見出し画像

地方創生がぱっとしない理由 その1

すっかり蒸し暑くなりましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか。

前回投稿の後、地方創生に関する色々な場所へうきうきと出かけ、様々な方々にお話を伺って参りました。思わず皆さまにお伝えしたくなるような出会いを期待して行ったのですが… 結論から申し上げると、いまいちぱっとしない、一筋縄ではいかない事情が、あちこちにありました。

その際たるものは「このままでいいんじゃない?」との声の多さです。ちょっと地元に元気がないなと思っても、日々の生活が目に見えて困難になったり、ただちに継続不能になるわけではありません。しかも変化にはリスクが付きまといます。面倒なことが増えます。簡単でもありません。時間もお金もかかります。なのにうまくいく保証はゼロです。ならばそっとしておいてくれ! ということになってしまうようです。

長年に渡り積み重なった現実を動かすのは、簡単ではありません。思いつき程度の試みなら、おそらく誰かがすでにやっているでしょう。そこに住む方々は、自分たちの街のことをよく知り、思い、考えながら生きていらっしゃいます。よそ者の目に、ただのさえない田舎としか映らない街にも、そうなっただけの長い経緯や理由があるのです。

しかしやはり、残念ながら、そっとしておくわけにもいかないのです。

現政権が地方創生の総合戦略を策定した2014年以降も人口減に歯止めはかからず、東京圏への人口流入はむしろ加速しました。現金給付を伴う年金問題はわかりやすさもあってよく話題となりますが、例えば道路や病院など社会・医療インフラの維持費用なども含めた、いわゆるナショナル・ミニマムですら、現状維持は難しいのが実態です。

上のグラフは15年現在の県内総生産。国内総生産(GDP)の地域版ですが、トップの東京都は最下位・鳥取県のなんと104倍です。東京から7位の千葉県までを足すと、もう国のGDPの半分を超えます。この国の富がいかに一部へ偏在しているか、多くの地域は人口を失うだけでなく、富を積み上げることもできていないかがよくわかります。

人口減少とは、今まで10人でやっていたことを6人とかでやることになる話です。職場やバイト先で担当者がいきなり4割減ったら? クラス全員でやるはずだった劇を半分ぐらいの人手でやることになったら? 通りがかりの木こりとそれを惑わす森の精B、谷底でうごめく腹を空かせたライオン(何の話だ?)とかを、同時に1人でやらないといけないかもしれません。ブラック企業どころではありません。

この状況に歯止めをかけなければ、何もしないことによってコストはさらに膨らみます。現在は国税として集めた税金を地方へ再配分する地方交付税という仕組みが支えていますが、税金を払う人も少なくなるのですから、やがて誰も負担できなくなるのは明白です。

かなわぬ60年越しの夢

「人口の都市集中は,その速度をゆるめながらもさらに進展を見せるとともに,他方,農産漁村においては,人口流出が進行し,その結果,昭和30年代に発生した過密・過疎現象は,さらに深刻化する傾向にあり…」

今読んでもまったく違和感のないこの文章、実は1969年5月に閣議決定された新全国総合開発計画というものです。62年に池田勇人首相が打ち出した、所得倍増計画と太平洋ベルト構想を盛り込んだ全国総合開発計画(全総)に次ぐ開発計画で、「新全総」と呼ばれました。

この頃からすでに「局部的な高密度地域においては過密現象が見られ,反面,低密度地域においては過疎現象が見られ」、「都市の過大化の防止と地域格差是正が重要かつ緊迫した地域的課題」となっていたといいます。

…変わってないじゃん。。

総務省の住民基本台帳で見ると、東京圏への人口流入は戦後、大きく分けて3回の波がありました。1度目のピークは高度経済成長の62年、次がバブル景気の87年、3度目が2000年以降、リーマンショック前まで続いたグレートモデレーションの07年です。(以下グラフ参照:首相官邸HPより)

結果として日本は、主要国の中でも首都圏への人口集中が顕著な国となりました。ロンドンやパリには総人口の1割強、NYには5%程度が住んでいますが、東京とその周辺ではなんと3割近くに達します。そりゃ電車も道も混むし、保育園は足りなくなるし、道を歩いても周りに無関心な人ばかりで世知辛くなりますよね。

戦後、政策として位置づけたわけでもないのに、日本でなぜこれほどまでに首都圏へ人口が集中したのかは、専門家の間でも様々な見方があるようです。もっとも、ただひとつ間違いなく言えるのは、首都圏に大規模な地震や火災でも発生したら、多くの命が失われるとともに、国の機能も激しく損なわれかねない、極めてぜい弱なかたちである、ということです。

その2へつづく


日本の地域を元気にしたい!あなたの街にも取材へおうかがいさせてください!