男は黙って、なのか。
「ザ・シークレットマン」
アメリカ合衆国史上初めて任期半ばで辞任に追い込まれたリチャード・ニクソン大統領。その引き金となったウォーターゲート事件の捜査の指揮にあたったFBI副長官マーク・フェルトは、なかなか進展しない捜査の裏にホワイトハウスが捜査妨害をしていることを察知し、事件自体がホワイトハウスの陰謀によるものであることを悟る。大統領に忠実なL・パトリック・グレイFBI長官に捜査協力が期待できない中、フェルトは事件の真相を明るみにするため、大胆な決断をする。(映画.comより転記)
ウォーターゲート事件が起こってからその後のFBIとホワイトハウスのせめぎ合いが描かれたもの。
実際事件名くらいしかちゃんと記憶してなくて、こんなんやったんや…!という驚きが一番かも。だって、ニクソンって如何にもな悪人顔じゃん?そんな彼が何か引き起こしてもあんまり何とも思わないというか、まぁ起こしそうやなと。(それも今だから言えるのか)
それよりもこのマーク・フェルトというFBI副長官であり、部下からも信頼の厚い彼が、信念が故にそんなことをしていたなんて、というお話。
BGMがおどろおどろしくて、それにもヤラれる。
「ディープ・スロート」という言葉を聞いたのは、つい最近のような気がする。それもそのはず、彼自身がディープスロートだと明かしたのは事件から30年以上経った2005年のことだから。たしかその時は、すごく話題になったような覚えがある。(しかもウィキで調べたら、そうだと告白した時、すでに彼は認知症だった…なんて)
このストーリーは、フェルトのFBI上層部としての苦悩が、自身の家庭問題と併行して描かれていて、彼が決して完璧な男ではないというところもポイントだと思う。
それでもだ。彼に肩入れして、前のめりで、事の成り行きを追ってしまうのは、リーアム・ニーソンの力量なんだと思う。絞りに絞って臨んだその体躯は、それこそ完璧で。逆に妻役でダイアン・レインが出てるけど、めちゃめちゃ影が薄くて、別に彼女じゃなくてもよかったんじゃ、と思えてくる。
フェルトとホワイトハウスの面々、マスコミ関係者、またFBIの部下たちとの丁々発止のやり取りに目が離せなくて、ここまで女性の影が薄いのも徹底しているなという感じ。
今となっては、なぜ彼がそういうリークをしたのか(実際はリークと言うより、記者が調べられるように誘導しただけで、彼の口から直接ではない)、その後沈黙を守り続けていたのか細部は謎のままで。邦題は「ザ・シークレットマン」だけど、イタリアでのタイトルは「The Silent Man」だったらしくて、後からそれは知ったのだけど、シークレットよりはサイレントの方がしっくりくるなと思う。
言うべき時は言って。黙す時は黙して。それが彼の信条でもあったんだろうなと。秘密の男ってよりは、沈黙の男だよ、まさに。
難しいストーリーって思うかもしれないけど、ドキドキしながらの心理戦で、とにかくあのリーアム・ニーソンを見るだけでも価値があるかと。
2018年18本目。梅田ブルク7にて。
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