わたしは冬の潮風がいちばん好きです。



わたしは冬生まれなのに夏っぽい名前なんです。それは、お母さんが海がだいすきで「海みたいに広い心をもってほしい」って願ったから。
正直、名前負けって思いました。
だって短気だし、わがままだし、ちなみに夏っぽいだけじゃなくてすごい可愛い名前なんです。小さい頃は人気者になりそうで、オバサンになると少々照れ臭くて、おばあちゃんになると一周回ってかわいい。みたいな。
名前負けだって言ったけど、最近はポジティブに生きようと頑張っていて、結構この名前を気に入っています。
だって、こんな未来の想像までできてしまうなんて、自分の名前が聴こえるたび、すごくワクワクしますから。なんだか生きるのが楽しくなります。
でも時には辛いこともあって、そんなときは決まって海へと向かうんです。春夏秋冬、いつだって辛いことがあれば海からパワーをもらいます。
ただ座って波の音をきいたり、犬の散歩をしている人をみたり、持ってきたサンドウィッチを食べたり、海とともに五感を癒すんです。
そうすると大抵元気になって明日からも頑張ろうって気持ちになるんです。

こうやって一年すごすけど、いちばんはやっぱり冬の海。
海の色は深くて、風は冷たいけど潮をのせて運んできて、頑張れって言ってるように感じるんです。
なんだか切なくて、落ち着きます。

あっ。
わたしの名前だ。
ふと気づきました。

やっぱり「海みたいに広い心」を持てている自信はないけど、冬に生まれてこの名前を付けられた意味が、「わたし」が生まれた意味が、少しわかったような気がしました。

これだけは名前負けじゃないでしょう。

わたしは冬の潮風がいちばん好きです。