見出し画像

「辛いこころ」を理解できる職人とは。

困ったときに手を差し伸べることができる人は
本当に困ったことのある人だけです。

理学療法士は患者、クライアントに対して
目標到達(歩行再建、スポーツ・職場復帰)に向けた
専門的な運動プログラムを立案し、実践させる立場にいます。

私が実習生の時、当時の教育者(スーパーバイザー)に
ある本を紹介され、一部の内容から
大事な考え方を頂きました。

その内容が衝撃的で
理学療法士としての”核の部分”を教わった事を
今でも鮮明に記憶し、感謝しています。

革命的な内容です。

宮本省三「リハビリテーションルネサンス―心と身体の回復 認知運動療法の挑戦」春秋社、2006年、40-41項
より内容を簡略化して説明します。

■虐待と理学療法
著者は
愛知県のどこかの町で起きた
5歳位の男の子が父親に虐待を受けて死亡した
という事件に触れています。

男の子の死亡原因は頭部外傷。
衰弱した状態だったところに、暴力が加えられたと。
なんとも痛ましい事件。

しかし問題は”なぜ、衰弱していたか?”

それは、十分な食事は与えられていなかった他
毎夜、2000回という「立ち上がり動作」
の反復が父親の命令で強要されていた
という事でした。

そう
リハビリテーション職種は
「立ち上がり動作」は
「立ち上がり訓練」として
日常的に、ごく当たり前に行う
運動プログラムのひとつです。

回数の違いこそあれ
運動を『強要』するという点においては
全く同じです。

筆者は
「立ち上がり動作」の強要を、
その回数が違うだけで、「運動療法」と呼ぶ、
このリハビリテーション技術とは何なのか。
と問題提起した上で、運動療法論を展開させ始めます。

皆さんは
リハビリテーションに対してどんな印象を持ちますか。

平行棒で歩く練習。
松葉杖の練習。
筋力増強運動。
車いすの操作練習。
肩、腰をマッサージする。

高齢者様にとって理学療法士は
マッサージの先生
と解釈されている方もいます。

私はマッサージのプロにたくさん出会いました。
親指がしゃもじのように広がり、
そして分厚く肥厚し、正に職人の指
人体を理解され、極めた技術で
クライアントの急所を射抜く技を持っています。

しかし、理学療法士は何の専門ですか?
何を求められてますか?
こう質問されると
リハビリテーション専門職の方でも
即答することは難しいのではないでしょうか?

虐待した父親のように
ただ立ち上がり動作を行わせ続けますか?
スクワット最強説を貫きますか?
自主練習は10回×3セットで本当にいいですか?
痛いところはとりあえず一旦、揉みますか?

限られた時間と忘却していく記憶の中で
それでも根拠をもって
相手の在りたい姿までの最適解を
模索し続ける責務が理学療法士には求められます。

リハビリテーションが失敗したとき
その責任を相手や家族に委ねる事はできません。

仲の良い相談役、リハビリの兄ちゃんに
とどまってはいけません。

様々な障壁を
乗り越えてもらうために
自らにも責任と課題を与え
懸命に生きていかなければなりません。

信念をもって、
また明日、明後日、、、と。

本当に辛い人の心が分かる。
そんな理学療法士を目指して。

この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?