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旅紀行

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記事一覧

一人旅紀行岡山 かぼちゃのある島



「岡山駅」という文字が目に入る。
私はその日晴れの国を訪れた。そして在来線に乗り込み、しばらく揺られて黍団子を片手に島へと向かう。
駅に着き、なんだかセクシーでどこかお茶目な顔の女神像を尻目に船着き場へ。乗船券を買い、宇野港から海への旅に乗り出す。

海はきらきら飛沫をあげて、弾ける炭酸水の泡のようだった。目に痛くない光の粒が私の感性を刺激する。海って生きているんだな、そう感じさせられて、旅の

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一人旅紀行青森 白い雪に包まれた國

視界には一面の白が広がっていた。見渡す限り白、白、白。
白い息が漏れる。ここは雪の降る国。
旅のはじまりは七戸十和田。そこから十和田市へと向かう。

「十和田市現代美術館前」というバス停で降りる。青空と雪面のコントラストが眩しい。
ずっと待ち望んでいたフラワー・ホースの姿が目に入る。街中なのにここだけ異国のようだ。そう思った。白い雪がキャンバスで、その中に描かれたカラフルな馬の姿はより一層映えて見

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一人旅紀行静岡 神様の眠る國

一日目 三島・裾野・沼津

久しぶりの旅に私の心は浮足立っている。
普段忙殺される日々に追われている私は、伊豆行きの切符を手に取りローカル線に乗り込んだ。

旅の玄関口は三島。
初めに、パワースポットとして有名な三嶋大社に足を延ばした。
鳥居をくぐると静謐な空気に包まれていた。朝早かったこともあり人気がなく、ああここは聖地なのだと感じられた。中は鬱蒼と茂る緑に覆われ、八月中旬の暑さの中でその空間だ

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一人旅紀行千葉  

転職で内定が出て、免許もあと少しで取得ということで落ち着いていたとき、今のうちに遠くへ行っておこうと思い立った。しいたけ占いでも、今月は美しいものを見て何も考えずそれに浸ってゆっくりしなさいって言っていた。Instagramでジョゼフ・コーネル展が明日までだと知って、急遽計画を立て、宿を予約した。こんなに出発まで時間がないのは初めてだったけれど、うまくいく気がする。今度は充電バッテリーもあるし。根

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一人旅紀行 島の灯 瀬戸内

一日目 父母ヶ浜

冬。
頬をきる冷えた空気を感じながら眼前に広がる海を見渡す。
光の集合体が水面で弾けて空気中に飛び散る様を、水晶体を通して捉える。

私がずっと前から、邂逅するのを切望していた場所。
砂に埋もれた小さくてかわいらしい形の貝殻を手に載せながら、頭を空っぽにして白い息を見つめる。

ここは父母ヶ浜だ。
今年の夏に、瀬戸内国際芸術祭が開催されていた。三年に一度ということで、ずっと待ち

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