雨について

雨、という種類のこの世の静寂をひとところに集めたら世界はどうなるのだろう。
雨は世界を不透明にして、形あるものの輪郭を朧げにする。一方で、すべてを洗い流して透明にするという役割を果たしている。降った後には虹がかかる。不思議な両義性。私たちは抗えない天の神。
死、というのはもったりとした雲で覆われた曇りの空から糸を織って繭をつくり、その中で眠りにつくような事象だと思う。永遠の眠り。それは恐怖の対象でもあるし、安寧や再生を意味するところもあるのかもしれない。見えないものは怖いから。

この記事が参加している募集

スキしてみて

ほろ酔い文学

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?