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記憶の断片

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創作系のノートをまとめています。
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気づくといない、傘

今日はなぜか、傘をもって電車に乗ることにしてしまったのだ。

いつもは歩いて向かうはずのその道を、

やる気のなさを誤魔化すために目先を変えようとしたあがきの結果。

電車から降りたら気づいてしまったのだ。

私の手がやけに軽いことに。

「えっ…傘ないですやん!!!!!!」

きっともう遅い。

あの傘は遠くに運ばれてしまったのだ。うっかり埼玉とかに。

しかも間が悪いことに、今日の帰りは豪雨予

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勉強は楽しい…けれど、学問は迷路。

勉強は楽しい…けれど、学問は迷路。

このnoteを読みました。

妹に元声優志望がいて、父親がスピード出世気味の研究職で、私自身も研究職をやや真面目に目指しかけて「想像以上にヤバい、この世界…」と思って退却して会社員をやっている人間なので、その所感を綴れればと思います。

たぶん、あんまり心地いい話ではないんだろうと思います。

それでも、事実としてあったものなので、学問を志す以上は、それは認識して欲しいと感じます。

でもわかる。

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安全地帯は等しく8月31日では終わらない。

試される大地においては、8月31日はもう現実だった。
テレビの中は未だに夏休み気分を引きずっていて、正直おめでてぇなと感じていた。
(のちに、さらに1ヶ月も休めてしまう大学生という身分になり、おめでたさと怠惰の極みを堪能したのちに別の感想を持つことになるが、それはまた別の話)

そもそも、北国の夏休みは冬休みと同じくらいの長さであり、物思いに耽る間も無い。
故人の魂を見送ったらもう、夏休みは終わり

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希望についての掌編

希望についての掌編

プツッ…

そして瞬間訪れる暗闇。
ああ、いつものやつだな…そう心の中で嘯きながら、私は少しだけ肩を動かした。再び灯るのはLEDライト。少しだけ白熱灯の色味を模したものだ。

いつものことながら、まったく嫌になるね。ちょっと拾い読みした文章が面白くて熱中しちゃうと人感センサーが「人がいない」と判断してこうなっちゃうんだ。
あのライトが消えると、私も忘れ去られたような気分になり、正直言うとあまり心持

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葬送曲・断章

葬送曲・断章

その日は水飴のような曇りだった。
新宿御苑駅の近くのカフェで大学の友人と、昼だか夕食だかよくわからない食事をとりながら、取り留めもない話をしていた。

「そういえばね…、両沢さん、亡くなったんだって」

彼女は私の真意を探るように、ぽつりとこぼした。
両沢さん…正直もう、記憶が曖昧だ。故人当人には申し訳ないが、当人とは思い出らしい思い出もない。
ただ、その名前の縁にこびりついた、思い出したくない「

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