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生きた建築−Casa Batlló −

今回はRoad trip 2023 🇪🇸 Day 5で訪れたCasa Batllóについての記事になります。

入場料:25€ 営業時間:9:00 – 20:00
※最終入場19:00 所要時間:1時間半
休館日:無 ※予約要推奨
おすすめ度★★★★★


バルセロナのメインストリートであるパセジ・ダ・グラシア通り沿いに建つカサ・バトリョ。

その歴史は、1877年に建築家Emilio Sala Cortésによって建てられた物件をその当時、繊維業で財をなしたD.Josep Batlló i Casanovaが1903年に購入したことから始まりました。

当時のバルセロナでは「目立つ家」が富豪のステータスだったこともあり、それまでに無い個性的な改装を求め、ガウディに1904年に依頼。
5階建ての建物の地下1階と地上6階、そして屋根裏を増改築を経て1906年、ガウディが54歳の時に完成させたのがこのカサ・バトリョです。

ガウディが完成させた当時から、別名「骨の家」や「あくびの家」とも呼ばれ、このユニークな外観の存在は多くの人々の視線を集めていましたが、個人所有だったため未公開でした。

しかしガウディ生誕150周年にあたる2002年、ようやくファンからの熱望に答え、一般公開が始まりました。

その3年後、2005年にカサ・ミラ、サグラダ・ファミリア、グエル邸などと共にアントニオ・ガウディ作品群の一つとして世界遺産に登録されました。
※現在のカサ・バトリョの所有者なんと地元バルセロナの企業で世界的に知られた、あの飴玉のChupaChups社だそうです!

ボスくんは一度、中を訪れたことがあるということで私は贅沢に一人で見学しまし、別行動を楽しむことに。

中に入った途端、なにかの生き物に飲み込まれた、もしくは深海に沈んだような、そんな気分になりました。

玄関ホールでは龍の背骨を連想させるガウディが手掛けた階段が、緩やかに曲線を描いています。

手すりは丸みを帯び、手に馴染みやすい設計。
手すりに触れたまま上へ上がってみましょう。

波打つような曲線をしっかり感じまるで泳いでるような錯覚が起こります。
階段を登りきると上部には小窓が。

この天窓のデザインは亀の甲羅がモチーフになっています。
リビングルーム、別名「モデルニスモのシスティーナ礼拝堂」とも呼ばれる部屋に入ると
きのこのような雰囲気を持つ暖炉が目立ちます。

両脇にはベンチが付属していて、バトリョ邸を訪れる恋人たちがここで寄り添ってキスをしてる姿をバトリョ氏は微笑ましく眺めていたといいます。
その先へ進むとモダンで統一されたステンドグラスたち。

外は日差しも強く灼熱だというのに、ここでは涼しく日差しを取り込んでいます。
壁や扉一つ見てもガウディの優れた技術は勿論、コンセプトへの集中力を見て取れます。
窓へ近づいてみましょう。
骨のような支柱を間近で見ることが出来ます。
さらに窓やドアの取手、この細かさが大胆なデザインに洗礼さを与えています。
天井に注目してみましょう。
上下逆さになったような錯覚になるこのデザイン。

まるで水滴が落ちて波紋が広がっているようでした。
この部屋を後にする前に再度上部を見ておきましょう。
この通気孔も洗礼されていて小粋です。
 
通気システムと言えば、このバトリョ邸ではユニークかつ機能的な換気システムを見ることが出来ます。
ガウディらしいデザインの斬新さだけではなく、全ての扉に開閉式の通気口を設置するなど、20世紀はじめての換気を重視した物件で、当時としては最先端構造の建築だったのです。
工学を学んでいたGaudi 、高温多湿でも室内は統一してどの部屋も快適な空間になるように作り込んでいます。

