに生きた自由人に見える。それが可能な家庭環境でもあったのだろう。 ウィーン大学教授の父親はフリーメイソンだというし、wikiによれば、両親の紹介で幼少期に心理学者のフロイトに会っていたり、フランクフルトの新聞記者の時代には、ヒトラーからもインタビューが許されていたという。 そして、ナチスから逃れてイギリスに移っては、投資銀行で働きながらケンブリッジ
今年も遂に師走に入ってしまった。今年も多くの未来予兆を感じ取れたことがうれしい。前回のコラムでも速報したが、オランダで見聞できたことは、その中でも大きなインパクトがあった。約20年前に「オランダに自律社会モデルを見つける!」と意気込んで出かけた時の興奮とは違う、興奮を静かに沈殿させて結晶化させるようだった。そこで、今月もオランダネタの中でも、最も大きな印象であった「灰色」を扱う人々の価値観について徒然に語ってみたい。
「低地の国」ネーデルランドの未来デザイン オランダと言えば、小学校の社会科で習ったとおり、面積は九州の大きさ程度でで、国土の1/4は海面よりも低く、最高峰の山の標高が321mという平たい国だ。13世紀以来、浅海の干拓によって国土を広げて、文字通り「つくってきた国」だ。かつての調査でも「ポルダー(干拓地)の上にあるオランダという国は、まさに、そこに暮らす市民自身が自分たちでデザインする文化を持つ国なのです」という現地での説明を聞いた。「世界は神がつくったが、オランダはオラン
未来をみるために、鳥の眼、虫の眼、心の眼を塩梅よく使って世界をみようと30年以上やってきました。そのためには、未来の兆しに接する高飛びも大切です。久しぶりに1週間オランダのアムステルダムを訪ねました。安居昭博さんの素晴らしいコーディネートで、眼、耳、鼻、舌、手足、持てるセンサー全開にして、すぐそこまでやってきている自律社会を確信しました。そのいくつかを、忘れないうちにコラムで速報してみます。
HRI未来研究フィールドとしてのオランダ 私が未来研究でオランダに注目したのは、ちょうど今からおよそ20年前。世界に自律社会のモデルを探した結果、北欧のスウェーデンとオランダに辿り着いたというわけでした。下記URLの2003年HRI発刊のリサーチレポートには、私の若き日の熱い問題意識が記されています。ご興味があれば目を通してみてください。 『自律社会としてみるオランダ』HRI刊, 2003.1 オランダ社会のエッセンス 当時は、高い失業率などの社会低迷から蘇ったオラン
制御しきれない様々な要素から紡ぎだされる未来社会は予測し難い。しかし、かなり高い確度で予測できることもある。「人口動態(デモグラフィック)」、もちろん、人口動態も不確実だけど、増減の傾きがひとたび生まれると、その加減速はあっても、転換は長期間にわたって難しい。もっとロングレンジで気にしたい未来シグナル。
世界人口縮減宣言 昨年2022年7月、国連による世界人口将来推計(UN World Population Prospects 2022)が発表された。私は、2080年代に世界人口はピークに達して「世界人口縮減」が始まることを示したという点を、未来への大きなメッセージだと感じ取った。しかし、世間はそんな遠い先は気にせずに、「人口の重心アフリカへ」とか、「年内に世界人口80億人へ」などと、当面続く世界人口の増加と、アジアからアフリカへの人口重心のシフトを取り上げた程度でスルーさ
ロシアがウクライナ侵攻を開始したのは2022年2月24日、そして一方的に南部の州の併合を宣言してからは1年経った。戦争は、終息のシナリオを描けぬまま続いている。
秩序は、対立から消失へ ほぼ、欧米や国内メディアの情報を受け取っているだけの私たちの立場だと、この紛争は、ロシアが圧倒的な悪の存在である。しかし、戦争や紛争には、それぞれの「正義」がある。そして、正義を維持して強固にするために、それぞれの秩序(order)がある。二度の世界大戦を終えた世界は、秩序の対立という冷戦を経て、次第に一つに収斂していくかのようだった。しかし今、世界各地で起こる紛争は、秩序の対立に戻るというより、秩序を失う「渾沌(カオス)」の海の中のようだ。とは言