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【cinema】手紙は憶えている

11/10鑑賞。

認知症のユダヤ人の男性が、最後の力をふりしぼって、自分や自分の家族をアウシュヴィッツで残酷な目に遭わせたナチの残党に復讐する話、とは何となく映画を見る前から知っていたんですが、こんな壮絶なラストとは、思わなかった…。

ルディ・コランダー。それが、そのナチの残党が身分を偽って生きている名前。オットー・ヴァリッシュ、これがそやつの本名。この広いアメリカに4人、同姓同名が存在する。クリストファー・プラマー扮するゼヴ(ドイツ語でオオカミという意味だそう)は施設に入っていて、妻が死んだことさえわからなくなる時があるが、微かな記憶を、また友人マックスからの手紙を頼りに、その4人を捜して一人ひとり訪ねて行くのだ、お前はオットーかと、あの時を覚えているかと。

途中、銃を仕入れたり、記憶が混乱して手紙の所在さえわからなくなったり、捜しているルディではないルディに会う度に、悲しい場面が待ち受けていて、人が一人ひとり持っている思想やバックグラウンドの違いに改めて気づかされます。

いざ、捜していた「ルディ」に対面した時。それは、ゼヴにとって一番聞きたくなかった真実が明かされます。しかし、思うのは認知症の症状云々では塗り替えられない過去の傷痕があるんじゃないかということ。人の記憶は当人にとって都合のいいように差し替えられたりするし、おぼろげなものなんて限りない。だけど、そんなことってあるだろうか、と絶句するぐらいのラストなんです。

私は、自分が見る前に、母に「この映画、評価も高いみたいだし、クリストファー・プラマーが主演らしいよ」と言って、何気なく薦めました。で、母は1人で観に行ったんです。いつもはわりかしほのぼの邦画ばかり見る彼女にとっては、相当な衝撃だったようで。早くアンタも見てきて語りたい!と。昨日、今年見て一番良かった映画、心に残ってる映画は?と彼女に聞きました。この映画だと言いました。それが全てを物語っているのかなと思います。私からすると、年間100本以上見るうちの1本で、もっと衝撃度が高かったり、えげつないシーン満載の作品もあるけれど、何だろう、こんなことってあっていいんだろうかと思わざるを得ない、後味が複雑な映画もないんだろうと思います。絶望に打ちひしがれるも、一方で、執念で生き抜いてきた人が最も強いのだと。

クリストファー・プラマーをはじめ、とにかくおじいさん俳優陣の熱演ぶりが素晴らしいです。ブルーノ・ガンツ然り、マーティン・ランドー然り。「マリーゴールドホテルで会いましょう」みたいなほのぼの系のおじいちゃんおばあちゃん映画も好きですが、この映画のように、皆が持っている力を結集させたかのようなイカつい映画も私は好きです。「大好きな」映画かどうかはわかりませんが、「忘れられない」映画であることは間違いない。

この映画を撮ったのは、アトム・エゴヤン。やっぱり彼の作品は追い続けていこうと思いました。これからの映画界を牽引していく監督の1人だと私は思います。

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