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【読書メモ】『マキアヴェッリ語録』(著:塩野七生)

政治とは実行です。
約束したことは必ずやり遂げる、そして次の課題を見つけ取り組む、その繰り返しが政治です。

出典:「岸田文雄総理、「X(旧Twitter)」2024年3月17日ポストより

相変わらずに、岸田政権での実績の積み重ねはすさまじいものがあると思いますが、それだけにむしろ近い将来の有事への危機感を突き付けられているようで、安穏とした気分には到底なれないなぁ、とも感じています。

そんな中、ふと思い出したのは『マキアヴェッリ語録』との一冊。題名にもあるマキアヴェッリは15-16世紀にかけてフィレンツェ共和国(現イタリア)の衰退期に生きた政治思想家で、その思想はマキャベリズムとの言葉で表現されることもあります。

そのマキアヴェッリが傾倒した同時代人がカンタレラで有名なチェーザレ・ボルジアであったりしますが、そのボルジアが「毒を盛る男」なんて評されていることから、そのイメージに釣られてかネガティブに捉えられたりも。

本書は、そのマキアヴェッリの著作・手紙などから、著者・塩野さんの琴線に触れた文を抜粋した語録という形式をとられています。

あなたの関心が刺激された箇所について、御意見を聴かせていただきたい

出典:『マキアヴェッリ語録』

面白いのは前書きの部分に「あなたの関心が刺激された箇所について、御意見を聴かせていただきたい」とある点で、SNSが盛んな今でこそさして珍しくはない双方向でのコミュニケーション様式ですが、こちらが最初に上梓されたのは1988年、今から40年以上昔の話です、、この時代でのこの発想はさすがだよなぁ、と。

そして、その質問をまとめて「マキアヴェッリと日本人」とでも銘打って著したいとのこともありましたが、今でも募集しているのでしょうか。受付窓口は新潮社文庫編集部とのことですが、寡聞にしてそれっぽい著作を拝見したことはないのですが、もしどなたかご存じでしたら教えていただけますと幸いです。

必要に迫られた際に大胆で果敢であることは、思慮に富むことと同じと言ってよい。

出典:『マキアヴェッリ語録』

さて仮に、私が今現在問いかけるとしたらまずはこちらの一節。戦後レジームと対峙し続けた安倍元総理はもとより、今となってはその安倍さん以上に大胆かつ果断に政策実行を続けている岸田総理(政権)についての評価を、古代ローマの登場人物になぞらえてみてほしい、と、問いかけてみたい。

民衆とは、キケロも言ったように、無知ではあるけれども真実を見ぬく能力はもっているのだ。

出典:『マキアヴェッリ語録』

そしてもう一つはこちらの一節。私も含めての現代の日本人に、その岸田政権の実績とそこから導き出されてくる世界情勢を「見抜く能力」が備わっているのかどうか、ないしは備えようとしているのかどうか、イタリアからだとどう見えていますか、とも問いかけてみたい。

新しい秩序を打ち立てるということくらい、むずかしい事業はない

出典:『マキアヴェッリ語録』

その上で、日本が今現在求められているであろう新しい秩序は「戦後レジームからの脱却」、これは左右問わずの全体主義・共産主義勢力の駆逐とも表裏一体であることは、先の大戦時の歴史的経緯を俯瞰すれば自ずと浮かび上がってくるものでもあろうと、個人的には。

ふと思ったのは「過ちは繰返しませぬから」との、岸田さんのお膝元でもある広島に刻み込まれている一言について、「戦争を繰り返さぬ」との文意との連結は確かに妥当でしょう。でもそれは決して、お花畑な平和主義者の仮面を被っている全体主義・共産主義が喧伝する「(広義での戦力放棄による)戦争をしない」とは異なるのではないかと。

彼らが望むものは、人の進歩の停止、可能性の否定、それはすべからく「自由」を否定する世界でしかない。言ってしまえば、多様性とは真逆となる単一的価値観に支配される世界の現出を望んでいる、に過ぎません。

世界なんて、ただ、人の営みが連綿と紡がれていくだけであって、永遠に「完成」なんてしないのに。それこそ、インターネットは永遠のベータ版と言われているように、日々、新しい価値、新しい価値観、新しい仕組み等々がうまれてきているのと同じく。

憲法改正によって取り戻すべきは「保守自由主義」であって、「右翼全体主義」でも「左翼全体主義」でもないと明確に答えることができるようになっておくべき

出典:『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』

あらためて、この点には注意をしていきたいと思いながら問いかけてみたいのは、「新しい秩序」は永遠に不変で続くものですか、との点。

続かないのであれば、日々の営みの中で、その時代に生きる人が都度選択して構築していくしかないのではないか。過去の我々が未来の人々に残せるものは、多種多様な試行錯誤の結果(歴史)を「判断材料」として活用できるように可能な限りに正確に伝えていくことであって、不可逆的な単一の価値観に支配されるディストピアを提供することではないと、個人的には。

「秩序」はその時代に生きる人々が都度、新しく生み出していけばよい、そういった意味では、可逆性のある多様な価値観が偏在する世界を維持することこそが、ある意味で唯一の価値観ではないかと思いますし、それを実現できるのは「保守自由主義」との考え方が基盤にある環境ではないか、と。

そう考えると、今現在の岸田政権の実績と在り様は評価せざるえないですし、最近の左右問わずのオールドメディア・左右問わずの全体主義勢力の狂乱ぶりを見ると、そう評価することはむしろ真っ当なのだろうとも実感しています。

出典:X(旧Twitter)上の投稿から(拾い物です)

そして岸田総理、恐らくは命がけです。この先、安倍総理のような非業の死を繰り返させないためにも、また「暗殺されて当たり前」なんて吹聴する似非知識人とその(盲)信者が出てくるような雰囲気を醸し出させないためにも、きちんと評価、期待を継続していく必要があると痛感しています、もちろん是々非々での議論をつらねながらが前提ですが。

余談ですが、関係各所との調整を無視して一気呵成に結果だけを固定化できるなら、それはもはや独裁なんですよと、左右の全体主義者に諫言したい所です。今度の東京15区の補選にはどちらも揃ってますしね、左右の全体主義者それぞれに連なる候補者が。どちらの全体主義者が来てもナチス化の危険性をはらんでいると、そう感じています。

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