なんと言ってもコンセプトや室内の世界観を壊さない斬新なデザインでこれらのシステムを取り入れているのに感動します。

そんなGaudiはこんな言葉を残しました。

あるものが美しいとみなされる為の最も重要な要件は、そのものが目的を果たしていることだ。 By  アントニ・ガウディ

パンテオン部分へ出てみましょう。
早速、Gaudiの得意とするトレンカディスが現れます。
アートウォールも美しい。
やはりこれらの曲線は軟体動物を思わせる不思議な魅力を持っています。
アートウォールの前から振り向くとバルコニーの緩い波打ちを感じます。
ダイニングへ戻り天井を見ると、こちらはまるで渦潮のような、また洗いたての帆のような美しさが浮き出ています。
廊下へ出て、中心の開放的な空間に目を向けてみましょう。

この中心部のタイルの色はグラデーションになっていてどの階でも同じ光を感じられるように設計されています。
最上階に近づくとこのように暗いタイルとなっていきます。
階段部の各ドアはこの様なデザインになっていて、この鉄製の網部分は今で言うのぞき穴の役割となるのですが、ここでも海を感じますね。
こちらはGaudiのデザインした椅子。
彼は建築家であり、合わせて家具職人としても評価されていました。
また物件の中央部の窓はこのように水中から空を見上げてるような、不思議な光、そして視界を楽しめる不思議な窓となっています。
中央階段の手すり部分はこのようになっており、手にしっかり馴染むような作り。

この小さなこだわりがGaudi物件に足を踏み入れてるのだと言うことを一時も忘れさせません。
上層階になるとより天井デザインはよりシンプルで大胆な構造になっていき、この不思議な雰囲気の廊下はまさに何かの生物の体内を感じます。
最上部の一部はランドリーや清掃用の小部屋がありました。
何故でしょうここが庶民の私には一番落ち着く空間でした。
最上階付近に近づくと階段もシンプルになってきました…
この秘密基地のような階段を登っていくと…
屋上には瓦を鱗に見立てた龍の背のような屋根、煙突は煙が揺れながら昇る様子を表し、通気口などまさに芸術性と機能性を兼ね備えています。

また、屋上の片隅にある旧貯水子には小さな噴水があり、光と音の自然とアートを楽しめるので魅力的でした。
再度外観からこのユニークな建物を見てみましょう。

テーマは海。外壁に埋め込まれた色とりどりのガラスモザイクは、地元の会社から譲り受けた廃棄物のガラスや陶器の破片を利用したもので、まさに今注目のサスティナブルハウスの最先端。

先程屋上で見た骨を想起させる支柱やバルコニーの斬新なデザインと、青と緑を基調としたタイルやガラスで装飾された美しい壁面のコントラストを存分に楽しめます。

外観は海面、内部は深海や海底洞窟をイメージしていると考えられていますが。

私も疑いなくその世界観を感じました。



帰りに際に現代アーティストとのコラボ展示も見ることができました。

Refik Anadol ✕ Gaudi

下記リンクはRefik Anadolのデジタルアート作品を撮影したものです。
実際は砂波のようにゆっくりと風になびいてるようなカサ・バトリョを見ることができます。
更に、黒服の強面セキュリティーに案内され何が始まるのかもわからない、緊張感漂う真っ黒の小部屋。

大きなブザーと共にドアが締まる…暗過ぎで大人はざわつき、子供は大泣き。

そして始まったのがこちら、小部屋の床や天井含めた全面スクリーンでのデジタルアート。

めちゃめちゃイカしてました!!!

ざわついてた大人も、泣いてた子供も感動の拍手喝采で幕を閉じました。
この新鮮な形で巻き込まれる展示とっても斬新で良かったです!

結果このコラボ展示も含めて2時間半程楽しみました。

入場料は安くはない25€(3,975円 2023/09/01時点)ですが、ガウディの曲線を感じるならここが一番かもしれません。

ここは生きる建築。あなたは母なる海に沈み、生き物の中で呼吸を感じる、そんなミステリアスで奇妙。それでいて心地の良さを体感することでしょう。


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